2 - 37.『First Quest - V』
2-37.『はじめての依頼 5』
ゲオグ・ジェネラル戦は終了です!
ジェネラルは中ボスぐらいなので、第二章のラスボスはまだいます!
どうぞ、お楽しみに。
「……ここは?」
気付けば、何処かの部屋のベッドで僕は寝ていた。起き上がると、ここが治癒院の治癒室である事がわかる。ベッドはもう1つあった。そこではシーナが寝ていた。
「ああ……終わったのか」
僕は意識を失う前の事を思い出す。〈スイソ〉とサグルが呼ぶ気体が僕の【炎戒】によって、大爆発を起こした。その衝撃をまともに受けた、ゲオグ・ジェネラルやネオ・ゲオグは全滅した。同時に魔力枯渇を起こした僕は意識を失う寸前であった。
そこに郊外の森の入口にいた沢山の冒険者が到着した。どうやら僕が【兎足】で跳んだ先から予測したらしい。でも全てが終わった後だった。
普段は粗暴な冒険者達だが、森全体を揺らす程の衝撃やその原因と分かる巨大な穴。そして、疲れ果てて横たわっている僕達。状況を理解するのには充分すぎた。
すぐさま疲れで寝ているシーナと動けない僕は、力のある冒険者達がここまで連れて来てくれたみたいだ。
「あ、ロムス、起きたんだね」
丁度その時。サグルが治癒室へ入って来た。手には色とりどりの果実が入ったフルーツバスケットが握られている。
「何日ぐらい寝ていましたか?」
「一日だよ」
「じゃあ次の日って事ですか?」
「いや、ゲオグを倒した翌々日だね」
「……っ!じゃああの約束は明日か」
リーゼンとの約束は、3日後と言った。負けた時の条件は大したことはないが、1番面倒なのは勝負から逃げ出したとして、人狼局からの信頼を無くすことだ。これは冒険者としては最悪の事態である。
「サグルさんとシーナに話さないといけない事があります。シーナが起きたら話します」
「分かった。それとロムスは魔力枯渇だけだから、起きたら動いていいそうだよ」
「ありがとうございます」
サグルはフルーツバスケットを机に置くと、治癒師と話してくると言って、治癒室から出て行った。見た事のない果物が沢山ある。その中の黄色のものを取って、食べてみる。
「……酸っぱい!」
口の中が酸味でいっぱいになる。酸味を抑えるために他の果物を食べようと思ったが、どの果物は安全なのか分からない。一か八かをここでしようとは思わない。我慢しよう。
「ロムス?」
どうやら僕の声で起こしてしまったらしい。シーナが起き上がってきた。
「シーナ、おはよう」
「……おはよう?」
起きたばかりだ。時間がよくわからないのだろう。
「サグルさんが今、治癒師と話してる。暇だけど、サグルさんが持ってきた果物食べない?」
そう言って、僕はシーナにフルーツバスケットを渡す。シーナが選んだのは毒々しいほどに真っ赤な果物。
「これ何……?」
その見た目に少し食欲をなくすが、流石に見舞いの品におかしなものは無いだろう。ましてやサグルだ。しっかりと選んでいそうだし。
「はむっ……」
シーナは赤い果物を噛む。瑞々しそうな果物だ。果汁が溢れている。
「この果汁、甘い」
次は果実を食べる。
「果実も甘くて美味しい」
毒々しそうな見た目をして、意外と侮れない。というかサグルの持ってきた果物は、見た目が美味しそうな果物ほどクセの強いのだろうか。意地悪じゃないのかと思うほどに、僕の食べた果物には見事な酸味があったのだ。
「ロムス、お待たせ……あっ、シーナ、起きたんだね。よく眠れた?」 「うん……ありがとう」
サグルは椅子に座る。1つの果物を手に取る。流石に僕達よりも長い間、この〈墓場の世界〉に居るだけあって、果物を選ぶ素振りに迷いは無い。そして食べる。
「酸っぱい!」
「なんで!」
「果物はあんまり食べたことがないんだ……」
気まずそうにそう言うサグルを見ると、何も言えなかった。誰かがこの場の空気に耐えられなかったのか、咳払いをする。
「あ、ああ……そうだった、シーナにも話があるんだ」
「話?」
「サグルさんも聞いて下さい」
「うん、分かった」
「えっと、今日が翌々日だから、一昨日の事です。リーゼンと言う冒険者に喧嘩を売られたので買いました」
「何してるの……」
サグルが呆れ顔で言う。だけど、仕方ないじゃないか。ずっと後を付けられるの嫌だったし。僕が不服そうな顔をすると、サグルの顔は表情を失った。
「……まあ、僕の話なので取り敢えず聞いて下さい。それで3日後、つまり明日ですね、アウメリアへの護衛依頼でどちらが高評価を得られるかの勝負をする事になりました」
「ホントに何してるの……」
もうサグルはこの世に存在する言葉では表せない表情をしていた。人に見せられる顔ではない。
「サグルさん、顔おかしいですよ」
「誰のせいだと思ってるんだ!誰のせいだと!」
「誰でしょうね」
「とぼけんな!」
机をバンと叩く。シーナが一瞬驚くが、どうやら話を聞いてなかったらしい。状況を呑み込めてなさそうだ。キョトンとした顔をしている。
「アウメリアに行く目的は? まさか護衛の為だけじゃないだろう?」
「勿論です。僕はアウメリアにいる〈紋章式魔法〉の第一人者と考えられる人を知りました。その人に弟子入りするつもりです」
「次から次へと、ロムスは突拍子もない事を言うなあ……」
「そうでもないです」
「いや、そうでもあるんだよ」
「サグル、口を挟まないで」
「ご、ごめんなさい……」
僕にサグルにシーナで治癒室は一時的な混沌を引き出していた。治癒師が治癒室の扉を開け、入れないのは知っているが、この際無視だ。先に話をしてしまいたい。
「単刀直入に言います。僕が〈紋章式魔法〉を攻略するまでの間、シーナやサグルさんとは別行動をしても良いですか?」
「うん、ロムスはそう言うと思った」
「……知ってる」
サグルもシーナも話の流れから予想していたようだ。その後、治癒師の話を聞き、しばらく僕達は談笑を続けるのであった。
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