3 - 11.『Archeological city - I』
3-11.『遺跡都市 1』
昨日は色々と立て込んで投稿できませんでした!
最近、何回かそういう事が続いているので
書き溜めも増やしていきたいですねψ(。。)
神秘的なこの街の名前は〈ビーストタウン〉。かつて初代羊主が建造した、巨大な迷宮の上に被さるような構造の都市。当時は、人狼による自治が認められていた、数少ない都市の1つであった。
その仕組みからビーストタウンには世界各地から人狼が集まり、人狼が治めているにも関わらず、有数な巨大都市ともなっていた。と言っても、人狼だけが居る訳ではなく、今の羊主が〈冒険者〉という仕組みを整える前の所謂、旅人や傭兵と呼ばれていた人々も多く集っていた。
街には商店や宿屋が数多く存在し、そのどれも1つ残らず賑わっていた。迷宮の上に都市を作った事は成功だったという事だ。
では何故、初代羊主は迷宮の上に都市を築いたのか。それは羊主がこの世界に訪れる時にまで遡る。〈墓場の世界〉に迷い込んだ初代羊主は、その時点で当時迷い込んでいた迷い人の中でも、頭一つ飛び出る非凡な才能を持っていた。言ってしまえば単純に強かった、という事だ。
だが、それだけでは散在する迷い人を纏めるには至らない。強いだけでは、徒党を組まれて挑まれた時、罠を仕掛けられた時……そんな時に勝つことが出来ない可能性があるのだ。万が一でも負けてはいけない。安定していない世界で負ければ、それは死を意味する。
初代羊主は圧倒的であった。挑まれる者全てに圧勝し、更には負けた者全員が慕うようになる。人狼達はその姿を見て、理から外れた者……〈理外者〉と呼んだ。そして、初代羊主と戦うのを避け続けた。
『理外者? 私はそんな名前は好まない。覇者だ。覇道を進む者。』
人狼の初代羊主の呼び方を知った部下……いや信者と言った方が正しいだろうか、それ程までに初代羊主に忠誠を誓った者達の1人が、初代羊主に伝えると、そう答えたのである。
確かに初代羊主は王道を進んでは居ない。道理を説き、人々を救う存在ではない。相手を負かし、従える。まさに覇者に適した存在と言えるだろう。
初代羊主は数十年掛けて、世界の全てを歩き尽くし、そして世界に散らばっていた迷い人全てに勝利した。やがて定住しようと考えた初代羊主は、世界の中心に都市を築く。それが今の中央都市である。
「と、ここまでが初代羊主に関する有名な話です。知ってる人は多いでしょう。」
僕はここで一息つく。恐らく厄災が居るのはこの都市の地下迷宮の最奥部だと言った理由を話すため、僕はこの迷宮と関係の深い初代羊主の話を混じえながら、迷宮について説明する事にした。
「そして、初代羊主とこの都市との関係は何なの?」
「では、早速その話をしましょう。」
初代羊主は〈墓場の世界〉に訪れてから、30年が経過していた。初代羊主に仕えていた迷い人達もかなり年老いてきた。しかし、初代羊主だけは一切見た目が変わっていなかった。
『羊主。どうして見た目が変わらないのでしょう。』
『……呪いのようなもの。私は不滅。永遠に滅びることはないだろう。』
漠然としない回答であったが、それは深く追及して欲しくないのだろうと受け取った迷い人達がそれについて質問する事はこれ以降なかった。
初代羊主が羊主として君臨し、様々な制度を整えていたある年のある日の夜。初代羊主はまるで酔ったかのように、まるで夢遊病かのように、中央都市の中央に聳え立つ〈セントロトーレ〉から抜け出していた。
気になった迷い人の1人がその後をつけていた。完全なる独断だが、初代羊主に見つかることは無かった。そうして辿り着いたのがこの都市〈ビーストタウン〉。
深淵まで続くとされる底知れぬ大穴が空いたその迷宮に、初代羊主は躊躇うこと無く入って行った。堪らずつけていった迷い人は、声を掛けてしまう。
『羊主!
『……誰だ?』
『セントロトーレ所属の迷い人の1人です!羊主がふらつきながらここまで来ていたので心配で……』
『大丈夫だ。それに心配される覚えはないが。お前も聞いた事があるだろ? 私は不滅だと。』
『そうですが……傷つかない訳ではありません。』
その迷い人の男は晒される脅威に心中では怯えながらも、それを決して態度に出す事はしなかった。
『……お前、面白いな。』
初代羊主はその男に興味を持った。そして、男に名前を聞いた。
『お、俺はビオウィルです!』
『ビオウィル……覚えておこう。それで? お前は今からも私について来るのか?』
『俺は羊主に仕える身です。何処までも付いていきましょう!』
初代羊主はビオウィルが内心怯えている事に気付いていた。だが、それでも強気な態度を変えない所に惹かれたのだ。初代羊主は目の前の大穴に突然飛び降りた。ビオウィルはこれは試されているのだと気付いた。
『……付いていくと言った以上、俺は何処までも付いて行くだけだ。』
目を閉じて、大穴へ飛び込む。そこまで勢いは無かった。どうやら下から風が吹いているようである。その風は段々と強くなり、やがて完全に下に降りる勢いが相殺される。
『浮いている!』
『ここは〈風の迷宮〉。〈墓場の世界〉にはこのような迷宮が幾つかあると言う。その1つがここだ。私は何度もここを訪れているんだ。まさかお前に気付かれるとは思わなかったが。』
これは褒められているのだろうか。男は褒められているような、貶されているような不思議な気持ちを覚えたが、それを口に出す事はしなかった。口に出して良い事は起こらないだろうから。
『ここで何を?』
『質問の多い奴だな。まあ、私も質問される事を嫌だとは思わないから、別に構わないが。この最奥部には怪物が眠っていてな。そいつは神の使役獣だと言われている。それを倒すのが目的だ。』
『倒したのですか?』
『倒したらここには来ないだろう。そして、まずまず私は怪物とも会えていない。』
『怪物と会えていない?』
『最奥部の〈魔の祭殿〉には門番が存在する。門番は神の使役獣のなり損ないと言われているが、それでも私がまだ勝てないほどに強い。』
『羊主が勝てないほどに?』
『神の使役獣には共通点が存在するのだ。まず魔法とは異なる力を使う。次に無限の再生能力を持つ。3つ目に戦う度に急速成長し続ける。そして最後に敗者の魂を喰らう。』
ビオウィルは寒気を覚えた。神の使役獣ならば魔法と違う力を使えて当然だろう。だが、無限の再生能力や急速成長、敗者の魂の吸収は、もはや生物とは一線を画す力である。持って良い力ではない。
言ってしまえば初代羊主の不滅の力も生物が持つ事を許されない力だろうが、神の使役獣はそれに等しい力を3つ所持している。
『羊主は魂を吸われているのですか?』
『いや……それは対策法を考えているから、喰われないようにはなっている。それでも一手手順を違えば、すぐに魂を喰われる。不滅も魂を喰われれば、ただの抜け殻だ。』
不滅の羊主すら超越する存在にビオウィルは神の不条理さをひしひしと感じるのであった。
今日はもう1話投稿します!お楽しみに!
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