3 - 24.『Science』
3-24.『科学』
※過去話の謝った改行を修正しました。前話の段落先頭の字下げを行いました。誤字報告は随時承っているので気付かれた方はお願いします!
サグルの言っていたあの攻撃は前回使った時もかなり威力が大きかった。【魔法障壁】で防ぎきれるか分からないが、とりあえず準備を進めよう。
僕はゲオグ・ジェネラルとの戦いを思い出す。ちょうど竜巻が来ていたので、大きくサイドステップ。攻撃をかわした。
「【水塊】」
まず大きな水の塊を用意する。これに大きな雷を落とせば良いんだったね。3年間の特訓で魔法の同時発動数も向上している。ゲオグ・ジェネラルとの戦いでは血を吐くような思いをした同時発動も今回はかなり楽になっている。
「【雷撃】」
雷が竜巻に巻き込まれる。魔法は神の使役獣の力には勝てない。タイミングが悪かった。もう一度【雷撃】を使う。今度は上手くいった。
今だけでも【魔法障壁】に【水塊】、【雷撃】の同時発動を行った。確か前回は2回【雷撃】が必要だった。水が無くなるまで【雷撃】を放たないといけない。
「【雷撃】! 邪魔をするな……!」
天井の辺りから降る雷が竜巻に巻き込まれる。恐らく厄災が邪魔をしているのだろう。今陽動する者は居ない。竜巻もあって【魔法障壁】から出るのも危険だ。
「回数を重ねるしかないか……【雷撃】」
魔力を残す事は今、一度置いている。魔方陣に流す魔力は最悪足りなければ他の人から貰う。
「よし成功した。完全に空気になった。」
「ロムス!それだと少ない!部屋全部を水にできる!?」
「……やってみます!」
できるかどうかは分からない。この部屋全体を水で埋めるには【水塊】でも個数がいる。
「【多重詠唱】! 【水塊】!」
僕が3年間の訓練で使えるようになった【多重詠唱】による同時魔法発動数は6個が限界である。僕は6つの最大規模の【水塊】を用意した。これでも部屋を満たすには足りない。
「これも見せたくはなかったけど……【多重詠唱】!【水塊】!」
「2回の能力で12個の同時魔法発動……!?」
冒険者達が息を飲むのが見えた。これが僕の切り札の1つ。取っておきたい気持ちはあったが、これ以上の事態はすぐには起こらないだろう。しかもこれを使っても剣客には遠く及ばない。
最低限僕の呼吸ができる空間を残しながら、部屋全体を水で埋めた。ここで僕は【水塊】を一部解除する。
今は【水塊】を12個浮いている状態である。これを一部解除するというのは、【水塊】に必要な魔法構成である【水の塊を出現させる】【球形に形を維持する】という2つの内、【球形に形を維持する】という魔法構成を解除した。
これにより、僕は【水の塊を出現させる】のみを維持している状態になり、負担が半減するのだ。これで計算上は6個の魔法しか発動していないことになる。球形に形を維持しなくなったことで水が重力で地面に落ちる。
「うっ……【魔法障壁】」
水が落ちれば、僕が溺れてしまう。慌てて【魔法障壁】を発動する。これで同時魔法発動数が7個になる。しかし、【多重詠唱】は初期段階で3つの魔法の同時発動が可能となっているため、体感では3つの魔法しか発動していないことになっている。
3年間の訓練で同時魔法発動についてはかなり力を入れていた。実際、【水塊】の魔法構成を一部解除せずとも、余裕はあった。僕が一部解除をしたのは、魔力の減少を抑えるのが主な理由であった。
「あまり時間は掛けていられない! 【多重詠唱】!【雷撃】!」
3つ目の【多重詠唱】。そろそろ脳の演算能力に負荷が掛かり始めて頭痛が発生する。しかし、これぐらいはまだ許容範囲だ。【雷撃】2回で水塊1個分だ。あまりにも効率は悪かった。
「魔力がさすがに足りないぞ……」
「【多重詠唱】!【雷撃】!」
声が響く。僕の以外に〈龍の紋章〉を持つ者は1人しか居ない。羊主だ。
「他の冒険者も雷系統の魔法を水の中に打ち込め!」
やはり羊主は僕には無いカリスマ性を持っていた。何でも1人でしようと考えていたのが悪かったのだ。ここに集まるのは自信があって集った冒険者達。魔法なんて使えて当然なのだ。
冒険者達の魔法が部屋を埋める水に打ち込まれる。僕も【多重詠唱】で【雷撃】を放ち、積極的に水塊をデンキブンカイした。
「厄災はさすがにこの中では動けないか……」
息ができない様子はないが、行動の抑制には繋がっているらしい。一石二鳥だ。僕は1つの【水塊】の解除していた【球形の形を維持する】という魔法構成を発動し直す。厄災の近くだけ【水塊】を残すようにしている。
水がデンキブンカイされて、空気になると風が吹き荒れるのがわかる。以前サグルはタイセキが増えるからと言っていたが、僕にはその意味がわからなかった。
サグルは『ある決まった形の箱に入る水の量』のようなものと説明してくれたが、空気に形があるなんて事が僕には信じられなかった。
残された【水塊】も冒険者の質より量でデンキブンカイしていく。最後は厄災を囲う【水塊】に僕が【雷撃】を与える。
「終わった! 発動します! 【炎戒】!」
デンキブンカイされた空気に火を当てられると、着火され大爆発を起こす。【魔法障壁】で防がなければ、体がばらばらになるほどの威力をもつ。あらかじめ張っておいた【消失】付きの【魔法障壁】の効果が大きかった。
僕は静かに砂煙が消え、全てが見えるようになるのを待った。
カクヨムにて当作品の修正・大幅加筆を行った
新たな『魔道士無双』を開始しました!
大まかなストーリーに変更はありません。
また、小説家になろうの連載がメインですので
カクヨムは使われない方は無視して頂いて構いません。
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