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保育園のバイト


あれから木下さんとの距離が明らかに開いた

相変わらず火元とはスキマ時間によく話すけど、その会話の中には木下さんはいない。元々フッた相手とフラレたもの同士なのだから今の距離は普通なのかもしれない。今までの距離感が変だったんだろう。



さてさてここかな?

セレナさんに渡された地図を元に俺は保育園を訪れていていた。

なんでも、先生たちが足りなくて魔法が使えなくても役に立てる仕事らしいのだが、はてさて素人が手伝えるものなのだろうか。

職員室の方へと歩いて行くと、窓からお団子結びの髪の毛が上下している。

傍から見たら丸い髪の毛が束になって廊下を走っているように見える。

それを目で追っていると、不意にお団子は消えて廊下からダンボールを4個ほど抱えて前が見えそうになく、よろよろとした女性が出てくる。そして案の定荷物の重みに耐えかねてくるくると足元がふらつき出す。


「あわわ、わわわわ」


風魔法【旋風】

重量物は適正な量を運ばないと危ないよ。


「ほぇ?」


倒れる前に風魔法でダンボールっと女性を支える。


「大丈夫ですか?」


俺は優しく女性を下ろす。頭のお団子からしてさっきひょこひょこしてた子だ。年は同じくらいかな?


「ありがとうございます。」


「この、荷物どうしましょうか?運びますよ。」


「あ、とえっと、すみません。」


いきなり魔法使って驚かせちゃったのかな?それとも人見知りする系の子なのかな?って背後から凄い悪寒が。振り返るとそこには角が生えて怒気を纏った鬼がいた。


「鬼の拳【破骨】」


「ちょっと待って。違いますってってかなに?」


「私の鈴に手を出すやつは何人たりともぶっ殺す」


この拳直撃はヤバいだろ。


防御魔法【十剣の盾】


俺の前に10本の剣が円のように集い、鬼の拳を受け止める。


「セレナさんのやつハメやがったな。なんで鬼退治しなきゃならねぇんだよ。」


「セレナ?お前まさかセレナの使いか?」


あれこの鬼さん日本語通じるの?ってか人間だったの?


「はい」


「祭さん、この人は私を助けてくれて荷物まで・・」


「あっ。」


お団子少女が間に入ってくれて荷物の存在を思い出す。鬼の攻撃に驚いて落としちゃったよ。てへ。中身が無造作に散らばっている。


「散らかしやがったな、このクズが。」


「は?あんたがいきなり襲ってくるからでしょ」


「言い訳すんな。さっさと拾え。セレナの使いなら信用出来る。さっさと働け。お前名前は?」


「風間楓斗です。」


「アタシは大宮祭(おおみや祭)んでその子が」


宮代鈴みやしろすずといいます。」


「他の先生はおいおい紹介するとして、さっさと働きなポチ。」


「ポチって俺のことですか?」


「セレナの犬なんだから、ポチでいいだろ」


自己紹介した意味なんだったんだよ。


「名前で呼んで欲しけりゃいい男になりな。」


豪快な人だな。なんか多分、名前は言っても変わらないだろうな。翔吾と火元に犬扱いされた冗談が、まさかホントに犬扱い&名前まで犬っぽくされるとは、あの2人にはバレないようにしないと、いい笑いものになっちまう。


「分かりましたよ、働きゃいいんでしょ。」


風魔法【旋風】

ダンボールから散らばっている物たちを一気に風で巻き上げてダンボールに戻す。そしてそのダンボールを風で持ち上げる。


「魔法使えないって聞いてたんだけど」


「これぐらいならワケないですよ。」


魔力がほとんど封印されているお掛けで魔力量のコントロールをあまりしなくていいので、この程度の魔法なら前ほどとは行かないまでもある程度はコントロール出来る。


「よし、使える。昼飯にたこ焼き2個やる」


なんで2個なんだよ。1パックはくれないのね。この人なんかホント独特だよな。


「どこ運べばいいですか?」


「こっちお願い出来る?」


宮代さんの後を付いて歩いて行くとトイレの前で立ち尽くす女の子がいた。足元には水たまりが出来ている。

ありゃこれはやっちゃった系だね。

宮代さんはすぐにその子の元へとかけより、しゃがみこんで視線を合わせる。


「ゆうひちゃん、我慢出来なかったの?けどトイレ行こうとして偉いね。」


泣きそうなゆうひちゃんの頭を優しく撫でて上げている。漏らしたことではなく、トイレに行こうとした行動を褒めてあげるなんていい先生だな。俺はすぐにコイツ漏らしやがったって思ったもんな。


「お着替えしようか?」


このあとこの子の着替えして、この床も掃除するんだよな。そんで俺のこの運んでる荷物だってなんか仕事で使うんだろうし、先生って大変だな。


「宮代さん。俺がやりますよ。」


「ポチくん、子供のお着替え出来るんですか?」


ポチさん、ね。この子にも名前覚えてもらえなかったんだ。まあ今日だけだし、いいか。


「出来ないけど、着替える必要を無くせばいいんですよね?」


【洗浄魔法】【浄化の炎】同時発動


ゆうひちゃんが火に包まれた時、宮代さんが悲鳴を上げそうになったのを、見て事前に説明しとけば良かったなと少し反省するもゆうひちゃんの服と床をキレイになったのを確認してから俺もできる限り穏やかな声で話しかける。


