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脅しとギャップ


さてさて今日も今日とて気持ちのいい朝だな。

カーテンの隙間から朝日が挿し込んでくる。朝日と共に体中の細胞が目覚めていく感じがする。机の上に黒色のローブが畳んで置いてある。今日のために作成したお手製の特別仕様のローブである。自信作だよ。

早速羽織る。どうでしょう、皆さんこのダボダボで地面を擦っているこのローブ。明らかにサイズが合ってませんよね?でも大丈夫です。こちらの商品、誰にでもフィットするのです。

って一人でTVショッピングのマネしても悲しいだけか。ローブは自動で体にフィットするサイズへと変わり、色も擬態出来るようになっている。よし、完璧。

階段を降りるとセレナさんが待っていた。


「おはようございます。」


「やる気はあるようね」


「当たり前じゃないですか。楽しみ過ぎてワクワクしてますよ」


フラレたショックでいろいろと意気消沈して、気持ちの在り方がよく分からなったけど、今回は全力を出すって決めてからワクワクが止まらない。早く力を試したい。


「いいら大規模魔法は使ったらダメよ。」


「分かってますよ。あくまで限定的な攻撃魔法しかつかいません。ルールですからね」


「そうじゃなくて・・」


セレナさんの不安そうな顔を見て、何を心配しているのかを理解した。

そっちのことを心配してるのね。


「わかってます。魔力の使いすぎには注意しますよ。」


「ホントに大規模魔法とか使ったらダメよ」


「分かってますって。けど十二真は使いますけどね。」


「まぁそれぐらいなら・・いい、くれぐれも魔法の乱発は避けるのよ。いいわね」


「りょーかいです。じゃあいってきまーす。」


まったく、心配症だなセレナさん。

自分から勝負ふっかけてきたくせにさ。まあ心配してくれるのも言えないけど、ありがたくは思うんだけどね。



教室に入ると、ダンジョン前だから緊張してるかと思いきや、制服ではない姿に各々がいつもと違う空気が漂う。いつもと違う女子たちの服装は新鮮でいいね。ギャップがたまらん。自然と木下さんを探してしまい既に来てるようで、人と話している。

いつもの制服と違い、白のローブを羽織っている。純白の女神。最高かよ。しかしローブの、せいで中の服までは見えない。俺の魔法なら見ることは可能だ。しかし、それはモラルに反する。つまりは女神への反逆行為・・とりあえず今は、ナイスな服に感謝いたします。


「楓斗ん、入り口でなにしてんの?」


「いや、おお〜。イメージ変わっていい感じだな。火元」


振り返ると教室に入りたそうに火元が立っていた。

こちらもいつも違い、動きやすそうなグリーンのパンツスタイルにマントを羽織っている。

似合ってる。いい。轟よ、これが狙いだったのか。


「それって褒めんの?」


「褒めてる、褒めてる。褒めまくりだよ。」


「ああ、はいはい。んで何して・・姫見てたのか。もっと近くで見ればいいのに」


「遠くからの方が全体がよく見える」


「変態か。嫌われても知らないよ。」


「もうこれ以上嫌われることはねぇだろ。それに俺が離れたことで木下さんは今楽しそうじゃん。俺が離れた方がきっといいんだよ。」


「だから他の子に行ったの?」


「他の子?」


「宮ちゃんとカノちゃん」


「あの2人はそんなんじゃねぇけど、フラレたから他の子を好きなるのってそんなに変なことか?みんながみんな、好きになって想いを伝えれば付き合えるってわけじゃないだろ。」


「だけどウチは、楓斗んなら付き合えると思ってたよ。」


「そうだったら良かったんだけどな・・」


まさか火元がそんな風に思っていたとは驚きだ。確かにフラレたショックはあったけど、今の楽しそうな火元を見ると、俺が付きまとわなくなって良かったのかもとも思えてしまう。


「あっ、そうだ。お前昨日の掃除・・」


「負け犬」


「ちょ、おい。」


火元はさっさと席に荷物を置くと木下さんへと抱きついていた。


「相変わらず距離感バグってるな」


そんな火元を目で追いながら俺も席に着くと、チャイムがなるまでのんびりとしてるか。


「楓斗、おはよう」


「おはよう。ってシバサク、お前今日どこ行くか知ってるか?」


「ダンジョンだろ?」


「じゃあなんでレザーにライダースって言うバイク乗りみたいな格好してきてんだよ。お前の普段の私服はパーカーにジーパンだろ。」


まさかあの大人しいシバサクがダンジョンという危険な地に行くのにこんな動きにくそうな服装で来るなんて誰が予想出来たでしょうか。せめてジャージにしようよ。


「皮は動きにくいけど、防御力は高い。それに実は、カノが好きな服装で・・」


どうやら、カノのことを思った服装らしい。どうりで動きにくそうで明らかに着慣れてなくて、着せられる感半端ないもんね。けど、命がけのダンジョンでチャレンジしなくてもよくない。


「もっとやり方あっただろ。」


「おはー。って芝ちゃん、どうしたのその格好?」


「おはってカノ、お前はなんて格好なんだよ。」


「変?」


タンクトップにヘソ出し、ミニスカ姿のカノ。こっちはこっちで動きやすさ重視しすぎだろ。けどあえて言おう。男子からすれば感謝だ。朝からええもん見させてもらいましたわ。JK最高。


