ダンジョングループ2
「楓斗ん、100位とか受ける」
「うるせぇな。」
火元が俺の順位を指差して笑いながら見せてくる。そんな見せなくても知ってるわ。
「そんなんじゃあ、誰も組んでくれないよ。ねぇ姫、可哀想だからウチらが組んであげる?」
いつの間にか火元の横に木下さんが立っている。用紙に集中して気づかなかった。他のクラスメートたちも席をたちそれぞれのグループを作り出しているみたい。
「嫌よ、こんなやつと組むのなんて。ウザいもの」
ウザい。そのワードは傷つきますよ。先生に短所がウザいと書かれた紙をクラス中に配られ、好きだった人にウザいと言われる。これは地獄です。木下さんは不機嫌に腕を組んで、ぷいっとする。
「姫、本音が漏れてるよ。確かに楓斗んはウザいけどさ。」
「火元、お前俺を殺す気か?」
「ニヒヒっ」
この2人は学年ランキングも上位でダンジョン攻略に対して組むメリットはある。考えられる構想としては、バランスの取れた木下さんに攻撃特化の火元、索敵の志保か・・悪くないけど、良くはない。
「安心しろ、お前らとは組まないから」
「「えっ?」」
「どうしてよ!」
まさか2人がそんな驚くとは。お前ら2人が組みたくないって言ったんだろ。いや、言ったのは木下さんだけか
まあ、あくまで攻略するにはこの2人と組むのはありだ。けど、今回は攻略は前提条件で目指すのは翔吾より早く攻略して、最速タイムを出すこと。
「じゃあ楓斗はアタシたち以外の誰と組むつもりなの?」
「えっとね・・」
なんか木下さんの前で他の女子の名前出すの気まずいな。やっぱり好きだった女子の前で堂々とこの子と組みますなんてなかなか言えないよな。まあ木下さんは気にしないんだろうけど、ここは男子の名前でも出して逃れるか。
「宮代さん、1人なら私達のグループ入らない?」
「えぇー宮代さん、俺等のグループ入ってよ。女子1人だけどいいでしょ」
遠くの方から志保を誘う声がする。マズい、志保だけは死守せねば、鈴さんの為に。お願いされたからには達成してみせる祭さんはどうでもいいが鈴さんの為に!
「志保はダメだ!」
「楓斗・・」
「楓斗ん・・宮代ちゃんを名前で呼んでるの?」
クラスの視線が集まる。そりゃそうか突然大声出したらみんな見るよね。木下さんと火元も驚いている。俺は勢いよく席を立ち、志保の席まで行き、手を握る。そしてそのまま、クラス1のギャル西宮珈音とその隣に座る芝優作と肩を組む。
「カノ、シバサク組もうぜ。」
「ウケるんだけど。風間、アーシとやりたいの?」
「んなこと言ってねぇだろ。組もうって言ったんだよ。」
「キャハハ。アーシはいいよ♪強引な男好きだし」
「ああ分かった分かった。お前の好きな男の情報ありがとよ。シバサクはどうだ?」
「なんで僕なんだよ。他にもいるだろ優秀なやつ」
「いいじゃんか、お前カノのこと好きなんだろ」
「ちょちょ楓斗、お前声がでかいんだよ。」
「だって強引な男が好きだってカノ言ってたぞ。」
「な~に芝ちゃんアーシのこと好きなの?」
カノの胸がシバサクの頭の上に乗ってる。なんて羨ましい状況なんだ。
「いや。その、いや、あの・・」
パニクってんな。俺でもパニクるわ。陽キャラ、いやパリピ恐るべし。
「ってことでシバサクもオッケーだな。これでグループは出来た。」
「待って、私もこのグループなの?」
志保が不思議そうに俺ら3人を見てくる。
「は?当たり前だろ。志保が俺と同じグループなのは最初から決まってんだから。むしろお前が他の人に何誘われてんだよ」
危うく鈴さんとの約束が守れない所だったじゃないか。
「先生、これが俺たちのグループです。」
用紙に4人の名前を記載して先生へと提出する。
「風間くん次第のグループね。」
「さっすが先生。そういうグループにしました。」
先生はこのグループの意図にすぐに気付いたみたい。まあかなり偏ったメンバーだからさすがにわかるか。
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名前 西宮珈音
長所 索敵魔法の範囲は狭いが精確
短所 独特な喋り方をする
戦闘能力 E
支援能力 D
得意魔法 索敵魔法
学年ランキング 92位/100位
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名前 芝優作
長所 知識が豊富、感が鋭い
短所 パッとしない
戦闘能力 E
支援能力 C
