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3 - 25.『Unity』

3-25.『団結』



通信遅延の影響で遅れました。

申し訳ございません。

 強い砂埃が吹き荒れる。視界が晴れるまでしばらく時間が掛かったが、その間厄災(カラミティ)が動く音はしなかった。あの神の使役獣を倒すには威力が足りないと思っているが、どれほど効果があったのか。


「視界が晴れたぞ!」


 別の所に待っていた冒険者が声を上げる。どうやらそろそろ視界が晴れそうだ。同じような声が段々と増えてきた。僕は厄災(カラミティ)の注意を引くため、皆とは違う場所に居た。


 砂埃が晴れたのは僕を最後だった。【魔法障壁】を解除する。急に来た疲れで体がふらつくが、どうにか耐えた。まだこれから目の前の巨大な魔方陣の発動をしなければならない。


「おおおお!」


 冒険者達に歓声が広がる。厄災(カラミティ)を見ると、右半身が消失していた。左半身には何かで覆ってあり、効果がなかったようだ。恐らく途中で慌てて防御する力を発動したのだろう。


「サグルさん、ありがとうございます!」

「僕は知識だけだけど、役に立って良かったよ!」

「全員の【魔法障壁】を解除します! 戦闘準備を再び整えて下さい!」


 まず全ての発動中の魔法を解除する。数分経つのを待って、解除した。その間も厄災(カラミティ)は動かなかった。動けないのだろうか。一度息を整える。


「陽動部隊、前に行くわよ!」

「待ってください! 次の作戦があります!」

「次の作戦!?」

厄災(カラミティ)を地上に転移させて罠に掛けます! 皆さんはその後で僕と羊主(エンペラー)の手を借りて、別に転移させます!」


 この状態で地上の罠に掛ければ、更に傷を負わせることができる。サグルのカガクが通用して分かったが、魔法でなければ効果がある。つまり物理的に罠も効果があるのではないか。


 これが表向きの理由だ。本心では地上で待っているという剣客を巻き込むつもりだ。わざとにけしかけて、厄災(カラミティ)と剣客を戦わせる。


「ですが! 魔力が足りません! 魔力に余裕がある人、こちらに来て頂けませんか!」

「何をするの?」

「魔力を分けてもらいます!」

「魔力を分ける!?」

厄災(カラミティ)が動き始める前に、早く!!」


 訝しげだが、魔力に余裕があるらしい冒険者達が集まってきてくれた。僕はその冒険者達に手を繋ぐように指示をする。更に訝しげな視線が刺さるが、そんな時間はない。かなり魔力枯渇が近くなっている。


「早く!!」


 集まった全員が手を繋いだ。シーナやサグル、羊主も集まってくれた。僕は、できた円の中央に立つ。


「【第一制限解除ファースト・アンロック】! 【吸収(アブゾーブ)】!!」


 全員の足元から僕に向かって光の線が伸びる。これが魔力だ。あまりに多い魔力を吸収すると、これからの戦闘に影響が出る可能性がある。最低限、魔方陣の発動に必要な量を吸収させてもらう。


「足りそう?」


 シーナの問い掛けに僕は首を振る。冒険者達を見ると、ふらついている人が現れ出していた。これ以上魔力を吸収するのは無理だろう。


「魔力が少なくなってきた人は一度離れて! 残ってる人はもう少し協力して!」


 サグルが声を出す。治癒師が魔力が少なくなってきた人に寄り添い、部屋の端の方へ行く。残っているのはやはり先頭にまだ参加していない前衛部隊がほとんどだった。もう少し魔力を吸収する。


「倒れる前に離れろよ! 1人が倒れたら全員に迷惑をかける! 離れたって文句は言わねえから!」


 冒険者の1人が声を上げる。その熱が他の冒険者にも届いたのか、先程まで集まらなかった冒険者が集まった。そして魔力が少なくなった冒険者が離れる。


「ありがとうございます……!」

「あれだけのものを見せてくれたんだ。俺達も良いところ見せないとな!」


 冒険者達が笑う。本当に有難い。もう少しで必要な魔力量に届く。僕は魔力を吸収する量を緩やかにしていった。よし、集まった。


「とても助かりました! これで魔方陣を発動できます!」

「それじゃあ私達は魔方陣から離れましょう!」


 最初の転移は厄災(カラミティ)だけだ。冒険者達は素早く魔方陣の外に出る。僕は全員が出たことを確認すると、魔方陣に手を置いた。


「【多重詠唱(マルチチェイン)】【茨の森】!!」


 羊主の声に僕は驚いて上を見る。どうやら厄災(カラミティ)が動き始めていたようだ。


「ありがとうございます! では、いきます!」


 再度、魔方陣に手を置き魔力を流し込む。魔力を流し込むのに時間は掛からないが、気が遠くなるような作業だ。一瞬の時間が永遠のようにも感じる。これだけ大量の魔力を流すと、意識が朦朧とするのだ。


「終わった……厄災(カラミティ)、転移しろ!!」


 巨大な神の使役獣体が全て光に包まれる。刹那、その姿は消えた。魔方陣も共に消える。再び魔力が枯れかけている体が休もうと、意識を失いかけている。どうか耐えてくれ……。


 僕がフラフラとしていると、誰かに腕を掴まれる。サグルだ。


「サグ……ル」

「さん付け忘れてるよ。ロムスは敬語を付けない方が自然な気がするよ。それより今から地上で戦うんでしょ。」

「そうだけど……」

「じゃあ僕の魔力を吸収してくれ。」

「でも……もうサグルも……」

「ロムスが僕達の最後の望みなんだ。それぐらい分からないか?」

「私も良いよ。私達に出来るのはこれぐらいだから。」

「そんな事……」

「お世辞は聞きたくない。出来ることをさせて。」

「……【吸収(アブゾーブ)】。」


 僕は魔力を少しだけ吸収する。自分が動ける程度にだ。流石に2人が倒れるまで吸収するのは忍びなかった。


「ありがとう……これで大丈夫。」

「あんまり吸収してないでしょ?」

「そうだけど、これで大丈夫だよ。」

「終わったかしら。」

羊主(エンペラー)……はい、終わりました。」

「じゃあ私達も転移しましょう。」

「そうですね。皆さん、集まって下さい。」


 冒険者達が集まった。僕の代わりに羊主が素早く魔方陣を整える。あまり大きくないサイズの魔方陣を数個用意した。これで全員が転移できる。


「最終決戦です。絶対に勝ちましょう!」







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