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不調

木下さんへの想いを断ってから数日後の放課後寮の修練場に来ていた。

ん〜これは深刻な問題なのかもしれない。

魔法が上手く使えない。魔法は精神に大きく左右される。今まで俺を支えてきた木下さんへの想いはある日突然フラレたことを自覚したことで消えてしまった。その為、こんな日がくるとは思っていた。魔法は素直に心の状態を映し出してしまう。口に出さずとも俺の心はズタズタです。

それを映し出す鏡のように、とっても魔力操作が不安定となり、さっきから火球が全然狙った所に飛んで行かないだけじゃなく、サイズもコントロール出来なくなっている。師匠たちに散々心を鍛えろって言われてたのにこのざまとはね。参ったな。これで魔法の授業あるとヤバいかも。


「いたいた、楓斗ちょっと私の代わりにこれ行って来てくれない?」


「なんですか?っていや俺子供の面倒なんて見たことないですよ。」


渡された紙には保育園への道順とやることが記載されていた。

自分も子供みたいで、人の面倒みてる場合じゃない俺になんでこんなの渡すんだよ。相変わらず無茶振りするな。


「大丈夫、手伝うだけだから。」


「いや、けど」


「あんたどうせ今魔法使えないみたい出し、いい気分転換になると思うよ。昼食付きだし」


「1日労働ですか!」


「先生は美人で優しいから安心しな」


なんで、魔法が上手く使えないのがわかったのか不思議だけど、多分セレナさんは感知系に優れた魔道士だから多分魔力の流れを見られたんだろうな。さすがは、姉弟子。

気分転換ねぇ。まぁ木下さんのこと以外やることないからやってみるか。セレナさんのお願いだし、これなら魔法使わなくても平気そうだし。


「わかりましたよ。」


「持つべきは、弟弟子ね。」


「そう思うならたまにはなにか恩返ししてくださいよ。」


「今日の晩ごはんの唐揚げ1つおまけしてあげる。そんじゃ連絡しとくからよろしくね。」





「なんで今日に限って」


俺は、今魔法の実技を行う為に訓練所に来ている。実技内容は火魔法を使用して火球ファイヤーボールを30メートル先にある的へとあてること。

いつもの俺なら全然わけない試験なんだけど、もう少し待って欲しかったな。クラスメートたちは次々と当てていく。


「次、風間くん。」


「はい。」


落ち着いてやれば、きっとなんとかなるだろう。


「火魔法【火球ファイヤーボール】」


俺の目の前で生成されたファイヤーボールは、俺の意志に反して何故か上空へと飛んでいって破裂する。

クラスから爆笑が上がる。


「なにやってんだよ、風間。」


「超ノーコンかよ」


「楓斗ん、花火綺麗だったよ。」


「うるせぇぞ、高橋、西本、火元」


腹を抱えながら馬鹿にしやがって。

こっちだって困ってんだよ。自然と視線は木下さんの方を見るとこっちを指さして爆笑する火元の横で笑ってる。


「風間くん、もう一回。」


「はい。」


集中、集中。深呼吸しているとまだ笑い声が聞こえてくる。

気にするな、今は試験のことを考えろ。集中しろ、俺。集中が最高に達した時点で再び火球を出す。

今度こそ的へと飛ばす。

しかし、再び火球は俺の意に反してその場で爆発する。


「いってぇぇぇぇぇ!」


爆発の衝撃で右手が肘の辺りまで燃える。力が暴走して火球の上級になる【爆発エクスプロージョン】が発動してまさかの暴発。その結果腕が炎上。俺の叫び声でクラスからも悲鳴が上がる。今度のミスはシャレになってねぇ。


「水よ。」


俺は火を消そうと水魔法を発動すると今度は右腕全体が氷りついた。

結果として火が消えたからいいけど全然コントロール出来てないな。


「癒やしよ。あれ?癒やしよ?なんで?」


マジかよー。回復魔法がまさかの不発。暴発や他の魔法が発動するのも怖かったけど、まさか発動しないとは。

この火傷だらけの氷った腕どうしよう。【浄化の炎】なんか使ってこれ以上の損傷負うのはね。けど、氷ったお陰で痛覚が消えてるのが幸いしている。痛々しい腕は見えて気分は悪いけど。


