4 - 6.『Promotion War - I』
4-6.『昇格戦 1』
本日三回目の投稿です。
生徒会室で話をしてから数日後。僕はエレラに会いに行っていた。
「どうしたの?」
「〈研究ギルド〉の件ですけど、登録させてください。将来についても考えておかないといけませんし。」
「そうね、それは大事だと思うわ。じゃあこちらで手続きを進めておくわね。」
「ありがとうございます。」
エレラは用事があると言って、それ以上の話はしなかった。僕は教室に戻る。授業が始まる直前であった。僕は慌てて席に着く。
「おい、ロムス、遅刻だぞ!」
「うるさいよ、スナート。時計も読めないの?」
「くそっ!まだ始まってなかったのか!」
「ははは……。」
苦笑しているヨルクスの隣に座る。授業は生徒会室で話をしたお陰か徐々に再開され始めていると知った。2期生、3期生、4期生はまだのようだが、1期生と5期生はほとんど全ての授業が行われている。
「はいはい無駄話はそこまで。君達に先に伝えておかなければならないことを言っておく。」
「伝えておかなければならないこと?」
「ああ、そうだ。ロムス君とシーナ君の件で延期されていた〈昇格戦〉が来週行われることになった。」
「来週……!?」
いくらなんでも急すぎないか。それだと最下位クラスのJ-20はかなり困難を強いられることになる。
「ふん!それが何だ!俺らのクラスにはロムスもヨルクスも居る!シーナだってめっちゃ強くなってるんだからな!」
「何でスナートがそんな知ったような口ぶりなんだよ。」
「なんとなく!!」
「ふざけんな。」
おっと思わず汚い言葉が口から出てしまった。僕は手で口を抑える。ヨルクスの苦笑が更に苦々しくなっている。はい、すみません……。
「続きを良いかな? 勿論、時間が無いのは分かるけど、君達には頑張ってもらいたい。昇格戦の翌々週には〈測定審査〉も待っている。下位生徒10名の退学処分だ。J-20は無くなる。」
「力を出し切らなければならないと。」
「その通りだよ。まあスナート君も言ったように、このクラスには期待できる子がたくさんいるからね。スナート君が挙げた人以外にも有望な子はいるからね。」
斜め下を見ると、スナートが目を輝かせている。自分の事だと考えているのだろう。まあ、間違ってはいないのが腹立たしい。
「詳しい試合内容は?」
「それは本番で明かされるのが決まりだよ。いかなる戦いにも勝てる準備をしないといけない。」
「終始、僕達が不利な戦いですね。」
「そうなるだろう。でも君達が見たJ-19の生徒に負ける気がしてるのかな?」
僕はクラスの面々の顔を見る。ヨルクス、スナート、シーナ、リーラ。愉快な5人組はもう見ないことにした。前に挙げた4人は来たるべき戦いに楽しみこそあれ、不安な表情は一切は無い。自分達の力を慢心することなく認めているのだろう。その上でその表情をしている。
「楽しみだ。」
「うん、その調子。まあそれは置いておいて、授業はするからね。現を抜かさないように。」
授業が始まった。正直、授業にそこまでの意欲は無くなっていたが、知識を身に着けて魔法の向上をすることは今の僕にとって、とても重要なことである。これは疎かにすることはできない。どうにか気持ちを抑えて、授業に専念するのであった。
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「はい、今日はここまで。スナートは後で私のところに来るように。他の人はゆっくりしていいよ。」
今日の授業はすべて終わった。スナートはリルゲア先生の注意されたのにも関わらず、授業中ずっとそわそわと動き続けていたため、リルゲア先生にこれからこってり絞られるようだ。頑張れ。
「ロムスはこの後どうする?」
「ちょっと用事があって、今日はすぐに帰るんだ。」
「分かった。また、明日ね。」
「うん、また明日。」
僕は荷物をすぐに纏めて、教室を出た。それから宿へ戻る。
「ああ、おかえり!」
「ただいまです。今日はちょっと夕食遅くなるかもしれないですけど良いですか?」
「別に大丈夫だよ!」
「ありがとうございます。」
僕は部屋に戻り、部屋の中にある椅子に座る。机に向くと、僕は羊皮紙を取り出した。事前に準備しておいたものだ。羽ペンのインクを付け、書き記していく。〈墓場の世界〉で起こったことを書き留めようとしている。かなりの大容量になるだろうが、これを書けば説明する際にもかなり楽になるのだ。
「〈研究ギルド〉にこれを提出すれば良いんじゃないか?」
魔道研がどれぐらいの情報で満足するか分からないが、これだけの情報を与えておけば良いのではないだろうか。満足するに値する情報はかなりあると思うが……。
かなりの時間書き続けていた。渓谷での話。初めて会った街主の話。中央都市に行くまでの話。そう言えば厄災と初めて遭遇したのはこの時だった。懐かしいような不思議な気分に襲われる。サグルはどうしているだろうか。羊主も心配ではある。
「今日はこのぐらいにしようかな。」
かなり遅い時間だ。そろそろ夕食を食べないと、迷惑になってしまう。僕は1階に降りて、食堂に入った。女将さんに夕食をお願いする。
「お願いします。」
「ちょっと待ってなさい。」
「……ん?」
僕は見覚えのある人が食堂の端で食べているのが見えた。あれはアリスだろうか?
「アリス?」
「……ロムス。」
話そう話そうとして機会が無くて話せなかった。アリスは食べていた手を止めて、僕のほうを向く。
「ロムス、どうしてたの?」
「多分だいたいの話は聞いてると思うけど、異世界に迷い込んでいたんだ。」
「そうみたいだね……。3ヵ月も。心配したんだよ?」
「ごめん。言い訳はしないよ。」
「……ふふっ。ロムスはロムスだね。私は怒ってないよ。それよりロムスの話を聞きたいな。聞かせてくれる?」
「長くなるけど良い?」
「うん、全然かまわないよ。」
僕は女将さんが運んできた夕食を食べながら、アリスに僕の3年間を話すのであった。
次回更新 - 6月3日(水)00:00
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