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保育園のバイト2


園庭を駆け巡る園児たち。来た時は静かで味気ない空気が漂っていたが、一度子供たちが動き出せば、キラキラとした笑い声や笑顔が響き渡る空間へと変わる。

まだ汚れを知らない彼らは純粋に遊びに夢中になっている。そんな彼らもいずれは大きくなっていくのかと当たり前のことのようなひねくれたこと考えながら前を歩く鈴さんのあと追う。


「鈴先生遊ぼう。」


横から二人の女子園児が鈴さんの元に駆け寄って抱き着いている。


「ごめんね、この荷物運んだら遊ぼうね」


「えぇー遊びたいよ。」


悲しそうに訴える女子園児たち。鈴さんも高校生。俺と同じでいつも居てくれるわけではないのだろう。だからこそたまにしか居ない大好きな先生と遊びたい。そんな子供の気持ちわかるわ〜鈴さん可愛いし、優しいし完璧過ぎる。良すぎる、これ以上があるのだろうか。


「遊んできていいですよ、この荷物あの教室に入れとけばいいんですよね?」


午前中いろいろ回ったおかげで保育園の地理もなんとなくわかったし、俺一人でも楽勝だろ。実際荷物は全部俺が持ってるし。


「いいの?」


「はい。良かったな、鈴先生遊んでくれるってよ。」


「やったぁ、先生行こ」


「その荷物運んだら休憩してていいなら」


明るい笑顔で鈴さんの手を引っ張っていく園児たち。どっちも可愛い。純粋な笑顔って心動かされるよね。



荷物運びは魔法を使えば楽勝。だけど、鈴さん見てるとこれを全部人力で運んでんだから凄いよ。めっちゃ大変そう。俺も少しは見習わないとな。何でも魔法で解決しようとしちゃってるもん。

