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4 - 5.『Discomfort』

4-5.『不愉快』


本日二回目の投稿です。

「それで何を聞きたいんですか?」

「君が体験した全てだ。」


生徒会長は即答する。そんな事を言われても、3年間は簡単に話しきることはできない。


「掻い摘んで話しますね。」

「全て話せ!!!」

「……じゃあ僕は戻りますね。」


席を静かに立ち、生徒会室を後にしようとした。流石に諦めたのか生徒会長は白旗を掲げる。


「分かった!分かった!」

「何が分かったんです?」

「君は中々のサディスティックな性格の持ち主だな。」

「そんな事を言うために引き留めたんですか?」

「嘘だから……待ってくれ。君にはどのような経緯で異世界に迷い込んだのか。どのような世界だったのか。そしてどのように帰ってきたかだけでも話してほしい。」

「それぐらいなら。ですけど、その前に一つ言わせてください。」

「何だ?」

「僕が言いたくないのはただ長いからです。こちらの世界では3ヵ月だったようですけど、向こうの世界は3年だったんです。1日や2日で語り尽くせるものではありませんよ。」


生徒会長は唸る。時間の流れについては説明されていなかったのだろうか。先入観から〈墓場の世界〉をこちらの世界の延長線上にあると捉えがちだが、世界が異なれば何から何まで異なるのだ。その先入観は捨ててもらわなければ話にもならない。


「私の思い込みで君に大変なことを課そうとしてしまったみたいだな。それは素直に謝ろう。すまない。だが、いま私の言ったことだけでも答えてくれないか?」

「僕も答えたくない訳ではないので。譲歩してくださってありがとうございます。」


形式上でも感謝をしておく。副生徒会長のエレラと繋がりがあるのだ。生徒会長との関係性を悪くしておくのは良いことではない。


「ではまずは異世界に迷い込んだところから話しましょうか。」



+-----------+



僕が生徒会長から絞られた事項について話し終えると、一度息を整えた。話題は少ないが、その一つ一つに背景などがあり、複雑な関係性などを説明していたら結局長くなってしまった。


「ありがとう。私達の先入観が全て吹き飛ばされた気分だ。とても貴重な時間だった。」

「いえ、こちらこそ。僕も話しながら頭の中の整理が出来たので。」

「そう言ってくれるとありがたい。」


今度こそ終わりだろうと立ち上がると、今度はエレラが止めた。


「もう少しよろしいですか。」

「エレラも何か用があるのか?」

「はい。……この前、貴方に言ったこと覚えてる?」

「覚えていますよ。お陰様で混乱しましたけど。」

「それで考えはまとまったの?」

「まず僕の父さんに関する事柄は嘘のようですね。謹慎処分ではあるようですけど。」

「誰かに聞いたのね。リルゲア先生かしら。」

「リルゲア先生が?」


ここでリルゲア先生の事を明かすのは何かと不味い。正体が知れない人ではあるが、信頼は置けると僕は思っている。恐らくリルゲア先生は簡単に人を裏切らない。ある程度の力があって、信頼ができる人を売るような行為は出来ないのだ。適当にはぐらかすことにした。


「分かりにくい反応ね。もう騙されないって事かしら。」

「そんなことを考えながら返事していませんよ。」


僕は苦笑する。体力を意外と消耗する作業だが、ここは堪えどころである。時間的にもあと数分しか話す時間は無い。そんな僕の様子を見てエレラは諦めたのか、別の質問をする。


「これは質問というか、提案です。単刀直入に言います。〈研究ギルド〉に所属しませんか?」

「〈研究ギルド〉に、僕がですか? どうして?」


王都には様々なギルドの本部があるが、研究ギルドもその一つだ。〈魔道研〉なども研究ギルド内部の研究機関の一つとして知られている。他に有名なのは〈冒険者ギルド〉や〈商業ギルド〉、〈傭兵ギルド〉、〈治癒師ギルド〉などだろうか。どれも王都に巨大な本部施設を所有している。


「この先、貴方とシーナさんは何度も話を聞かれると思うわ。毎回話すのは大変じゃない? それに〈魔道研〉が調査をずっとしているから授業に差し支えがあるの。こういう言い方はあれだけど、2期生、3期生、4期生は授業が完全に休みで貴方達を恨んでるわよ?」

「研究ギルドで向こうの世界で体験したことを資料として提出しろってことですか。確かにそれだと楽ですね。考えてみます。ありがとうございます。」

「研究ギルドには私も御父様を介した伝手があるから、入るときは言って。」

「分かりました。その時はまた頼ませてもらいます。」


生徒会の面々を見ながら、席を立つが今度こそ止められる事は無かった。お辞儀をして生徒会室を去った。


「リルゲア先生、ずっと聞いていたんですか?」

「僕も授業が無くて時間があったからね。盗み聞きさせてもらったよ。」

「面白い話はありましたか?」


僕とリルゲア先生は教室へと帰りながら話を続けた。


「うん? そうだねー。君の異世界に迷い込んだ理由の推測は興味深かったね。剣客だっけ? その人の情報が無ければ不可解な事件として終わるところだったけど、

次回更新 - 6月2日(火)17:00


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