刺客
ストーカー疑惑が頭から離れず、午後の授業は以外にも早く感じた。
一呼吸して落ち着くと、いつものクセで振り返って朝姫の方を向いてしまう。
「なに?」
ちょうど帰り支度する朝姫と目が合うと、何故か睨まれた。いつも通りの不機嫌顔。いつもの俺なら気にせず誘うだろ。けど、今の俺はこれ以上、ストーカー行為を繰り返すのはよした方がいいのではと理性が働いている。それに、少なくともこのまま誘えばうざいやつ、けどこのまま一人で帰ればようやく解放されたと朝姫は喜ぶだろう。嫌われる道と嫌われない道があるなら、当然嫌われない道を選ぶのが普通だ。
「いや、また明日な」
前を向き直した俺はバックを手に取る
「ねぇ、今日は・・」
「今日?」
「なんでもないわよ。車に気をつけてさっさと帰りなさい。」
「りょーかい。」
またキツイ言葉で罵られるのかと思いきや小学生のような注意、先生かオカンかよ。とツッコミたいが、朝姫が先生か母親だったらさぞかしいいなぁっと思う。ってまたストーカー思考が出てしまった。今日はなんにもやりたくないから、さっさと帰るか
しかしそんな思いも虚しく、廊下に出ると金髪リーゼントヘアーとその取り巻き5人に囲まれた。リーゼントヘアーってやったことないけど、準備とか大変そうだよな。とかなんとかいいながら俺はあっという間に訓練所へと連れて行かれた。
「風間楓斗、木下朝姫への迷惑行為の罪で俺と戦え!」
言ってる意味が分かりません。いや分かるか。迷惑行為については否定仕切れない部分がある。けどこの人誰?
と普通なら思うが実はこういうことははじめてではない。やはり朝姫のような美少女に付き纏っている俺をよく思っていない男子は大勢いる。コイツは正々堂々と向かってきているが、過去にはこのまま人気のない場所に連れてかれたり、夜視界が悪い中闇討ちにあったこともある。
なので、おそらくコイツも朝姫へと想いを寄せる同士なのだろう
「なに、死にはしない。ここは訓練所だからな。お前の悪事に鉄槌を下してくれるわ」
両腕にはガントレットを装着している。コイツはパンチ主体の近接型タイプか。さすがは取り巻きを従えるリーゼント番長。戦い方も漢らしく拳でってことなのね。
この手の輩はホントたちが悪い。こっちは何も言ってないのに向こうはやる気満々で向かってくるんだから。
リーゼント番長が間合い入って繰り出した右ストレートを交わす。
「それで避けたつもりか?」
右ストレートはフェイントで本命は左か?
左手が俺の脇腹に触れる。なんで拳じゃないんだ。
「爆発」
リーゼント番長の手のひらが突然爆発する。
「ぐはぁ!」
衝撃が体に伝わり、地面を何度も転がる。激痛が体を襲う。脇腹は直撃してしまった。
脇腹の部分は黒く焦げて、火傷している。
「どうだ我が爆発は身にしみたか。」
ホントこの手の輩はやっかいなんだよ。朝姫目当てで、実力行使に出れる程の手練れたちしか向かってこないんだもんな。
この番長、強い。なんとか立ち上がれるけど、まだ勝てる気が、いや勝とうとか思えない。なんでだ?身の危険を感じながらも戦う気がおきない。なんで?今まで散々こんなやつと戦ってきたのに。
「この程度では終わらんぞ。【爆撃乱舞】」
避けないといけないのに、まだ体が痛みで上手く動かない。
「かはっ」
リーゼント番長の連続爆発パンチをくらった俺は宙を舞い、仰向けで地面へと倒れ込む。
「今日はこの辺にしといてやる。木下朝姫に迷惑をかけたこと存分に反省するがいい」
そうか、そういうことか。俺は後悔しているのかもしているんだ。朝姫に迷惑をかけていたことを自覚してしまったから。
魔法は精神力が大きく影響される。だから、今の俺はコイツを敵と認定出来ず、敵意や反撃意欲が湧いて来ないんだ。迷惑をかけたことに対する粛清を受けている。そんな感覚だ。
俺は朝姫に迷惑をかけまくったからな。これはその罪なのかもしれない。
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