入部(3/5)
都先輩の前で全裸になってしまった大翔。3年生の先輩に怒られ、急いで立ち去ろうとしたが…
焦りながら荷物を持って、部屋を出ようすると、ドアのところで誰かにぶつかってしまった。
大翔:すっ、すみません!!
とにかく早くその場を去りたかったので、すぐに謝って横を走り抜けようとする。
すると、手を掴まれて話しかけられた。
白衣の女性:ちょっと待って。あなた、石田君よね?
大翔:はっはい。
顔を上げると、美しい黒髪を後ろに束ねた白衣の先生が立っていた。
長谷川:私があなたを呼んだんだけど、何かあったのかしら?
大翔:あっ、長谷川先生ですか?
長谷川:そうよ。
長谷川先生は資料室の中を見渡して、3年の先輩に話しかけた。
長谷川:木の実、今の状況を説明してもらえる?
木の実:はい。さっき、私が部室に向かっていると、凛の叫び声が聞こえて、急いで駆けつけると、そいつが全裸で凛のことを襲おうとしてたんです!
大翔:いやっ、違うんです!襲おうとなんてしてません!
長谷川:まぁいいわ。一旦皆座りなさい
俺が長机の角の席に座ると、2人の先輩は対角線側の角の席に座り、先生はホワイトボードの前にある丸椅子に座った。
長谷川:まずは石田君、ようこそ将棋オセロ部へ
長谷川:あなたをここへ呼んだ理由は、将棋オセロ部に入ってもらうためなの
大翔:は、はあ
長谷川:ここは将棋オセロ部を名乗っているのだけれど、それは表向きの話。実際には能力者の生徒を集めて、悪を成敗する秘密のヒーロー組織。…とでも考えてくれればいいわ
長谷川:そこで、能力者の石田君を招いたって訳。話は理解できた?
大翔:いや、まだ全然追いつけてないんですけど…
急にいろんなことが起きるもんだから脳の処理が追いつかない。
長谷川:他に能力者に合うのは初めて?
大翔:はい
長谷川:そうなのね。ここにいるのは皆能力者なの
長谷川:私の能力は「診断」。能力者のオーラを感じ取ることができるの。オーラの色で能力の系統も分かるわ
大翔:な、なるほど…。つまり、それで僕が能力者だと分かって呼ばれたんですね
長谷川:そうゆうこと
長谷川:それで?あの2人には酷く嫌われているみたいだけど何があったのかしら
俺は、都先輩から能力の見せあいを提案されたことを主張した。
長谷川:ところであなたの能力って一体何なの?
大翔:あれ?大体は分かるんじゃないですか?
長谷川:私が分かるのはあくまでも系統だけで、その詳細は分からないのよ。で、どんな能力なの?
大翔:いや、まあ能力という程でもないんですが…
ゴミ能力を人前で発表するのが恥ずかしく、渋ってはみたものの、質問する先生の揺るがない眼に屈服して言うことにした。
大翔:まあ、あのー、一瞬で…裸になる能力…です
長谷川:え?…あっはははは(笑)
俺の能力を聞くと、長谷川先生は盛大に笑った。バカにされるのは分かっていたけど、こうも笑われると、恥ずかしさで顔面が熱くなった。
長谷川:それで、凛の前で全裸になって引かれたと。あー面白い(笑)
こっちは深刻な事態だってのにこんなに笑うか、と少し苛立ちも感じたが、むしろ笑ってくれて救われたような気もする。
長谷川:よし!あなた採用!うちの部に入りなさい!
大翔:え?
長谷川:木の実もいいでしょう?
木の実:……
木の実:あっはっはっはっは!
先生に話を振られると、3年の先輩も爆笑し始めた。どうやら、さっきから笑うのを我慢していたみたいだった。
木の実:いやー、ごめんね笑。私てっきり強姦魔か何かだと思ったからさ笑。裸になる能力って笑笑
木の実:数少ない能力者なんだから、入れない手はないわ笑歓迎です!なによりおもろくなりそうだし!
木の実:私は福原木の実!よろしくね笑
相当バカにされているのは分かったが、もう怒ってないようで少し安堵した。
張り詰めた空気は溶け始め、和やかな雰囲気になろうとしていた矢先、都先輩が凍りつた声で喋りだした。
都:…たいです…。私は反対です!!!
長谷川:あらそう?
都:そうに決まってるじゃないですか!私に…あんなもの見せて…。
長谷川:それはあなたが言い出したことじゃないの?
都:そ、そうですけど…。そんな能力だなんて思わなかったし…。そ、それに!そんな能力なんの役にも立ちませんよ!役立たずの能力者なんて一般人と同じです!
これにはぐうの音も出ない。
長谷川:いえ、何かに使えるかもしれないわよ
都:何に使えるっていうんですか!とにかく反対です!即刻追放すべきです!
長谷川:うーん。困ったわね…
……
ガラガラーン!
少しの沈黙を、勢いよくドアを開ける音が打ち破る。
木の実は、茶髪のボブカットです。髪型に関する校則は無いので自由です。