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9 招かれざる客

俺は朝から医療所の前に集まっていた村人の対応をしていると、医療所の中からオイドと眠気眼なラミリアが出てくる。

二人は、昨日作ったポーションを大量に乗せた大きなトレイを持ったまま俺のいる所まで到着する。


「ほれ、アーノルドも手伝うのじゃ!」

「はいはい……」


俺は大きなトレイを受け取ると、すぐにオイドが台を持ってきたのでその上に大きなトレイを置く。


「またせたの! ポーションは一杯ある。欲しいものは銀貨一枚でどうじゃ?」


オイドは集まった村人たちにポーションの値段を伝えると――


「銀貨一枚でいいのか! 買うぜ!」

「買わせていただきます」


――といった風に、村人は特に異論をあげることなくポーションを買い始めた。


「それでは並んでくれるかの」


それからオイドは手慣れた手つきでポーションを銀貨1枚として売り出した。

俺は一連の流れに身を任せる事にした。


(……面倒くさいし、オイドに任せておこう)


ちなみに相場としては宮廷で一か月過ごすのに銀貨200枚ぐらいあれば暮らしていけた。


(そう考えると……安いのか?)

「ふぉっふぉっふぉ、アーノルド。このままじゃと昨日作った在庫がすぐになくなってしまうの。もっと作らなくてはならん!」


朝から並んでいる村人にポーションを売りながら上機嫌に話すオイドを横目に――


「朝からこんな労働……嫌なんだが」


――俺はため息交じりに答える。


「アーノルド、何をいっておる! 村人が求めているものを提供する。これほど素晴らしい事はないんじゃぞ!?」

「……そうですか」


ラミリアも不慣れな手つきでポーションと銀貨1枚を次々と交換していた。

沢山あったポーションは次々と銀貨に変わっていき、行列を成していた村人が消えた時には沢山あったポーションが大量の銀貨に変わっていた。


「すごいな……朝一で全部なくなったぞ」


空になった大きなトレイを持ち上げてラミリアも喜んでいるようだ。


「そうじゃの! すぐに追加のポーションを作らなくては!」


オイドは箱に入っている銀貨を手で何度もすくいながら呟く。


「……だな。それにしても、俺の作ったポーションがこんなに売れるなんて思わなかったぞ」


俺はサボる為に始めたポーションつくりに可能性を見出しながら、医療所に戻るのだった。




◇◇◇




それからは業務中にもポーション作りを行うようになった。

嬉しい事に俺のポーションの効力なのか、医療所に来る患者の数が以前より少なくなり、その分ポーションを買いに来る人が増えていた。


「でも……ここって医療所なのか薬屋なのか分からなくなるな」


俺がポツンと呟くとオイドは笑いながら答える。


「ふぉっふぉふぉ。そうじゃの。ここ最近のポーションの売り上げだとこの医療所を薬屋に改装しても良いかもしれないのぉ」

「……もうそんなに売れているんだな。でも、改装するならまずあの超狭い部屋をなんとかしてくれ」

「そうじゃの。寝床も一緒に改装しようかの!」


オイドの話を聞いてラミリアも嬉しいようで両手を上げて何度もジャンプしていた。


「……それなら俺も異論はない」


上機嫌に話すオイドを見るに、それほどポーションの売れ行きがいいのだろう。

そんなことを考えていると――


「ここにポーションを作る者がいると聞いてきた! 誰かいないか!」


――医療所に聞き慣れない声が鳴り響く。


「なんじゃ? ちと見て来るかの」


オイドはそう言うとすぐに医療所の外へ駆けていった。

すると、すぐにオイドの声が外から聞こえてきた。


「アーノルド! ……すぐ来るのじゃ!」

「はぁ……なんだよ」


俺はため息を吐きながら重い腰を上げる。

外に向かおうとすると、ラミリアも付いてくる。


「ラミリアも来るか?」


すると、ラミリアは何度も頷く。


「それじゃ一緒に行くか」


俺はそう呟くと、ラミリアと一緒に医療所の外へと出た。




医療所の外に出ると、オイドと一緒にいたのは鎧を着たどこかの国の騎士っぽい見た目の男性が立っており、更に背後には複数の兵隊を引き連れてきていた。


(……どうやら、いけ好かない客が来たようだな)


そんな事を考えていると、急にラミリアが頭を抱えて苦しみだす。


「~~~っ!」

「どうした、ラミリア!?」


ラミリアはそのまま俺の腰にしがみ付き、微かに震えていた。


(……こんなに怯えたラミリアを見たのは初めてだな)


その元凶である可能性が高い騎士に俺は視線を戻す。


「誰かと思ったらラミリアじゃないか? 何故生きているんだ? ……お前が治したのか?」

「……はい、そうですが」

「へぇ……すごいな。あの傷を治したとは……助かったよ青年」


男は俺にお礼を伝えた後、不敵な笑みを浮かべながらラミリアに視線を移す。

当然のごとく、ラミリアは男に視線を合わせずに俯いて俺にしがみ付いていた。


(……なるほど、こいつがラミリアを傷だらけにした張本人……という訳か)

「それで、貴方は誰でこの医療所に何のご用でしょうか?」


俺は早くこいつからラミリアを早く遠ざける為に、さっさと本題に入る事にした。

尋ねると、鎧の男は両手をバッと広げて声を高らかに声を上げる。


「ふふ、聞いて驚け! 私はエラルド公国の次期王イスラ・エラルドである!」


イスラという男は自身満々に自己紹介をする。


(……いや、知らんな)

「オイドは知っているのか?」

「当たり前じゃ! エラルド公国はこのネルド村から一番近くにある貴族が治める国として有名な国じゃぞ!」

「そうだったのか。……それで、その次期国王がこんな辺鄙(へんぴ)な村に何の用だ?」

「お前達が作っているポーションの話を人づてに聞いたので、わざわざ来てやったのだ」

「へぇ……次期国王が来るってのは相当だな」

「その通りだ! さぁ、私にポーションをありったけ渡すのだ」


男は声高らかに要求してくるが――


「――断る」


俺は即答でイスラの要求を断るのだった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるのっ……!」


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