ダンジョングループ
いつものように食堂へ行くと、珍しく翔吾とセレナさんの2人が向かい合って朝食を食べていた。
今日の朝ごはんは鮭に味噌汁ね。
なんか異様な空気だけど、逃げる前にセレナさんと目があってが手招きしてくる。
「おはようございます。」
「おはよう。」
「おはよ。」
「今翔吾とも話してたんだけど、そろそろダンジョン学習の時期よね」
「はい、明日からです。」
セレナさんの問に味噌汁を飲み干した翔吾が答える。
そういえばそうだった。昨日なんか先生言ってたな。ダンジョン攻略か。1人で気楽にってわけには行かないんだろうな。
「場所はどこなの?」
「迷わずの森って聞いてます。」
迷わずの森についてはあまり先生教えてくれなかったけど、迷わずの森って言うぐらいだから木が生い茂って、感覚狂わす魔法とか使って迷わせるのかな。
「あ〜あそこか。毎年恒例だものね。」
「2日間もダンジョンとか勘弁してほしいですよ」
俺は机にご飯を置いて両手を合わせる。今回のダンジョン攻略は48時間の時間制限が設けられている。その為、最低でも1日はダンジョンの中で過ごすこととなる。それだけ森が大きいのだろう。
「なら1日で攻略すればいいじゃない。今までの最速タイム知ってる?」
「知らないです。」
「8時間。私達が学生の時に記録したのよ。前回までの30時間を大幅に更新して先生たちの度肝を抜いてやったわ。」
30時間から8時間で攻略するとか流石はセレナさん。異常でしょ。ドヤ顔するだけの記録ではある。
まさか2日間かと思ってたダンジョンを半日ぐらいで踏破したら先生たちもさぞ驚いたことだろう。
「ちょうどいい機会だから、アンタたち2人勝負してみなさいよ。どっちかなら私達の記録抜けるかもしれないわよ。」
勝負か。まあ確かに退屈な攻略が少しは楽しくなりそうだよな。なんだかんだ翔吾と全力で勝負したことないし。翔吾を見ると同じようなことを考えているのかいつもはクールな翔吾だけに闘志が見える
「面白そうですね。」
「楓斗、勝負だな。」
「よしっ、決まり。じゃあ負けたほうが相手の言う事を1つ聞くってことでいいわね。」
「聞いてないですよ」
「今言ったわよ」
また変なルール設けて、セレナさんこのルール好きだよね。
「勝てばいいだけよ。」
なんか上手くセレナさんに乗せられたのかな。食べ終えた食器を持ってセレナさんは、高々に笑いながらキッチンに消えていった。
それと同時にポケットに入っていたスマホが震え、中を見てみるとメッセージがきていた。
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差出人 祭さん
ミンチにされたくなかったら志保を守れ。ダンジョンで怪我させてらお前を殺す。
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差出人 鈴さん
志保から聞いたけど、明日からダンジョン行くんだよね。ダンジョンって危ないって聞くからなんとかポチくんの魔法で志保のこと守ってくれないかな?あの子臆病出し、攻撃魔法も使えない。人付き合いも得意じゃないの。私の我儘なんだけど、志保のことお願いね
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迷わず俺は鈴さんに了解したことを返信した。鈴さんからのお願いは無下には出来ない。悪魔みたいな志保を守ることに抵抗はあるが、天使である鈴さんからのご依頼&朝からのメッセージ。テンション上がる。
ダンジョンって確か4人1組で行動するハズだからこれで俺のメンバーの一人目は決まりだな。鈴さんからの依頼だからミスはできない。直接守りきってみせる。
そして祭さんからのメッセージは迷わず見なかったことにした。
■
ダンジョン迷わずの森
方向感覚を狂わす森と森の揺れと葉の擦れる音が木霊し、方向感覚だけでなく、精神的にも少しずつ追い詰めていき、毎年精神面でやられてリタイアする生徒も多いらしい。更には生徒レベルでは手に負えない魔獣も生息しており、毎年多くの怪我人を出している。なんか危険過ぎない?1年がやるものなのか?なんでも学校の方針で1度は死の危険を感じてみることが大事だという、にわかにも信じられないような理由で毎年反対派を押し切って強行されているらしい。
というのが朝のホームルームで先生が話したダンジョンについての情報である。朝から取ってもヘビーな情報なたげにクラスはいまだざわざわしている。
