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4 - 23.『Promotion War - XIV』

4-23.『昇格戦 14』

「なんで……?」


 僕達は今まで彼女を()()として認識できていなかった。少年だと思っていたのだ。それに存在すら曖昧であった。恐らく常時、認識阻害の魔法を全員に発動していたのだ。膨大な魔力量と難易度の高い魔法の常時行使。魔法恩恵を受けた魔物の中でも人間の知識と身体を手に入れた存在。それが〈魔王〉なのだ。


 魔王と言えば、アリスが話してくれた〈炎の魔王〉も魔王の1人だ。魔王は魔物が人間を何らかの手段で吸収し力を手に入れるか、魔物と人間の子供として誕生する。


「君のような()を僕は他にも知っている。」


 静かに伝える。彼女の目は大きく開かれた。それが驚きだったのだろう。一歩、こちらに寄ってくる。


「本当に……?」

「それにそっくりだ。瞳も……顔も。」

「……!?」


 衰弱で魔法が解除されて、僕達が認識できるようになった時に驚いたが、アリスに容姿がそっくりなのだ。恐らくアリスと同じ〈炎の魔王〉の娘。そしてアリスよりも背が低い事を考えると、アリスの妹だということだろう。


「詳しくは後で話すよ。そろそろフィールド再編がある。先に作戦を話そう。」


 どうやら認識阻害を再び発動しているようだが、一度本当の姿を確認したため、無意識に魔法に抵抗しているようだ。


「君の名前を教えて欲しい。作戦を話すときに呼び名に困るのはちょっと嫌だから。」

「うん……ヘレナ。」

「ありがとう。ここからはもう人数がどのクラスも少ないことを考えると、固まって行動するのが全てのクラスの方針になると思う。」

「最善策はJ-1とJ-5の共倒れ?」

「確かにそれが最善だけど、J-5だと力不足だ。だからJ-5に協力する素振りを見せる。」

「素振りってどういうことだ?」

「スナートもかなり落ち着いてきたんだね。J-5と直接話しても多分裏切りを警戒して乗ってくれないと思う。だからJ-5がJ-1と対戦するように誘導しつつ、戦闘中にJ-5を支援するような行動を取るんだ。」

「行動で示すって事か!」

「その通り。J-1をJ-5が倒すと同時に僕達はJ-5に間髪入れずに攻撃開始する。」

「裏切っては……ないね。」

「そうなんだ。口では何も言ってない。J-5が勘違いするだけだ。だからこそこちらは遠慮なく攻撃できる。あくまでもJ-1とJ-5の戦闘に第三者として関わるんだ。直接の接触はいけない。」


 3人が頷いた。ここまでは良いだろう。肝心なのはここからだ。


「僕達はチームに分かれる。」

「……それはわざとに不利になるってこと?」

「いや必要なチーム分けなんだ。それに恐らく危険はない。」

「……? どういうこと?」

「必要なのはヘレナのJ-5への認識阻害。そしてJ-1のJ-5への誘導だ。」

「遭遇しないといけないからってことだね。」

「認識阻害するけど人数が揃わないといけない。だからヨルクス、スナート、ヘレナの3人はJ-5の前に現れてひたすら攻撃しないで逃げて欲しい。僕はJ-1を誘導する。合図は僕が上げるから。」

「ヘレナは……できる?」


 ヘレナは小さく頷く。使える魔法の数としては僕の方が多いが、魔法の質や魔力量などはヘレナの方が僕の何倍も強い。魔王であるからこそ、魔法恩恵が大きいのだ。


「じゃあそれでいこう。でも気をつけて欲しいのはここからは建物の中も解禁される。だからJ-5なんかはずっと引き籠っているかもしれない。わざとに隙のような仕草を見せないと動かないかもしれない。」

「J-5が居ることに気付かないで近くを通るとか良いかな?」

「うん、すごく良い。あくまでもJ-5を威嚇しないようにしながら、J-1を倒せるかもしれないっていう勇気を持たせてあげて。」

「分かった……。」


 作戦はこれぐらいで良いだろうか。ヘレナはアリスの話が聞きたいのだろう。しきりにこちらを見ている。誤魔化してはいるが、認識阻害が無いと隠すのはそこまで上手くないことが分かってしまう。だけど今話すにしては時間が足りないんだよね……。


『長らくお待たせしました。只今より新フィールドへ転移します。尚、残りの人数の問題で建物内の解禁はなくなりました。そして試合時間を設け、試合時間終了時点で残りの人数が多いクラスから〈J-1〉とします。』


 僕達は転移する。なんだ、この状況は……? 僕達に圧倒的有利すぎる。試合時間を設ける必要もないように思えるが。転移すると僕達は木々の中に居た。


「どうしてこんな所に?」

「多分、公園か何かじゃないかな。」

「ああーそういうことか。」


 明かりが強くなる方へ向かう。時刻は夜に設定されているようだ。かなり薄暗い。摩天楼の建物から漏れる光と街灯の光だけが頼りになる。


『試合に公平を期すために、〈J-10〉のうち2名が魔法禁止、〈J-1〉のうち1名が魔法禁止となります。魔法禁止となるのはクラス内で撃破数が多い人から上位2人もしくは1人です。それでは後半戦、試合開始!』


 公園の木々は風に揺れる。サワサワと心地よい風が吹いているようだ。


「僕とヨルクスかな、魔法が使えないのは。」

「そうだろうね。つまりロムスによる殲滅を封じるための手段ってことだね。」

「そう考えると、やはりJ-1とJ-5を戦わせる作戦がますます良くなったな……。」

「幸いにもヘレナは魔法が使えるみたいだからね。人が残ったらスナートに頼もうかな。」

「俺か!?」

「ヘレナは認識阻害してくれてるからね。スナートも頑張ってもらわないと。」

「……ま、任せろ!」

「そこで自惚れないのがスナートの良い所だよ。それじゃあ別行動しようか。」

「ロムスは大丈夫?」

「うん、魔法を使わなければよいだけだから。手はあるよ。」


 僕は手を振って、その場を立ち去った。〈龍の紋章〉を使えば負ける事は無い。制限時間に間に合うように最短で行動する方法を考えるのだった。

次回更新予定 - 6/9(火)12:00


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7/1より新作連載開始。

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