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4 - 1.『My World』

4-1.『僕の世界』


一か月お待たせしました。

新作考案に時間がかかってしまいました。

新作は7/1より連載開始予定です。

 不意に僕は目覚めた。横たわっていたが、目で周りの状況を確認する。まだ寝惚けているのか、見たことの無い部屋である。街にこんな場所は無かったはず。


「中央都市に戻ったのかな……?」


 人狼局や宿にはこんな部屋もあるだろう。じゃあその線が有力かもしれない。だが、僕はなぜか体が動かなかった。決して身動きが取れないようにされている訳ではなく、ただ単に五感を働かせる以外、自分で体を動かせないのだ。


「でも急がないと……厄災(カラミティ)を倒さないと……」


 どうにか体に鞭打ってうつ伏せになる。それから両手で強く押して、起き上がろうとする。しかし体は動かなかった。


「魔力が足りないかもしれないが……ここで使わないといけないな……」


 自分の魔力を体に集中させて、起き上がろうとする。


「魔力が……枯渇してる」


 先程までは微量だが、残っていたはずだ。魔力が自然消滅なんて普通はしない。唯一、呪いのようなものでも掛けられれば、魔力が自然消滅するかもしれないが、それよりも再生速度の方が速いのだ。


「おい、目を覚ますのか?」

「もうちょっとで目を覚ますはずだよ。」


 誰かが話しながらこちらへ来ているのが聞こえた。部屋の中に入っていないようだ。声は部屋の前で止まる。扉が開かれる。目しか動かないため、誰が入ってきたのかは分からなかった。


「ん……?」

「おい、あれって……!」

「誰、ですか……?」

「ああ、まだ体が動かないんだね。僕はヨルクスだよ。」

「ヨルクス……!?」


 僕は驚いて起き上がろうとするが、力が出なくて動けない。すぐにヨルクスともう1人が僕を起き上がらせてくれた。


「あっ……スナートか。」

「おい、なんだ! 残念そうな顔しやがって!」

「スナート、静かにしようよ。ロムスは入院中だよ。」

「それは……すまん。」

「いや、別にいいけど……」


 口が止まる。ヨルクスとスナートは僕を不思議そうに見ているが、僕はそれどころじゃなかった。ここは元の世界ということだ。つまり〈墓場の世界〉から僕は戻ってきている。


 あの状況で僕をこちらに戻すことが出来たのは、剣客だけだ。実際に剣客らしき人は僕に何かを落としていた。あれが転移の鍵だったのか。


「シーナは!?」

「まあ、落ち着いて。シーナは隣の治癒室にいるよ。今は寝てる。ロムスが〈墓場の世界〉だっけ? そこに居たことも知ってるし、3年間で何があったのかも聞いた。」

「ロムス、向こうの状況が酷いことは聞いた。だけどな、どうやら時間の流れが向こうの1年がこっちの1ヶ月らしいから、時間をもう少し掛けてもいいんじゃないか? 1年ぐらいなら大丈夫だろ?」

「ということは……3ヶ月しか経過してないの?」

「うん、そういう事だよ。だからロムスは10歳だけど、僕達はまだ年齢は変わってない。まあロムスは元々年齢が周りに比べて低かったから、同じくらいの年齢になったね。」

「ってか、絶対ロムスは7歳じゃなかっただろ。普通の7歳はこんなにまともじゃねえぞ。」


 流石に何年もすれば墓場の世界の情勢は変わっている。それを待つ忍耐力は僕にはない。だからもって1年だ。つまり猶予は1ヶ月。それまでに向こうの世界へ行く方法を見つけ出す。


「分かった……。とりあえず時間を置くよ。それよりも僕はこっちの話を聞きたいかな。」

「そうだね、話そうか。まず最初に言っておきたいのは、魔道学院にとってもこの事態は異常だったみたい。」

「異常……?」

「ロムスとシーナのこと。だから学院内で開催予定だった行事は一旦中止となった。昇格戦とかもね。そして教員達による〈箱〉の探索があったんだ。」

「〈箱〉って修練室で使った空間系統の魔法のこと?」

「うん。あれは魔道具の一種で世界の形容を指定できる亜空間を生成するものなんだ。」


 白魔法空間系統の魔法は初代勇者に当代国王、それに唯一のSS級冒険者の3人しか使えないと言われている。まあ、剣客も入れれば4人だけど、その中の誰が作ったのか。


「結果は?」

「何にも出ず。崖の下に飛び降りてみる実験もしたけど、全員が修練室に戻されたみたいだよ。」

「誰かの差し金だった、ってことだ。」

「J-19とJ-20、あの熱血教師かリルゲア先生のどこかに犯人が居たってことか。」

「ううん。J-19の担任とリルゲア先生は査問会があって、両者に責任がないことが証明されたんだ。そういう仕掛けをする時間が無かったし、何しろ〈箱〉の設定をしたのは学院長で1年全体で共有されるものだったから。」


 つまり犯人は学院長か、もしくはただの偶然か。どこかきな臭い気もするけど、学院長が犯人かどうか審議する実力も権力もない。今は置いておこう。


「これからはどうするの?」

「2人が戻ったことは学院全体で共有されてるから、もう知られてるよ。取り敢えずロムスとシーナが全快するのを待って、それから話を聞くみたい。判断はそれからだね。」

「僕は回復に専念すれば良いってことだね。」

「そういう事。J-20のみんな、ロムスとシーナが回復するのを待ってるからね。それから昇格戦で勝ち上がろう。」

「うん、当然だよ……!!」


 僕はこちらの世界で更に力をつけて、墓場の世界の争いに終止符を打ちに行くと密かに決心するのだった。

次回更新 - 6月1日(月)12:00


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7月1日より新作連載します。

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