3 - 10.『Corps A』
3-10.『A部隊の準備』
※羊主目線のお話です。
報告が遅れましたが、第二章と第三章の章名を改めました。
第二章『狼と子羊編』、第三章『厄災編』です。
今までの章名は曖昧すぎたので変えました。
話の内容などに変更はありません。
御理解頂けると幸いです。
もしかしたら本日の午後0時にも更新するかもしれません。
「A部隊、私羊主が率いる部隊は、厄災戦では攻撃、防御、陽動と基本的に全ての役割を担うわ。それぞれの得意分野を担当してもらって構わないけど、攻撃担当は少な目でお願い。攻撃はB部隊も共同で行う関係で、数はあまり増やせないの。」
私はあの子にこの戦いで賭けている。あの子なしでは勝てないとも思ってる。多分、今この〈墓場の世界〉で最も強いと言っても過言じゃない。
分かる限りでも詠唱式魔法、紋章式魔法、付与術を使えて、〈龍の紋章〉も〈第二制限解除〉まで到達してる。高度な〈改変〉や魔法連撃、多数の同時魔法行使。それ以外にも隠している手はあるわ。あんな10歳、どこの世界にも居ないでしょうね。
「戦いが始まるまでに私達がする事は古城の調査、不審な男の発見、捕獲よ。どれも難易度が高い事だけど、貴方達冒険者なら出来ると信じているわ。」
事前に振り分けていた通りに冒険者が分かれ動き始める。私は動き始めた冒険者達とは違う方向に歩き始める。私は厄災との戦いが泥沼化して、遠くの街や自然が破壊されるのは私としても嬉しいことじゃないわ。
東西南北の4箇所にそれぞれ1つずつ【防壁の陣】を重ねがけする。【人避けの陣】と【不可視の陣】も改変で加える。意外と私も改変が得意だって、あの子に言ってやれば良かったわ。でもあの能力は反則ね。
【逆行】って時間を巻き戻す能力よね……? 考えれば考えるほど〈龍の紋章〉は反則級の能力を持ってるわ。王家の能力もかなりのものだけど、〈龍の紋章〉に勝てるかしら。
足元に【転移の陣】の札を投げて、転移する。最初は北ね。大体の位置は決めておいて良かったわ。時間が掛からなくて済みそう。
北、東、南、西と順番に必要な魔方陣を描き終えて、街に戻ってくる。そう言えば……この街は私、昔来た事あるわね。まだこの世界に来た頃かしら。初代羊主が初期につくった街だったかしら。
街の至る所に遺跡のような廃墟が佇んでいる。全容を見ると、神秘的な街ね。探せば何かありそう……。
「この世界は不思議な事ばっかりね。」
「終わりましたか?」
振り返ると、あの子がいた。私の近いようで遠い親戚。でもやっぱり私に近いものを感じる子。
「終わったわよ。」
多分この子が気取った感じをしてるのは、周囲の環境に馴染めていないからでしょうね。自分を守らないといけないと思って、壁を作ってる。本当に……私そっくりだわ。
「そうですか……。 B部隊も罠を仕掛け終わりました。」
「罠……? あの厄災相手に?」
「罠と言っても落とし穴みたいな可愛いものじゃないですよ? 確かに最初に遭遇した時に、落とし穴で逃げましたけど。」
「……会ったの?」
驚いたわ。まさか会ってたなんて。これなら最初に話を聞いておけば良かったわ。無理に自分だけで考え込んで失敗した訳ね。
「会いましたよ。……と言っても、向こうから攻撃されたので、どうにか逃げただけですけど。2回目は逃げる事も出来ずに遠くに飛ばされましたけど。」
「攻撃を受け流せただけでも凄いわよ?」
「今回はどちらかが滅びるまで終わらない戦いです。これじゃあ意味が無いんですよ……。」
この子は何かを隠してる。力としてもそうだけど、何か言えない事情もあるわね。私ってこんなに信用ならないかしら。出会いは確かに最悪だけど……いえ、全部良い事無かったわね。
「まあ、いいわ。貴方は貴方、私には私の事情があるでしょう。それぞれがそれぞれの為に厄災を倒すだけよ。」
「そうですね。頑張りましょう。」
「ええ。」
門の方を見ると、続々と冒険者達が帰ってきていた。あれは古城の調査組ね。
「御苦労様。疲れてるところ悪いけど、結果を教えてくれる?」
「いえ、大丈夫です。単刀直入に言いますが、厄災は古城の中に居ませんでした。」
「居なかったの!?」
「それは……本当ですか?」
あの子が話に入る。どうやらこの子もそれは予想外だったようね。この子の驚く顔、ちょっと可愛いわね。こんなおばあちゃんが言っても、孫を愛でるようにしか聞こえないけど。
「困りましたね……居場所は検討がつくんですが……。」
「貴方は知ってるのね?」
「ええ。ここです。」
「ここ?」
「この街ですよ。初代羊主が作ったこの街の地下は、巨大な迷宮になっています。そして街全体が遺跡でもあるんです。恐らく厄災が居るのは、その最奥部。〈魔の祭殿〉です。」
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