「どこか変な所あるかな?」


ゆうひちゃんは首を横に振る。少し怯えてるようにも見える。まあそりゃ俺初対面出しね。そりゃ驚くよね。初対面の人、チビッてる、燃やされる、服キレイになる。いったいどんな精神状態になるか想像出来んわ。


「そう、良かった。」


「ポチくん、ありがとうございます。」


「いえいえ、簡単な魔法で解決出来て良かったです。」


「ゆうひちゃん、行こっか」


ゆうひちゃんを連れて歩く宮代さんの後を荷物を持ってついていく。ストーカーって言うなよ。この荷物どこ持ってくか知らないんだもん。

そして、結局この荷物は運ぶ予定の物ではなく、元の場所に戻すハメになるというとんだ無駄足を踏まされる。関係ない荷物持って、鬼に殴られそうになって最終的に犬扱いとか、不運が続くな。

その後、主に荷物整理とかを手伝ったりした



昼休み


「よし、お前しばらく鈴の奴隷として働け。」


前言撤回です。私は犬以下になりました。


「おっしゃってる意味がよく分かりません。俺は今日だけですよ?」


もらったたこ焼きの1個をパクりと口に運ぶ。ん〜うまい。外はカリッと中はトロ~ンとしてその中から現れるタコ。最高かよ。


「逃がすわけねぇだろ。こんな使える労働力をよ。ポチ、テメェの帰ってくるトコはここなんだよ。」


「言ってる意味が分かりません。」


変なのに絡まれたよ。セレナさん言ってたことと全然違うじゃん。どこが美人で優しいだよ。今は角生えてないけど、絶対強化系魔法の使い手で最早人間じゃなくて鬼だろう。まあ美人ではあるけど、優しさはね。いきなり殺されかけた印象が強すぎて、それ以上の情報入ってこないよ。


「祭さん、会議の時間大丈夫ですか?」


「ハッ、ヤバい。鈴ありがとう。行ってくるわ。ポチ、鈴になんかあったら殺す。」


また一瞬角が生えて俺を睨むと鬼のようなスピードで部屋を出ていった。なんかヤバい人に捕まっちまったな。2個目のたこ焼きをパクり。

ん?ってか俺の昼飯は?

周りを見渡すも見当たらない。つまりこの状況は、セレナさんにはめられたか、祭さんが俺の弁当を忘れていったかのどっちかだ。

マジかよー、超腹減るんだけど。


「あの、これどうぞ。祭さんに作って来いって頼まれて」


「なんすか?」


宮代さんは机の上に赤い包と青い包を置くと青い包を俺の方に差し出す。


「お弁当です。普通のです。毒とかは入ってないですよ。」


ナチュラルに弁当に毒入れるやついたら怖いでしょ。


「ありがとうございます。けどいいんですか?」


「どうぞ召し上がれ。」


「いただきます。」


「ポチくんって今高1?」


なんかもう普通に違和感なく反応してしまうな。祭さんの威圧的な言い方じゃなくて宮代さんの優しい朗らかな呼ばれ方ならポチも悪くない。


「はい」


「私は今年高2だから、後輩さんだね」


やっぱり年上だったか。けど思ったよりあんま年離れてなかったな。宮代さんの後輩かぁ。後輩バンザイ。1年でこんなにも包容力のある魅力的な女性になるものだろうか。木下さんは女神だからいいとして、火元は・・無理そうだな。


「宮代さんはどこの高校に通ってるんですか?」


「私は西大寺高校だよ。ポチくんは?」


西大寺?あ〜うちの高校とは反対側の方にある進学校だ。


「鮮明です。場所正反対ですね。」


「はははっ、そうだね。ってか宮代さんって止めてよ。鈴でいいよ。」


「いやいや先輩ですし。」


まあ親しき仲にも礼儀ありって言うしね。ってか初対面だからそもそもそんな親しくないし。すると宮代さんは腕を組んで俺にプクッと頬を膨らませて顔を近づける。可愛すぎる。ヤバい、可愛い。これは反則だ。


「先輩命令です。鈴って呼びなさい。」


そんな命令されたら従うしかないじゃないですか。NOと言える雰囲気以前にNOという概念が生まれません。


「す、鈴さん」


「よろしい。」


鈴さんはニッコリと笑って俺の頭を撫でてくれた。可愛すぎる。これが先輩の魅力か。

一生付いていきます。鈴さんの奴隷になります。俺はまたこの保育園の手伝いをしようと決意した。


「あー俺も鈴さんみたいな先輩が欲しかったな」


「私なんて普通だよ」


「普通じゃないですよ。子供たちへの対応に、このお弁当だって超美味しいですし、ホントいい奥さんになりそうですね」


「もぅ〜褒め過ぎだって。このこの」


照れた鈴さんが俺の横腹をツンツンしてくる。止めてくれ、横腹は弱いのよ。けどホントは止めてほしくない。鈴さんからの攻撃ウェルカムです。変態か。いや誰しもこんな天使からの攻撃はくらいたいって言う。これが男ってもんだ。


「あーー!鈴の弁当食ったな。それは私のだったのに」


決意した矢先に鬼が帰ってきたので、その決意がゆらぎかけた。この人面倒くさいんだもん。


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