得意魔法 解析魔法
学年ランキング 88位/100位
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「楓斗ん、なんか意外なメンバーなんだけど」
席に戻ると早速火元が話しかけてくる。木下さんはいつの間にか居なくなってると思ったら他の女子と話していた。
「そう?俺の理想通りのメンバーだけど。」
「クラスの大人しい男女とクラス1のギャルにクラス1のウザいやつだよ。へんてこグループじゃん」
悪魔とギャルと解析屋だけどな。まあ確かにこの席になってからはあんま絡んでないもんな。もっぱら火元と話してたし。見慣れないメンバーであるのは確かかもな。チームワークについては懸念事項の1つではあった。
「キャラじゃなくて能力でちゃんと見ろよ。せっかく先生がこんな情報くれてるんだから。」
火元に猫じゃらしを見せびらかすように用紙をヒラヒラとすると、猫パンチをしている。可愛いな。
「仲の良さも大事だけど、自分に足りない物を、捜せば自然とこうゆうメンバーになる。死ぬかもしれないんだから火元もちゃんと選べよ。」
「姫が他の男子と組んでいい感じになってもいいの?吊り橋効果で惚れてくれるチャンスかもよ。」
「それならそれで、仕方ねーだろ。」
その吊り橋効果については考えてなかった。セレナさんに煽られて勝負受けちまったじゃねぇか。そもそも学校のダンジョンなんてもっと遠足みたいな感じだと思ってたんですけど。死ぬかもしれないって確かに吊り橋効果ワンチャンあったじゃん。
思いとは裏腹にめっちゃ心は乱れてます。
まああれだけ言って駄目だったんだ
「2日間も一緒に居られるんだよ。姫の手料理食べれるかもよ」
「ぐっ」
「姫の寝顔とか見れちゃったりして〜」
「ぐはっ」
なんて魅力的な提案なんだ。確かに可能だ。なぜ気づかなかったんだ。俺よ。安易に組んでしまったことに少し後悔している。けど、それは多分木下さんが嫌がるだろうな。
「これ以上俺は木下さんの迷惑になるようなことはしないの」
そう決めたじゃないか。最近少し距離が近づいた気がしてるけど、そこは期待しちゃダメだ。俺は嫌われてるんだから。
「そっか・・よく楓斗んは好きな姫が他の子に誘われるの我慢して見てられるよね」
「そりゃ、信者として女神の幸福は願いますよ。」
「ウチは辛いな・・」
そんな火元辛いのか。まぁ木下さんのこと大好きだもんな。けど一緒に組むだろうから割と独占欲強めなのかしら。
「まあこれは信者としての年季の差だな。けど木下さんと組んだやつは決して1人行動は取らない方がいい。誤って魔法が飛んでくるかもしれないからな」
「全然我慢出来てないじゃん。」
ケラケラと笑いながら俺の横腹を突く。そこ弱いんだから止めれ。
「ねぇ楓斗ん、なんでウチらを選んでくれなかったの?」
「だからさっきも言った・・」
通り相性だと言おうと思ったのだが、火元の目が少し寂しそうにうるわせて俺を見ていたので、言葉が詰まる。いつもの明るい火元と違って、なんか守って上げたくなるような感じ。
「楓斗、頼む。俺らは火元さんと木下さんと組みたいたんだ説得してくれ。」
突然高橋と西本が俺の前で土下座仕出した。
「本人に言えよ」
「もう言ったよ。」
火元を見ると、さっきまでの小動物のような可愛い顔から、うんざりした顔になっている。こりゃ相当頼み込んだな。
「なんて言ったんだ」
「好きです。一緒に一夜を過ごしましょう」
「お前らバカだろ。無理、他を当たれ」
バカだとは思ってたけど、ここまでかよ。それにこいつ等に2人は任せられん。
「なら代わりに宮代さんと西宮さんくれよ」
「ヤダよ。俺の女に手ぇ出すんじゃねぇ。他当たれ」
「嫌だ〜俺らこのままだと残っちまうよ〜」
残れ残れ。西本たちはまた他の所へと流れていった。その折れることのない精神と行動力は長所だな。
「俺の女だって〜姫聞いた?」
いつの間にか木下さんも戻ってきたようでなんか冷たい目をしている。だって俺のグループの女子だよ。間違ってないでしょ。まぁけどシバサクもいるから正確には俺等の女子か。
なんか火元と木下さんの視線が痛い。
「き、木下さんどこに行ってたの?戻ってきたんだね。」
「別に。楓斗の所じゃなくて、美香の所に来てるだけだから」
「さいですか。」
そりゃそうか。木下さんは俺の所にじゃなくて火元の所にきている。勘違いしてはいけない。
迷惑にならないように気配を消しとこう。