第5話 密談
「ふう、今回も収穫なしか」
街のチンピラ共を片付けた後に手持無沙汰になる。
「ん?」
帰路につこうと少し歩いたところで、この間野々宮をいじめて停学中の女子生徒が、路地裏にある扉を開けて中に入っていった。
「こんなところで」
停学中なのに外に遊びに出ること自体ダメなんだが、そんな軽い様子ではない。
確認しておいた方が良さそうなので、後をつける。
薄暗い建物の中人に見つからないように注意して進む。
明かりの漏れ出た扉の前についた。
「準備はできた?」
「ああ、準備どころか今から仕掛ける予定だ」
「へぇ、早いじゃない」
「ああ、丁度船を出すのが日付を超えた夜中になるんでな、その方が都合がいい」
「それはよかった、ところであの邪魔してきた男だけど」
「何か分かったのか?」
「ええ、うちの学校の先生だったわ」
「何? それだと手を出しづらいが……やれないことはないな」
「あんた、学校襲う気?」
「ははは! 流石にそれは足がついちまう! なに、先生様は生徒を見捨てないんだろ?」
「聖人面の顔に思いっきりぶち込んでやりたいわね」
「そこらへんは任せておけ、それよりも今頃決行されているだろう」
「ええ、任せたわ、くれぐれも足がつかないように」
会話を聞く限り、野々宮をまた襲う気だろう。
そして、それを餌に俺をおびき出してボコろうという魂胆か。
俺は扉を開き、中に入る。
「ああ? 誰だてめぇ」
「話は聞かせて貰ったよ」
「御薬袋葉!」
「まさか?」
「聖人面の先生だ、特別講習をしてあげよう」
「ちっ! つけられてたのか!」
女子生徒と話していた男が武器を取り出す。
「あんた、身体強化魔法で戦うそうじゃないか?」
「学習はしているようだな」
「褒められて嬉しいよ」
男の武器は、グローブ型のナックルだった。
「魔拡張武器か?」
魔拡張武器とは、魔力を流すことで絶大な威力を発揮する、現代における最強武器だ。
「残念、科学武器だ! まぁ弱くはねぇから楽しめよ!」
魔法が発展する前に猛威を振るっていたのが、科学武器と言われる物だが、現在ではもう古い時代の遺産だと言われている。
「ほう、最近は対魔法師用の武器も作られているようだし、強そうじゃないか」
「あ? てめぇ、その情報どこから、まぁいい余計に黙って返せなくなったな!」
そう言うと男が殴りかかってきた。
「加速!」
なんの力を使っているか知らないが、一気に加速して殴りかかってきた。
それを捌き、受流してやる。
「何!」
男は驚愕の表情を浮かべた。
「超電磁砲の加速を取り入れたスピードについてこれるだと……」
「超電磁砲? そんなもの人間の身体に使えばタダでは済まないと思うのだが」
そう、そんなスピードで動いて、人間の身体が耐えきれるはずがない。
「なるほど、そういうことか」
男をよく観察すると、答えがわかった。
「ハハハ! サイボーグを見るのは初めてか?」
男の腕が捲れ、機械の部分が見えていた。
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