「大丈夫なの?」


「大丈夫に見えんのかよ、って木下さん」


誰かに声をかけられたと思ったらまさかの木下さん。女神降臨。心配そうに俺の氷った腕をツンツンしている。なんか腕が治った気がする。

そうやって見た腕はカチコチに氷ったままだった。


「風間くん、治せなないなら1度保健室で見てもらってきなさい」


「ですよね。」


こんな腕のまま授業受けるわけにはいかないよね。くそ、いつもなら一瞬で治せるのに。


「つ、ついて・・」


「楓斗ん、付いてってあげようか?」


木下さんの背中越しに顔をひょっこりと火元が顔を出す。


「大丈夫だよ。先生、火元が授業サボろうとしてますよ。」


「は?いや、ちょっと。ちゃんと心配で、」


いい気味だな。先生めっちゃ火元みてる。狼狽える火元って案外可愛いな。

さて、右腕が痛くなってきたので俺も保健室へと行きますか。


ドクン

シュウーー


「ぐっっ・・」


訓練所を出た所で、氷が溶けて痛覚が戻る。腕を氷らせたことで、火傷プラス凍傷の痛みが一気に腕に込み上げてくる。けど、ダメだ。ここで声を出すわけには・・

痛みを堪えるのが必死過ぎて、壁に持たれかかり、滑るように地面へと膝をつく。


「楓斗!」


誰かが俺を呼ぶ。この声を聞き間違えるわけがない。こんな無様な状態で、今最も会いたくないクラスメートNo.1

女神木下朝姫。

まさかの名前呼びがこのタイミングとは。


「誰か呼んでくる」


「木下さん、大丈夫だから。ちょっと躓いただけだから。」


動揺する木下さんが誰かを呼びに行くのを止める。

自分の魔法が暴発してぶっ倒れたなんてこれ以上無様な姿をこの子の前では晒せないよ。


「けど、その腕・・」


「大丈夫、すぐに保健室で見て貰って戻るから。」


心配そうに見つめる木下さん。いつもなら嬉しいんだろうけど、そんな余裕ないよね。

俺は精一杯の笑顔で木下さんに手を振る。


「でも・・」


「早く戻らないと、サボってると思われるぞ。っと火元と違って木下さんの場合は大丈夫か」


痛みに耐えられなくなった俺は立ち上がり、精一杯の強がりで木下さんに笑ってみせて保健室まで走っていた。



「派手にやったわね。」


「はははっ面目ない。」


俺の腕を見た保健室の真島先生の感想だ。

先生は俺の腕を観察しながら、時々なんか小声で独り言を呟く。


「これは、無理ね。」


「ん?今なんと?」


「私には治せません。」


真島先生は診察用のかけていたメガネを外す。

治せない?なんで?


「火傷と凍傷は私にも治せるけど、あなた毒魔法まで使用してるわね。しかもかなり高度な毒が腕を犯してるわ。」


なんと?暴発したのは火、水だけではなかったのか。今まで使ったことなかったけど、俺って毒魔法使えたんだ。あっけど、アイツの属性は毒だったか。


「多分君自身が毒魔法を使用出来るってことは耐性あるだろうから死にはしないと思うけど、とりあえず火傷と凍傷を治しましょう。ここに腕を置いて」


用意された台の上に腕を置くと、先生が発動した回復魔法で傷は見る見ると治ってほぼ元通りとなった。しかし、手のひらから肘に掛けて紫の線が入っている。これが先生の言う毒なのだろう。


「解毒出来る人か方法は調べとくから、どうする?このまま保健室居てもいいし、一旦教室戻る?」


ん〜腕の痛みは無くなって少し右手が熱いぐらいだから、木下さんや火元も心配させちゃったし戻るか。


「一旦教室戻ります」


先生に毒の紋様が消えるよう包帯を巻いてもらい、俺は適度にグーパーを繰り返すも違和感がない手に安心する。





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