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4章 さよならの口づけを君に・・・(表)


 『きさらぎ駅』


 きさらぎえきとは、日本のインターネットコミュニティで都市伝説として語られている架空の鉄道駅である。

 

 匿名掲示板やSNS等で類例が散見されているが


 巻き込まれた人達とは最終的に連絡が途絶え、消息も不明なままとなっている。


 数年後に生還者が現れたとの情報もあったがそれが本人であるかは不明。


 ※一部Wikipediaより抜粋。


 俺にとって、それはすぐには信じられなかった。


 もう二度と会えないと思っていた人が、すぐ手の届く目の前にいたから。


  

 『・・・・千歳、なのか?』



 「どうして・・・・悠人がここに?」



 数分の沈黙を破ったのは駅が近づいたのを報せる汽車の汽笛。


 緩やかに速度を落とし、駅のホームに止まる列車。


 スピーカーからさっきの車掌らしき男の声が聞こえるが、内容までは耳に入らない。



 「悠人・・・とりあえず、座ったら?」



 俺はそこで自分が立ちっぱなしな事に気付き、千歳の向かいに座った。


 ~~~~~~

 ~~~~~~


   

 座席に座ってからお互いが黙り込んだまま時間だけが過ぎ、やがて列車は駅を出発する。


 窓の外は既に夕日が落ち、車内はガス灯の灯りが車内を照らしていた。


 薄暗い車内、窓の外には月明かりに照らされた幻想的な銀色の麦畑が広がっていた。



 『「・・・なぁ(ねぇ)」』



 同時に声が被ってしまう。



 「・・・ゆ、悠人から」



 『・・・・・おう』



 俺は一度落ち着く為に大きく息を吸う。



 『チト、またこうしてお前とまた会えたのはとても嬉しい・・・でも、これが本当の意味での今生の別れになってしまうのはとても悔しくて、残念だ』


 「悠人・・・」


  『実は俺さ、チトの実家のお前の仏壇に手を合わせに行ったんだ、終業式の日に別れたままだったのが何か嫌でちゃんとさよならを言いたくて・・・でも結局、門前払いで終わったが』


 

 「ママの生家は色々と面倒な決まり事があるの・・・ごめんなさい」

 

 『でも、その帰りにこうしてお前と会えたんだから結果オーライだ、さっき車掌みたいな奴から聞いたんだが、俺は次の駅で降りなきゃいけない、つまりは次の駅で本当にお別れって訳だ、だからー』


  

 最後にさよならを伝えられて良かった、そう言いかけた時、さよならの他にもう一つ千歳に伝えたい事があったのを思い出した。



 『だから・・・さよならの前に伝えたい事があるんだ、千歳に・・・・』

  

 「伝えたい事、私に?」



  千歳は首をかしげている、それどころではない程に俺の心臓がバクバクとなっていた。


  

 

 『(あ~クソッ、勢いのままだ!!)』


 

 俺は千歳の両手を包むように手を取り、千歳のその大きな瞳だけを見つめ・・・


 

 『チト、いや千歳、俺は・・・お前が好きだ』



 俺にとって今生の別れの言葉よりも大事な想いを伝えた。


          

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