3 - 12.『Archeological city - II』
3-12.『遺跡都市 2』
今日は二話投稿となります!!
日曜日に更新できなかった分ですね。
前話を見てない方は一話戻ってご覧下さい!
『そう言えばここからどうやって最奥部に?』
現在、初代羊主とビオウィルは宙に浮いている。腹の辺りに気持ちの悪い浮遊感がある。初代羊主は穴の周囲に無数に存在する扉を指さした。
『これらは迷宮に続く扉だ。この下に行くには風に負けない速度で降りる必要があるが、そこに無駄な力を割かれたくない。迷宮の階段を使って、最奥部まで降りるんだ。』
そして、初代羊主が歩き出したのは、他と何も変わりがない1つの扉の方だった。どうやらここからは頼りになるものはないようだ。ただひたすらに迷宮を攻略して、下へ続く階段を見つけるだけ。大変な作業だが、初代羊主はこれを日が暮れてから、日が明けるまでの何時間かの間にこなしている。
『迷宮は簡単だ。独特の風の流れが存在する。これは神の使役獣が発する異なる力に魔力が反発された時に起こる風だ。その風の流れを読めば、1箇所……つまり、神の使役獣の元へ辿り着くことができる。』
そう言って迷いなく初代羊主は進んで行った。それはその通りであった。止まることなく歩き続けた初代羊主は、いとも容易く下へ続く階段を見つけ出した。
『今が地下90階。最奥部が地下100階だ。』
これが後どれほど続くのだろうと考えていた矢先、初代羊主は心の中を読むように答えた。階だけで聞けば大したことがないが、風の流れを読んで進んでいるのにも関わらず、1階1階がかなり広いのだ。時間はかなり掛かるだろう。
『次が地下95階だ。ここからは門番が生み出した小さな怪物共があちこち徘徊している。そいつらも風の流れを読んで行動しているから、絶対に避けて通ることは出来ない。出会ったら強行突破するから、走る準備はしておけよ。』
初代羊主がそう言ってから、小さな怪物に遭遇するまでそう時間は掛からなかった。まさしく怪物。異形の塊のような小さな生き物の成れ果ては、ビオウィル達を見つけると『キキッ!』と耳に障る奇声を上げて、攻撃してきた。
『走るぞ!』
初代羊主は攻撃を受け流すと、一切の魔法を使うことなく、その場を切り抜けた。怪物はかなりの距離を追いかけてきたが、ある程度離れると追い掛けるのを辞めるようであった。
『あれが怪物……。』
『まさか神の使役獣が創り出した存在とは思えないだろう? 門番も同じく異形だ。そして中で待ち構える本当の神の使役獣もきっと異形だろう。神も趣味が悪いものだ。』
それから何十回と同じ方法で小さな怪物から逃げた。そこまでして魔力を消費したくない、という初代羊主の言葉にビオウェルは納得できなかった。
『どうして倒さないんですか?』
しばらくして小さな怪物を更に何体か倒した時、ビオウィルは初代羊主に尋ねた。初代羊主はしばらく考えた後、『実際に見せよう』と言うと、次に出会った小さな怪物を一撃で仕留めた。
『ほらやっぱり倒した方が早いじゃないですか。』
『よく見ておけ。神の使役獣が生み出した怪物も神の使役獣なんだ。つまり無限の再生能力を持つ。』
最初は見えなかったが、虚空から急速に大きくなっている小さな怪物が見えた。木っ端微塵にしたが、その肉眼で見ることもできない破片から再生したのである。これが羊主が戦闘を避けた理由。
『倒せないのなら、逃げてしまえばあいつらは持ち場から離れることはしない。逃げる方が圧倒的に楽なのだ。』
完全に小さな怪物が再生しきる前に、初代羊主とビオウィルはその場を離れた。すぐに後を追い掛ける再生途中の小さな怪物が見えた。気色が悪いとしか思えなかった。
『ここが99階。……あったぞ、あれが100階に続く階段だ。階段を降りたら、すぐに門番が待ち構えている。100階に降りただけで攻撃対象だ。お前は階段の途中で待っていろ。』
『分かりました。』
正直、羊主でも倒せない存在に攻撃対象にされれば、ビオウィルは1秒とて持たないであろう。そこまで行き急ごうとはしていない。ビオウィルは大人しく頷いておいた。
『それでは戦闘開始だ。』
初代羊主が地下100階に降りると、前方に大きな扉があるのが見える。あれが〈魔の祭殿〉に入るための大扉。そして、扉を守る門番。門番は、迷宮にいた小さな怪物をそのまま大きくした異形であった。
『神の使役獣には幾つかの型が存在する。こいつは攻撃型だ。攻撃を浴びれば、一溜りもなく潰れてしまう。他にも幾つか型があるが、それと相見える機会があれば教えてやろう。』
初代羊主は一切の飾り気のない剣を構えた。初代羊主が剣を持つという話は聞いた事が無いが、どうやら得物としているようだ。
『はぁぁっ!』
気合いを貯めるようにして、門番との距離を詰めると、剣を叩きつけた。門番が叩き切られる事は無かったが、門番と剣が接した部分から幾つもの魔法が発動された。〈魔剣術〉である。
門番はその剣からの攻撃を浴び続けるが、攻撃を浴びている肉体が何かなっているようには見えない。
『攻撃されたそばから一瞬で再生している。』
初代羊主は剣を振る速度を上げた。それに伴い怪物の再生速度を越していった。
『すごい……』
そうして完全に神の使役獣の速度を超えた時。初代羊主は門番を征した。
『私の勝利だ。こいつが再生する前に〈魔の祭殿〉に入る。急げ。』
門番を倒した。だがすぐに再生する。それが神の使役獣。無限の再生能力は文字通り無限なのだ。
「……ここまでが話の顛末ですね。」
僕は話を終える。羊主は驚いたように、僕に尋ねる。
「この先の話はないの?」
「僕が知っているのはここまでです。神の使役獣を倒したのか、倒してないのかは分かりません。ですが、初代羊主は生きていて、ここに〈ビーストタウン〉を築きました。」
「この長い話で貴方が伝えたい事は何だったの?」
羊主は急かすように僕に尋ねる。
「簡単な話ですよ。厄災はこの〈ビーストタウン〉の地下に存在する〈風の迷宮〉の最奥部に居る神の使役獣です。」
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