入部(1/5)
俺の名前は石田大翔、春から高校に入学したどこにでもいる普通の15歳…のフリをしているが、実は"能力者"だ。
「何を馬鹿げたことを」とでも思ったか?
そんな君のために、俺の能力を見せてやろう…。
ガチャ
そんなナレーションを妄想しながら、帰宅しお風呂場へ向かう。
見てろ!即脱衣!!!
その瞬間、着ていた制服は綺麗に折りたたまれて床に置かれ、俺は一瞬にして全裸になった。
………
ゴ★ミ☆能★力!!!
そうだよ!!!ゴミ能力だよ!悪いかよ!なんだよ!一瞬で全裸になれる能力って!
ちょっと風呂に入りやすくなるだけだよ!!!
大翔:はぁ…
ため息を吐いてお風呂に浸かる。
こんなゴミ能力を誰かに言えるはずもなく、俺は能力者であることを隠して生活していた。
―――次の日
能力者である俺のなんでもない朝を迎える。なんでもない時間に起きて、なんでもない朝食を食べて、なんでもない通学路を歩く。
???:おはよっ
なんでもない幼馴染が声をかけてくる。
結菜奈:ん?ちょっと!今、失礼なこと考えてなかった???
ごめんなさい…。
大翔:いや?今日もちっちゃくて可愛いね!
結菜奈:あ?でゃまれ!
教科書でパンパンの鞄が後頭部に直撃する。
こいつは幼稚園からの付き合いの暴力系幼馴染の相澤結菜奈。
なんだかんだで同じ高校で、クラスまで同じだった。
結菜奈︰てかさー部活とか決めた?
大翔︰いやー、まだ全然考えてない
中学では帰宅部だったが、高校でどうするかは特に決めていなかった。
大翔:まーいいとこあれば入ってみてもいいかなー
大翔:結菜奈はまたバド部?
結菜奈:んー、私も迷い中。別にバド部じゃなくても全然いいなー
そんななんでもない話をしながら、なんでもない日常が始まる。
―――帰りのHR
担任:はーい、これでHR終わりまーす
担任:部活の勧誘もいっぱいやってるみたいだから興味ある人は見てみてくださ―い。興味ない人は頑張って捕まらないように逃げてくださーい
担任:はい、かいさーん
担任:あ、石田君。長谷川先生から呼び出しがかかってるから、資料室に行ってくださーい
大翔:え、あっはい
知らない先生に知らない場所に呼ばれた。心当たりは全くなかったので少し不安だが、放課後の予定も一人で部活動見学ぐらいしか考えていなかったので、資料室に向かうことにした。校内マップを見ると、2階の隅に資料室の文字を見つけた。
―――資料室前
コンコンコン、ガラガラガラ
大翔:失礼します
資料室のドアを開け中を覗いてみる。
中は他の教室に比べて狭く、資料が乱雑に置かれた棚に囲まれ、ホワイトボードに長机と、かなりとっ散らかっていた。さらには、棚の一角には未開封の魂ウォッチが10個ほど積まれていて、訳が分からなかった。
そんなカオスな教室の中で、長机の一席で一人勉強していた女子生徒が俺に気づき、振り返って声を掛けてきた。
女子生徒:ぅん?もしかして石田君?
黒髪ロングヘアーのその女子生徒は、美人を具現化したような容姿端麗な人だった。青色のリボンをしているので、2年生の先輩らしい。
大翔:あっはい。石田です
2年女子:長谷川先生に呼ばれたんだよね?入っていいよ
大翔:はい。失礼します…
話し方は物腰柔らかだったが、あまりに美人すぎる先輩と1対1な空間に少し緊張していた。
2年女子:荷物そこ置いて座っていいよ
大翔:はい
2年女子:1年生のこの時期って鞄重くて大変だよね。置き勉の感じとか分かってくると軽くなるんだけどねー
大翔:そうですよね
2年女子:ところで君が石田大翔君で間違いない?
大翔:はい。石田大翔です
2年女子:疑ってるようで申し訳ないんだけど、学生証って持ってる?
大翔:あっはい。ありますけど…
少し困惑しながら、制服の胸ポケットに入れていた学生証を見せる。
2年女子:ありがとう。私は都凛。よろしく
都:ごめんね、ちょっとここでの話は、秘密にしなくちゃいけなくって…
大翔:秘密…?
美人な先輩の"秘密"という言葉に唾を飲む。
都:そう…
都:単刀直入に聞くんだけどさ…
都:君、能力者だよね?
大翔:!?
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