ベンチに腰掛けて軽く伸びをする。

砂場の方で鈴さんがさっきの子たちと山やお城を作って遊んでる。

微笑ましい光景やね。さてせっかくだし、のんびりとさせてもらおうかな。


「ん?」


空を眺めてると隣にさっきのお漏らし少女。たしかゆうひちゃんだったかな


「どうしたの?どこか具合でも悪いのかい?」


「こっち」


とりあえず手を引っ張って行かれるままに付いていく。なんか鬼、天使に女子に振り回されてばっかだな。

まぁこの子は何か伝えたいみたいだけど、鈴さんのような能力がない俺には良く分からない。なのでとりあえず付いて来いというなら着いていきますよ。


「お城作ったの」


連れてかれた教室にあったのは積み木を10個ほど重ねて作ったお城?に見えなくもない作品。

自信満々に見せてるあたりからしてゆうひちゃんがかなり苦労して作った自信作なのだろう。


「すごい、これゆうひちゃんが作ったんだ。」


パチパチと拍手をしてとりあえず褒めてみる。ニンマリと照れながら笑うゆうひちゃんを見てこの解答が正解だったのだと確証する。


「怪獣登場!」


しかし突如として現れた他の園児により、ゆうひちゃんの城が崩壊した。

まぁ積み木だし。脆いよね。わざとっぽいけど、また作れば・・げっ。


「お、お城が・・」


今にも泣き出しそうなゆうひちゃん。ここでふと脳裏に言葉がよぎる


「園児泣かしたら、殺すから」


ゆうひちゃんが泣いたら俺が祭さんに殺される。なんとかせねば。


服飾魔法ドレスアップ

ゆうひちゃんの服を薄紫色のドレスへと変化させる。女の子はこういうドレス好きだって言うし、どや。


「す、すっごーい。可愛い」


周りの園児たちの注目の的となったゆうひちゃんはさっきまでの泣きそうな顔を忘れとびっきりの笑顔でドレスをよろこんでくれてる。


「ゆうひちゃん、可愛い。私にもかけて」


「私も」「私も」


そして次から次へと園児たちをドレスアップさせることとなった。

魔力が尽きそうです。けど、子供たちの笑顔は女神木下さんを見てるのとは別の癒やしがあるね。

こうなったらとことん遊んでやろう。


「男子たち見てろよ、怪獣ってのはこうゆうのをゆうんだよ」


【造形魔法 創造生成そうぞうせいせい


怪獣といえば角だ。

そして鋭い爪

髪は長めにしてその隙間から獲物を睨むような目

よし、このイメージでどうだ。

造形魔法で俺の眼の前には、出会った時の鬼化した祭さんにそっくりな銅像が出来上がっていた。


あれ?なんか怪獣イメージしてたら祭さん作っちゃった。

ヤバい、キレられる


「すげぇ、怪獣って言うより怪人だ。」

「これ魔人だよ。」

「悪魔じゃない。」


これはこれで子供たちには大人気みたいです。何がバズるかわかんないな。

バレる前に破壊しとくか。


服飾魔法ヒーローチェンジ


鬼化した祭さんを見ていた男の子たちを今度はヒーローの服装へと変身させる。


「カッコいい」


「ヒーローなった〜」


「みんな鬼をやっつけろ」


ヒーローに変身した園児たちは嬉しそうな顔して鬼化した祭さんにそっくりな銅像を破壊した。よくやった園児たち。


「先生、次はお城作って」


「かしこまりした。ゆうひ姫。じゃあ先生頑張ってつくっちゃうね」


ゆうひちゃんや園児の可愛さに充てられめっちゃ頑張ってその後、俺はお城、ドラゴン、鳥、ケルベロス、鬼化した祭さんなどを作って時間いっぱい子供たちと遊び倒した。




「疲れた〜」


園児たちが帰った後の片付けもあらかた終わり、さっきまではしゃいでいた教室に寝そべる。

さっきまでの光景を思い浮かべると、自然と笑みが溢れて心が充実している気がする。セレナさんが言った通りいい気分転換になったな。めっちゃ魔法使ったけど。


「お疲れ」


「お疲れ様です。すいません、つい転んじゃいました。すぐ片付けますね」


教室には少し疲れた顔の鈴さんが入ってきた。な、なに!髪型がお団子からおろしてるストレートスタイルだと。夕方なのにあのサラサラさ。顔と心だけじゃなく髪まで美しいのか。マジ天使。


「ポチくんはすごいね。いろんな魔法使えて」


凄い?俺が?そんなこと言われたのは初めてだ。けどあれぐらいの魔法は普通だよね。褒めてくれるのは嬉しいけど、ここは謙遜してよ。


「そんなことないですよ。」


「私は魔法使えないから羨ましいよ。」


「そうなんですね。」


鈴さん魔法使えないんだ。確かに鈴さんからはほとんど魔力を感じない。使えないってのはホントなんだろうな。


「えっ?それだけ?なんか反応薄くない?ちゃんと話聞いてた?」


「聞いてましたよ。鈴さんが魔法使えないんですよね。」


失礼な。俺が天使のような鈴さんとの会話を聞き逃すわけないでしょ。

けどなんか鈴さんは別の答えを求めてるような不思議な顔をしている。


「鈴さんは俺のこと凄いって言ってくれますけど、俺からしたら鈴さんの方が凄いと思いますけどね。今日だって楽しみながらもちゃんと子供たちを見てたじゃないですか。」


「けど、ポチくんの魔法凄かったし」


「ん〜確かに俺は魔法が使えます。でも、子供たちの心についてや教育的なことはよく分かりません。けど鈴さんはわかるんじゃないですか?」


「そりゃーま。分かるけど」


「魔法が使えなくても使えても俺は鈴さんを頼ったと思いますよ。今日だって何度も助けてもらったし。だから俺からしたら鈴さんは凄い人です。」


「けどさ~やっぱり魔法いいなって思っちゃうんだよね。」


使えないからこそ思い入れがあるんだろうな。俺も使えるようになるまで散々努力したし、死にかけて、死んで、死にかけての連続で習得した魔法もあるし、気持ちはわかるよ。けど、少なくとも魔法が使える俺は鈴さんに軽々しく分かるなんて言葉をかけるべきではないだろう。


「なら鈴さんの理想を俺が叶えてあげますよ。魔法で。」


「えっ?」


「鈴さんが魔法でやりたかったことを俺が代わりに魔法を使って叶えるってことです。」


「ホントに!ホントに!私も子供たちみたいにドレスアップしたい。」


凄いはしゃぎよう。さっきまでの落ち着いたお姉さんから、園児たちと同じように目を輝かせている。


「お安い御用です。」


服飾魔法ドレスアップ


ジャージ姿から翡翠色のドレスへと姿を変えた鈴さん。ヤバい可愛すぎる。胸がめっちゃドキドキする。惚れてまうやろー。


「空飛びたーい」


「承知いたしました」


【風魔法 浮遊】


フワリと体を浮かして鈴さんと共にゆっくりと上昇していく。


「凄い、めっちゃキレイ。」


夕陽に照らされる街並み。空を飛べないと味わえない景色。鈴さんがその景色に見惚れている横で、俺はその鈴さんの横顔と夕陽のツーショットが美し過ぎて脳裏に焼き付けるのに必死だった。

少し空を散歩した後俺たちは保育園の園庭へと降り立った。


「楽しかったーー」


「喜んでもらえて良かったです。」


「今度動物に乗って空を掛けてお出かけしてみたいな〜とか無理だよね。」


動物か。造形はやってるけど、生き物とかみたいに、動かしたことはないな。やったことないけど、出来そうな気がする。


「多分出来ると思いますよ」


「ホント、ホントに」


「やったことないですけど、多分大丈夫だと思います。」


「今度はみんなでそれで遠足行きたいんだぁ」


「ってことは乗るのは園児全員で先生たち含めると30人ぐらいでいいですか? 」


「うん。どう?行ける」


「頑張ります」


「ありがとう。私祭さん説得するよ。」


「じゃあ俺は魔法の練習しとかなきゃですね。」


はしゃぐ鈴さんの笑顔は今日1可愛かった。

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