神速の剣
教室は出たけど、特に目的地はないだよな。よし、気を紛らわす為に少し体を動かすか。
そう思い、訓練所に立ち寄る。
ここでは、魔法や武器を使用しての模擬戦が可能となっている。不思議な魔法術式が施されていて、戦って魔法を当てたりしても死ぬことはないらしい。けど痛いんだけね。中では何人かの生徒たちが自主練に励んでいて、魔法の練習をしている。
壁に立てかけられた木刀をなんとなく手に取る。
「木剣か・・」
そんなに昔ではないのに懐かしく、師匠との修行を思い出すな。あれだけ剣を極めたけど、朝姫が嫌いだから学校では使わないんだっけ。
軽く素振りをする。いい感じだな。
「そこの君」
突如として声をかけてきたのは赤色の髪を1つに縛り、その髪は腰のあたりまで伸びている。その髪はボサボサではなく、キレイに整っている。そして、顔も無茶苦茶可愛い。なんか女子だけど、強くて芯の強そうなイケメン顔。これは男子からも女子からも人気があるタイプの人だ。胸だけは少し残念な感じだけど、それもチャームポイントなのかもしれない。
「何でしょうか?」
「手合わせしよう」
「嫌です。」
美少女からの突然の誘いに心揺れたがこちとらまだ謎の気分の理由や原因が解明出来ていないので、今はお断りだね。ってかこの人先輩なのか?
「大丈夫、何も気にする必要はない」
「いや、だから、そのちょっと・・」
赤髪の美少女先輩?は何が大丈夫なのなよく分からないが、全く俺の話を聞かずに訓練所の1室へと連れて行かれた。人の話を聞かない人だな。っていつも朝姫の言うことを聞かずにアタックしてた俺が言えた義理ではないか。少し罪悪感が生まれる。嫌がる朝姫に悪いことしちゃってたな。
「さぁ、構えろ。」
いつの間にか手合わせする感じで正面に木剣を真っ直ぐ俺に向けて立つ、赤髪先輩。
これは断れる雰囲気ではないな。俺も仕方なく剣を構える。まあ2、3度打たせれば雑魚だと思って諦めるだろう。
「行くぞ。」
声と共に赤髪先輩は一瞬で俺の間合いに入ってくる。
マジか、かなり早い。
赤髪先輩はそのまま上から剣を高速で振り下ろす。
その剣を俺にあたる瞬間、体をひねって交わす。それと同時に赤髪先輩の足元を木剣でトントンと軽く叩く。
「足元がお留守ですよ。」
「舐めるなーー」
赤髪先輩は次次と高速の剣を俺に振りかざす。
けど、もう慣れた。この人の剣は真っ直ぐ過ぎて動きが読みやすい。
「ハァハァハァハァ」
何度かの打ち込みで、彼女は肩で息をしている。目つきが変わった俺に再び集中しているのを感じる。剣も今までよりも魔力が込められてるのを肌で感じる。
「当たれーー」
彼女の振り下ろした剣を俺は交わして、彼女の足元に剣を置くと彼女はそれに躓いて転ぶ。
「足腰が弱すぎるよ。速さは凄いけど、魔法に頼りすぎ。あんた誰にも師事を受けたことないだろ」
うつ伏せに倒れる赤髪先輩を見下ろしながら言う。あれれ?なんか俺戦っちゃった?
やられるハズが勝っちゃった?
打たせて終わるハズが相手を転ばしちゃった。
てきとうに流そうとしてたのに、なんか最後は説教ちっくなことまで言っちゃった。これはまずいのでは?
赤髪先輩はまだうつ伏せに寝たまま肩で息をしている。
これはチャンスだ。このままトンズラさせていただきます。
「っていうのは冗談で剣が速すぎて全然見えなかったですよ。なんかたまたま避けれて、木剣に引っかかってラッキーでした。はははっ」
俺は笑いながら振り返らずに全力で逃走した。
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