プロローグ
魔法先進国日本。
そこには先進国でも解決できない‘‘いじめ‘‘というものが行われていた。
「園田! きめぇんだよ!」
私、園田遠子はいじめを受けていた。
男子学生に囲まれ、壁際に追い詰められている。
その周りには、数人の女子学生がおり、笑ってみている。
事の発端はなんてことはない、ある男子学生に告白されて断ったそれだけだった。
断った男子学生が何かしたのではなく、その男子学生を好きな女子学生が嫉妬で私をいじめはじめたのだ。
「はぁはぁはぁ」
私はここまで必死に逃げたが、相手方は人数が多すぎる。
誘導されるように、路地裏に追い込まれた。
「もう魔力もないんだろう? あきらめろよ」
欲望に満ちた顔で‘‘ヤラせろ‘‘と言っているのが分かる。
しかし、相手の言う通り、私は逃げるための魔力はもうない。
「キャハハハ! まだ抵抗すんの? ウケる!」
時代錯誤もいい所の、ダサい喋り方をしている女子学生が首謀者だ。
「たけし~、やっちゃって!」
そう言うと、目の前の男が私の腕を掴み組み伏せる。
「うっ」
「おいおい! 乙女の涙か? 泣けば許すとでも思ってるのか?」
ここまで強がっていたが、流石に耐え切れず涙を流してしまう。
これが相手の思うツボだとしても、やはり乱暴をされるのは嫌だ。
「いただきま~す」
男子学生が私の身体をまさぐってくる。
「いや」
そう呟いた瞬間、目の前の男子学生が消えた。
「え?」
周りにいた学生達が、豆鉄砲を喰らったように驚いた顔をしている。
「はぁ、魔法技術が進んで、科学技術が意味を成さなくなるのはいささか問題だな」
眼鏡をクイッと上げた男性が、少女の前に突然現れた。
「君たち、第二魔法学院の生徒達だね、ここで何をしているのかな?」
切れ長の目で見られて竦んでしまった学生達。
「私にはいじめの現場に見えるんだけど?」
首謀者の女子生徒が威勢を見せる。
「オイ! 相手は一人でしょ!」
そう言うと、男子学生が男の人を囲む。
「はぁ、大人しく答える気はありませんか」
「てめぇの口を封じちまえば問題ねぇよな!」
近くの男子学生が、炎を発現させ男の人に放つ。
「君、人に魔法を放ってはいけませんって習わなかったのかい?」
男の人は炎を‘‘叩いた‘‘
「え!」
「あり得ない! 魔力の乗った魔法は魔力の乗った魔法でしか相殺できないはずだ!」
「そうですね、よく勉強しているじゃないですか? では、分かりますね? あなたと私の差が」
「こ、この! 全員でやるぞ!」
男子学生がそう言うと、一斉に魔法の準備を始めた。
「本気ですか? やるなら覚悟してもらいますよ?」
男子学生は一瞬怯んだように見えたが、大声を出して奮い立った。
「クソッ! なめんなよ! やっちまえ!」
その合図で一斉に魔法を男の人に放つ。
魔法に包まれ姿が見えなくなる。
「チッ! ビビらせやがって」
「た、たけし! やりすぎじゃない?」
女子生徒が今更になって及び腰になる。
「ああ!? やっちまったんだしょうがないだろう?」
反省の色など全く見えない。
「いけませんね!」
「何!」
煙が晴れて視界が開けると、男の人と少女は無事だった。
「指導のお時間です!」
☆☆
少女は魔法の余波で気を失っていた。
気が付くと、男子学生達が周りに倒れており、いじめの首謀者も一緒になって気絶していた。
「気が付きましたか?」
ふと、隣を見上げると、先ほど助けてくれた男の人がいた。
「あなたも第二魔法学院の生徒ですね、警察を呼ぶなり、保護者を呼ぶなりするとよいでしょう」
そう言われ、男の人は去っていった。