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1 - 9.『Admission』

1-9.『入学』

 森でアリスと話した後、僕達はすぐに宿でよく話すようになった。最初はどこか憂鬱そうな表情をしていたアリスも今は明るい。


 それでも森で僕が言ったあの言葉は、思い出すだけでも恥ずかしい。


「騎士様。」


 アリスが耳元でそう囁く時がある。多分、僕の顔は沸騰していると思う。


 それはそうと、今日は入学式なのだ。実はアリスも魔道学院に合格していたらしい。という事で僕とアリスは魔道学院へと向かうことにする。


「行ってきます!」


 宿屋の女将さんに手を振る。


「ああ、行ってらっしゃい!」


 手を振り返してくれた。この宿で本当に良かった。エレラには感謝しないといけない。


「ロムスのクラスってどこなの?」


「僕は才能ないからね。〈J-20〉なんだ。」


 そう苦笑すると、アリスが怒り出す。


「なんてひどい審査員なの!?……ロムスは弱くなんてないのに。」


 そう言われると僕の頼りなさを再認識してしまうから辞めて欲しい。うん、お願いですから辞めてください。


「でも強くなれば昇級試験も受けるからね。すぐに〈A-1〉まで上がってやるさ。」


「うん、ロムスなら絶対にすごい魔道士になれる。私はロムスの強さを知ってるよ。」


「ありがとう。」


 そんなやり取りをしていると、道端からケッと唾を飛ばす音が聞こえる。そして、騎士に運ばれていくのが見える。自業自得だ。


 魔道学院に着く。辺りは新入生らしき子供で溢れ返っている。僕とアリスもその中の一員なのだ。魔道学院に入る。中では生徒会らしき生徒達が誘導をしている。


「あ、エレラ先輩!」


「ロムス君!それに……?」


「アリスです。」


 アリスが淑女の礼をする。どこか不満げである。どうして……?


「綺麗ね。」


「あなたこそ綺麗ですよ、エレラ先輩。」


 エレラの目もアリスの目も冷やかであった。間に挟まれた僕は吹雪の中にいるような気分だった。ここは話を変えないと……。


「え、エレラしぇんぱい……入学式はどこで?」


「ふふふっ……しぇんぱいはないですよ。講堂で行われます。流れに沿っていけば着きますよ。」


「ありがとう……ございます。」


 見れば、アリスも笑っていた。そんなにおかしかったのか?じゃあ、僕の作戦がすごかったってことだね。うん、そうだ。間違いない。


 講堂に着くと、僕達は席に座った。講堂はとても広い。軽く3000人ほど入りそうな一階部分にその倍以上の人数が入りそうな二階部分。果たして何に使うのだろう。


「―――ただいまより始業式を開式いたします。まずは本学院の学院長の挨拶です。」


 教員席より一人の男が立ち上がる。場の雰囲気は完全に男に握られていた。圧倒的なまでの強さ。それがその男を表していた。


「堅苦しい挨拶は無しとさせてもらう。新入生の諸君、入学おめでとう。我ら魔道学院が望むのは強い生徒であり、賢い生徒であり、才能のある生徒である。弱い者はいらない。毎月行われる、測定審査では下位10名の生徒を退学処分とする。覚悟して学院生活を送りなさい。これで私からの挨拶は以上とさせてもらう。」


 学院長が拡声器から離れると同時に、講堂のあちこちからため息をつく声が聞こえる。息継ぎをする間も与えないような圧迫感をあの学院長は新入生に浴びせていた。恐らくこれも一種の審査なのだろう。気絶すれば退学という。


 不思議と僕の心は高ぶっていた。アリスを見る。その美しい瞳はいつも以上に輝いていた。気持ちは同じようだ。


「アリス、頂点を目指そう。」


「当たり前。」


 僕達は改めて誓い合う。そして、始業式は終わった。


「―――新入生は所定のクラスへ移動してください。」


「アリスは……どのクラスだっけ?」


「私は〈D-10〉。」


 掛け離れている。上位クラスにアリスは所属していた。まず僕が目指すのはそこか。


「言っておくけど、ロムスを待っているつもりはないからね?」


「そんなこと……分かってる。すぐに追いついてやるさ。」


 そう言って僕は笑いかける。アリスも笑う。僕達は別れた。


 Jクラスの廊下を歩く。どうやら教室は異空間であるようだ。Jクラスの廊下には1から20までの扉が並ぶ。僕は一番奥の20の扉に入る。


 僕が20の扉に入ろうとすると、笑い声が聞こえる。どうやら僕を笑っているようだ。だが、気を止めるだけ無駄だ。僕は笑っている人達をすぐに抜かす。それに……成り上がりは一番下からでないと面白くないじゃないか。


 扉を開く。中からは喧騒が聞こえる。魔道学院の最底辺。僕は〈J-20〉クラスに入る。


「また雑魚が来たぞ。」


 一人がそう言った。僕は上を見上げた。階段状に並んだ長机に座っている男がいる。年齢は15か16。


「懲らしめてやれ。」


 ガキ大将というやつか。僕は魔法の発動準備をする。魔力を練り込み、イメージ。いつでも発動できる。僕を囲うように5人の生徒が近寄ってくる。


「邪魔。【束縛】」


 紫魔法呪系統の魔法【束縛】。呪いの力で相手を縛り上げる。5人とついでに1人を捕らえた。


「そんなもの? やっぱり最底辺なのか。期待して損した。僕はロムス。〈A-1〉を目指す者だ。」


 クラスは沈黙に包まれた。

第一章『学院入学編』終了です。

次話からは第二章『結束編』です。


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