「さて、席替えするわよ。」
突然だな。先生はざわつくクラスメートたちを黙らせるように大きな箱を勢いよく取り出す。
なるほど、今回はくじ引きなのか。
ダンジョンのことでまだ動揺が隠せないみんなは取り敢えず先生に言われるがままにくじを引いていく。
さて俺の席は・・窓際の一番後ろだと!なんて完璧な場所なんだ。
横の女子は宮代志保
なんてこった俺の聖域に悪魔が飛来して来やがった。アイツが横だと祭さんと鈴さんを盾にされたらこっちは何も出来ない。つまるところ悪い予感しかしない。憧れの後ろの席だけど悪魔がいる。前だと授業中よく先生に当てられ、ノートをちゃんと書かないといけないが悪魔はいない。俺の天秤は微妙なラインを行ったり来たりしている。
「先生、後ろの席は見にくいので前でもいいですか」
今のままの方がマシかもしれない。それが俺の出した結論だった。
今の席の隣は木下朝姫。さすがに横は無理だろ。
「同じ場所は飽きるので最前列の別の場所がいいです。」
「どこでも、いいわよ。まだ席動かさないから」
どういうこと?席替えするんじゃないの?
クラスメートたちからも不満?というより疑問の声が上がってくる。
「さて、まだこの席はまだ動かしません。今の席は暫定の席です。明日からのダンジョン攻略で早かった順に場所を入れ替えることが出来ます。あの子の横がいい。この席がいいとか、今なら動かし放題。ダンジョンで仲良くなった子と一緒になれることも可能。」
すっげぇイベント感丸だしだな。さっきダンジョンで死人出るとか言ってめっちゃ脅してたじゃん。
「これを楽しみに頑張ってね。先生は応援してます。」
生きるか死ぬかのダンジョンに対して些細な糧だな。
「さて、次にダンジョンのグループだけど今からクラスの情報を載せた用紙を配るので各自今から4人1組のグループを作ってね。」
先生から配られた用紙には、生徒それぞれの得意魔法やざっくりとした能力値がAからEの5段階で表記され、学業と戦闘能力を足した学年ランキングが記載されている。さてさて俺はというと・・
名前 風間楓斗
長所 複数の属性魔法が使える
短所 うざい、トラブルメーカー
戦闘能力 E
支援能力 E
得意魔法 なし
得意武器 なし
学年ランキング100位/100位
短所がうざいって俺先生にこんな嫌われてたのか。まあ確かに木下さんに一直線だったときいろいろやらかした自覚はあるけど、ここ最近真面目に授業受けてたよ。
さすがにどんな言葉が返ってくるか分からないからこの短所については聞きにくい。けどもう1つ気になる点がある。
「先生、なんで俺最下位なんですか?」
「試験の日に魔法暴発させて、試験受けれてないからよ。」
あの日か〜魔力逆流して超大変だったな。今では懐かしく思う。セレナさんにナイフでぶっ刺された所はあんま記憶ないけど。
まあランキングなんかどうでもいいか。
さてこの中で俺が最速でクリアするには誰をメンバーにするか。志保や木下さん、火元はどんな感じなのかな
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名前 木下朝姫
長所 冷静で的確な状況判断が可能
短所 なし
戦闘能力 B
支援能力 B
得意魔法 聖魔法
学年ランキング 15位/100位
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名前 火元美香
長所 誰ともでも打ち解けるムードメーカー
短所 周囲への警戒がおろそかになることがある
戦闘能力 A
支援能力 D
得意魔法 炎魔法
学年ランキング 20位/100位
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名前 宮代志保
長所 索敵魔法の効果範囲が広い
短所 大人しい
戦闘能力 E
支援能力 B
得意魔法 索敵魔法
学年ランキング 78位/100位
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火元がこんな優秀だったとは。ちょっと驚きだ。そして、木下さんへの評価は俺もこんな感じだと思う。木下さんについて調べまくった俺と同じ評価をしているということは、つまりこの用紙はかなり精度がいいということがわかった。
志保についてもある程度予想はしていたが、攻撃魔法はないが、索敵魔法が得意なのは助かるな。
あとの2人はどうするかだけど、この2人なら・・けど面倒そうだな。