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一般人は冒険などしたくない  作者: ゆーらん
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現状把握とできること2

 伊織が最初に魔方陣の場所で倒れていたのが、一昨日の真夜中過ぎなのだという。

 それから丸一日、全く起きることもなく眠り続けていたとか。

 起こそうなどとはしなかったのだろうか。その疑問が顔に出ていたのだろう、マリアは更に続ける。


「アレクシス様が仰るには、体内魔力が著しく減っているとのことでしたので。まずは回復していただこうということになっておりました」


 それで丸一日寝こけたと。納得する気持ちはあるが、同時に回復速度はゲームと同じ程度ではないかという理解をしてしまった。

 これはMP量が多い伊織としては朗報だろう。時間経過で絶対数値の回復量となれば、せっかくのアドバンテージもほぼ死んでしまうところだ。逆にパーセンテージでの回復量となると、短時間で低MP量の人間よりも多くのMPを回復することができる。尤も、まだ何がどれだけできるかを把握していないので、考えるのはこれからになるが。


 ここで先ほどの既視感を再度思い出す。

 自分のステータスやらスキル画面を見ていて思い出したが、あれは【GATE】という、かなり古い――20年以上前のRPGだったはずだ。

 当時はRPGが乱発していて、とにかく変わったシステムを乗せたゲームが多い時代だった。

 このGATEもその中のひとつだ。パーティメンバーそれぞれに、カード編成のようにそれぞれのジョブ特性を持たせたスキルの振り分けができるゲームだった。

 世間的に見ればイロモノ枠であったはずだし、それほど有名だった記憶もない。もちろんストーリーの記憶もないので、ここが実際そのGATEの世界だと言われても「ふうん?」という反応しかできないと思う。

 伊織もなぜ覚えているかと問われると、兄である斎がやけにハマっていたからにすぎない。レベル上げと、スキルを振り分けてとんでもない特化キャラを作るのは楽しかった。


 ……そのGATE内でのHPとMPの最大値、どちらも四桁だった気がするなあ、と余計なことを思い出して落ち込む。


「ん?あれ、いや、やっぱ色々おかしいよなあ?」


 しかしステータス問題を無視して、ふと先ほどのアレクシスとの話を思い返す。

 伊織としては、どうにか楽に稼いで楽に暮らしたい、程度の目的しかないのだが、アレクシスは色々言わなかっただろうか。

 60年ほど前に斎がこちらに来たとか。災禍を討ち滅ぼしたとか。

 恐らくだが、斎がこちらに来たというのは、地球における20年前のプチ家出騒動のときで間違いないだろう。夏休み中を使って家出をしたぞグレたに違いないと言われていたが、まさか原因がこんなところにあろうとは。

 ということは、地球との時差は倍以上もあることになる。……一、二世代前の伝説か、男の子(クリフォード)は好きだろうな。


 それと気になるのは、大陸中央部のメールシャロル。あかんタイプの異世界召還という話とは別に、()()()()()にありながらの魔力漏洩という点が気になった。

 想定外の何かが起こったとも考えられるが、それだけ魔力に恵まれた土地なら、魔術だか魔法だかの、それなりの使い手がいるはずである。

 レイラインが神話の時代から存在するというのなら、国ぐるみで魔力とは付き合いがあるわけだから、それこそ国を挙げて研究なりを進めているべきである。

 誰か一人でも「万が一の事故」の可能性を示唆する人間はいなかったのか。いたとしたなら、なぜ聞き入れられなかったのか。あるいはその人間に力が圧倒的に足りなかったのか…

 この辺りの経過は他国からでは詳細が分からないかもしれないが、できることなら確認はしておきたい。先々でメールシャロルという国を、自分の中でどう位置付けるかの材料にはなるだろうから。


「どうかされましたか?」

「いえ。昼食、ありがとうございました。色々気づくこともありましたし」

「それはよろしゅうございました」






 執務室に戻ると、こちらも早めのティータイムとなっていた。

 とはいえ、体つきを見るに戦人であろうクリフォードの食べている量が伊織の先ほどの食事量と変わらないのは驚く。

 それよりも、甘党であることを隠さない習慣なのかなという方が気になった。なにせクリフォードが食べているのは全部が菓子類だ。自分ならば胸やけしているな、と伊織は見ているだけで気持ち悪くなっていた。


「やあ、もう良いみたいだね」

「ええ。…聞きたいことも増えてしまいましたけど」

「だろうね」


 カチャリ、とティーセットをテーブルに戻すアレクシスを見るに、恐らくわざとの失言だったな、と気づく。失言というよりは「気づかせ」なのだろう。

 となると聞きたいことは二つだ。時差の話はしたところで意味がないのでスルーすることとする。


「まず一つ。アレクシス殿、貴方一体、「何」が見えてます?」


 まずはこれ。マリアが聞いたという体内魔力の枯渇。

 アレクシスが一目でそれを見抜いたと言うのなら、伊織と同じように「何か」が見えているに他ならない。

 もちろん一目でそれとわかる症状が出ていたという可能性もあるが、魔法陣の上で倒れ込んでいた伊織の体には「だるさ」という自覚症状以外には何もなかったと記憶している。

 また、外見で分かるものであったならば、マリアもわざわざ「アレクシスが言っていた」と伝えなくとも良いはずだ。魔力のある世界での魔力枯渇症状はそう珍しいものでもないだろう、この家中で信を置かれているらしいマリアが知らないという可能性は低い。


「やはりそうなるよね。イツキ殿もそうだったらしいが、貴女にも見えているのか」


 このぐらいの、と示すサイズは伊織が見たステータス画面とほぼ同じぐらいのもので。

 まさか、と思ってクリフォードを見ると、こちらも同じ格好をしていた。なんだこの萌えキャラ。


「えっと…フィン・レーベンでは一般的な…?」

「いや?これはイツキ殿が持ち込んだと言ってもいい概念だからね。実は異世界人に特有の能力といっていい」

「は…?いやでも、アレクシス殿は、」


 嫌な予感がする。

 斎が来たのは60年ほど前と言っていた。目の前のアレクシスはといえば、高めに見積もっても三十路半ばといったところだろうか。

 いや、それならば確定したわけではない。

 覚悟を決めてアレクシスの言葉を待つ。


「イツキ殿はね、私たちの祖父に当たるのだよ」

「うっそでしょ」


 あのバカ兄、日本(うち)に帰ってくる前に既成事実作っていやがった。

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