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猫の夢  作者: 高田 朔実
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六週目⑤

「甘いものを飲んでいたのは……」

「彼だって、甘いものは飲めるんです。まあ、これも話すと長くなるのですが、清美ママにタミを誘拐されそうになって、私が助けてあげた話を聞いたでしょう? あの後、彼は自分を恥じて、もう甘えてなんていられないぞとばかりに、今まで大好きだった甘いお菓子や、甘いジュースを絶つことにしたんです。次第に彼はそのことを忘れて、甘いものは体に悪いから食べてはいけないのだと思い込むようになっていきました。

 しかし、中学生になったある日、バレンタインデーに女生徒からもらった義理チョコをうっかり食べてしまい、またお菓子の美味しさを思い出してしまいました。

 そうしたある日、母親の浮気疑惑が浮上しました。おしゃべりなタミから、多分あなたも聞いているでしょうけど。そのとき、彼の中には幼少時代の忌まわしい記憶が蘇りました。また、あの事件が起こる前に母親が甘いもので自分を黙らせよう、思い通りにさせようとしていた日々のことを思い出し、その後つられなくなった彼を『かわいくない子』と言い捨てていたことまでも思い出してしまったのです。そうして彼の中で、再び甘い物を疎ましく思う気持ちが芽生えたのです」

 私が近くにいたら、コップの水をぶっかけてやっただろうと思った。

「でも、本当は好きなんでしょう、甘いもの」

「ええ」

「性格が歪んだりしないの?」

「だからこうして私は、その分せっせと甘い物を摂取しているんです」

 いつの間にか、No2の前に机が置いてある。そこには、チョコがコーティングされたオールドファッションドーナッツと、抹茶ラテが置いてあった。

「本当に、彼って人は。頑なんだから」

「でもあんた、この間の幹事会では、やけにこそこそと甘い物を飲んでたじゃない。なにか後ろめたいことでもあるんじゃないの?」

「突然甘い物を摂取し始めたら、周りの人がびっくりするかもしれないでしょう? 配慮してるんです。町田晋は周囲との調和を大事にする人間ですから」

 私が口を開くのを手できっぱりと遮って、No2はにっこり笑った。

「では、来週が最終回です。見つかっても見つからなくても、チャンスはあと一回だけです。でもまあ、所詮ゲームですから、あまり熱くならないでくださいね」

 そこでちょうど歌が終わり、夢の世界はあっという間に遠ざかっていった。

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