「ったくお前らよ〜。シバサク、上着脱いでみ。」


脱いだシバサクのライダースをカノに羽織わせる。


「【服飾魔法】再成形リサイズ


シバサクのライダースをカノにピッタリのサイズへと作り直す。ライダース風の皮のローブってところかな。ちなみに俺のローブには自動機能として再成形リサイズは組み込まれている。


「このローブ、サイズピッタリだし、芝ちゃんの匂いがする。なんか芝ちゃんに抱きしめられてるみたいな感じ」


ローブを不思議に触りながら、シバサクを見ている。シバサクは顔を真っ赤にして気を失いかけてる。


「良かったな、シバサク。」


シバサクは軽くなってカノに服を貸せて、カノは防御力が上がり、これぞまさにWin-Winだね。

それにしてもライダース風ローブか。案外カッコいいな。俺のローブはシンプルな作りだから作り直そうかな。いっそ4人で揃えちゃうか。あとでみんなに相談してみよ。




チャイムが鳴り、クラスメートたちは各々が自席に着く。クラスのざわつきも徐々に収まり、木下さんの元を離れて火元も席へと戻ってくる。


「おい、火元。昨日の掃除・・」


「負け犬とは口聞きたくありませーん」


「はっ?」


そっぽを向く火元はこれ以上俺と話してくれる雰囲気はない。そんな怒ってるのか。


「はーい、全員席つきな。朝からテンション高くて良かったよ。ダンジョンだから気持ちが凹んでるかと思ってたから先生嬉しいです。」


先生が出席簿を肩叩き機のようにトントンしながら入ってくる。この間散々脅してたからな、テンション下がってたら先生のせいだろうな。


「風間くん、突然ですが今好きな人は居ますか?」


「思春期の男子生徒に軽々しく聞いていいことではないと思いますけど」


「この間まで一切隠す気がなかった男の言葉とは思えないわね。」


木下さんのことについては周知の事実だしな。隠して隠しきれるものでもないが、まさか先生から言われるとダメージでかいかな。


「一般回答をしたまでですよ。まぁ居たとしたらどうなんですか?」


「好きな人が居るなら、今すぐ告白しなさい」


「俺に死ねって言ってます?」


こんな所で告白してフラレたらダンジョンどころじゃねぇだろ。モチベーション急降下で下がってまた魔法暴発させちゃうぞ。

ん?けど今俺が1人に告白するなら誰にするんだ?


「まぁある意味そうかもね。」


そうなのかよ。サラッといいよったぞ、この先生。


「先生が言いたいのは、思い残すことがないようにってこと」


「縁起でもない言い方ですね。ダンジョンなんだから死地へ赴くわけじゃないでしょ」


「ダンジョンは死ぬわよ。」


クラス中が凍りつくのを感じる。いつもと違い先生はハッキリと真剣な顔で死ぬと答えたからだ。


「けど先生、帰還の羽があれば大丈夫なんじゃないですか」


火元の質問はまぁ最初に思いつくよな。

帰還の羽、身につけた対象がある一定量のダメージを追った際にあらかじめ決められた場所へと強制的に転移させる魔法道具。

これでダンジョン内でモンスターに襲われても死ぬ前に生徒を先生たちが待機させてるエリアに1秒以内に転移させて死者を出すのを防ぐ役割を担っている。


「帰還の羽があっても死にます。」


場が更に凍りつく。俺も帰還の羽だけでは防ぎきれないものがあると思ってる。


「モンスターの攻撃で即死させられた時とかですか。」


「風間くん、正解」


「あとは毒とか呪いとか精神汚染系とかがやっかいですかね?」


「大正解。今日は冴えてるわね」


褒められてもクラスメートたちが意気消沈し過ぎててどうリアクション取っていいかわからないな。


「先ほど言ったように、即死攻撃や毒、呪いとか状態異常にはくれぐれも気をつけること。それと・・」


先生からかすかに魔力の動きを感じる。

ヤバい、何かくる


「針魔法【回転針ドリルニードル】」


先生の背後から、高速回転したドリルのような針がこちらに飛んでくる。この先生マジか。狙いは俺・・いや違う、火元か。


炎魔法【炎千華】


炎華の花びらが火元の前に落ち、針と衝突したことでキレイな華を咲かせる。


「ダンジョンでは気を抜かないこと」


この先生マジかよ。炎華が咲いたってことはかなりの高威力だぞ。


「今、風間くんが隣に居なかったら火元さん死んでたわよ。風間くんの他に先生の攻撃に気づけたのは、峯岸くん、轟くん、椎名くん、宮代さん、西宮さん、木下さんかな。」


殺す気は当然なかったようで、単なる脅しだ。つい反射的に火元は守ってしまったが、俺が防がなかった他の針はあたる直前に消えた。


「ダンジョンには擬態する魔物もいます。まぁ先生が言いたいことはただ1つ。どうなるか分かんないから、思い残すことがないように油断せず死ぬ気でやりなってことです。」


死の恐怖まで与えて、どんだけ脅すんだよ。緊張感を持たせたかったのかもしれないけど、にしてもやり過ぎでしょ。そんな危ないのかね。まあ俺には関係ないけど、あの程度の攻撃も防げなかった火元が心配だな。

朝のホームルームが終わり、ダンジョンへの転送準備があるとかで先生は居なくなり、クラス中は雑談タイム。さっきの先生の言葉もあって、真面目なやつらはグループで話してるけど、うちは必要ないだろ。火元たちもそうみたい。木下さんが珍しく、火元の元に来て話している。至近距離からの木下さんも良い。ダンジョンにまだ入っていないのになんか達成感ではないけど、満足感はある。

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