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3 - 21.『Decisive Battle』

3-21.『決戦』

 僕と羊主は先に最奥部に入る。厄災(カラミティ)との戦闘がすぐに始まれば、多大な被害が(もたら)されることになる。それを防ぐ為には後方の注意が疎かにはなるが、前方の注意を優先することにした。


「……居ない?」

「いや、居るわよ。前の石像。あれ、厄災(カラミティ)だわ。」


 そう言われて一番奥にある石像を見ると、なるほど確かに厄災(カラミティ)である。だが、何故石像なのだろうか。


「よく分からないけど、動かないのならみんなを入れるわよ。」

「そうですね。皆さん、急いで入ってください!」


 厄災(カラミティ)が動き出さないか注意しつつ、討伐部隊の皆が入るのを待つ。【快速の陣】の札を皆に渡してるため、そこまで時間は掛からず中に入る事が出来た。


「門番が復活している!!」


 最後の方に入ってきた冒険者が叫ぶ。


「僕が行きますね。」

「頼むわ。」


 冒険者に話を聞いて、門番の所へ向かう。確かに醜い何かがボコボコと膨らんできている。門番で正解だろう。僕は慌てず再生を停止させる。


「【停止(ストップ)】。」


 一応効果が現れるか待ってみたが、どうやら効果はあったようだ。再生が短い間ではあるが、停止している。この隙に最奥部の扉を閉めよう。


「聞いて下さい! ここは厄災(カラミティ)が居て危険ですが、外に出ると門番が居ます! 外に出てしまうと、助けるにも助ける事が出来なくなるので、何かあった場合はこの部屋の端で治癒師から治癒してもらってください!」


 厄災(カラミティ)との戦闘で傷を負い、後退しようと扉を出た冒険者が門番と出くわす可能性がある。前もってそれを忠告しておく。


 討伐部隊の面々を見ると、やはり誰しもが緊張してるようである。大広場に集まっていた時の気楽さは無くなっている。もしかすると調査部隊として迷宮に潜った冒険者から話を聞いたのかもしれない。どれほどここが過酷な場所なのか、と。


「扉を閉めます。」


 門番が中に居る討伐部隊に干渉しないように扉を閉めておく。扉を閉めておけば、恐らく門番が自ら扉を開いて入ってくる事はないだろう。


 重い扉は人力では閉められないため、魔法で強制的に動かす。激しい音を鳴らせながら扉は徐々に閉まっていった。


「門番の再生が再開してる。もう一度止めておこう。【停止(ストップ)】。」


 気付かない間に足と腕のような部位が再生していた。頭は再生していないが、放置しておくと攻撃されていたかもしれない。危ういところだった。


 扉が完全に締まりきったのを確認すると、僕は羊主の元へ戻った。


「扉は閉めました。後はいつ動き出すかですね。」


 現状、広大なこの部屋の奥に鎮座している厄災(カラミティ)が動き出す気配はない。どうしたら動き出すのか、剣客に尋ねようかとも思ったが、恐らくそれは契約には入っていないからと教えてくれないだろう。


「……! 動き始めたぞ! 戦闘準備!」


 探索部隊が迷宮から戻ってきて情報を共有すると、厄災(カラミティ)戦の作戦を立てた。


 これまでは攻撃担当をかなり用意していたが、能力(スキル)以外の攻撃手段が存在しない為、攻撃担当を全て陽動担当に移動させ、僕と羊主が正確に攻撃するための囮となってもらった。


 しかし、陽動担当も神の使役獣による攻撃を防ぐ事は出来ない為、効果はないが魔法攻撃で気を引かせ、厄災(カラミティ)が攻撃をする前に僕と羊主が攻撃をして、被害を抑える。


 石像は玉座のようなものから立ち上がると、石が轟音を立てて剥がれ落ちていく。その下からは見覚えのある怪物が現れた。この距離で見ると、かなり大きい事が分かる。何十人分の高さはあるだろう。


「РТЬЦЗЭООО!!」


 理解できない文字列を発する。同時にこの部屋を取り巻く空気が変化した。恐らく魔力がかなり薄くなっている。


「魔法の乱用による魔力枯渇には気を付けてください! 魔力が非常に薄くなっています! 戦闘開始!!」


 剣客から預かった火の迷宮主の剣を手に僕は厄災(カラミティ)へと突撃した。完全に石化が解け、まだ動き出していない。この間ならダメージを積める。


「【一閃】!」


 小手調べと言うのもおかしいがどれほど効果があるのか、確かめるために基礎的な〈魔剣術〉の魔法を発動する。切り裂こうと剣が厄災(カラミティ)に刺さるが、それ以上動かない。


「硬い……!」


 攻撃をされる前にもう一度同じ場所に攻撃を重ねてみる。蓄積ダメージを狙う。


「【一閃】! 変化ないな……」


 僕が飛び退くと、代わりに羊主が前に出る。


「【多重詠唱(マルチチェイン)】!! 【雷撃】!」


 同時に3つの雷が降る。近付くだけでも側撃雷で焼け死ぬ威力だ。かなり離れていたのが幸いした。上位魔法だが、厄災(カラミティ)は頭から少し煙が上がっているのみだ。上位魔法の【多重詠唱(マルチチェイン)】でこの威力なのか……!?


「かなり強い技を用意したと思ったのだけど。」

「想定以上に強いですね。」


 まだ厄災(カラミティ)が攻撃する気配はない。これは攻撃に気付いていないのか、或いはただ単に無視をしているか。予想はつかないが、厄災(カラミティ)にとっては一連の攻撃もあまり効果かわ無いということは分かる。


 攻撃が通用せず、全く動かない厄災(カラミティ)に早くも立てた作戦が崩れそうであるが、こちらに有利になるのだろうか。


「陽動部隊! 数分間、羊主(エンペラー)と共に時間を稼いでください!」


 陽動部隊が動き出したのを確認すると、僕はその冒険者達とは違う方向へ走り出す。

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