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2 - 34.『First Quest - II』

2-34.『はじめての依頼 2』


今話もシーナ視点となります!!

 さすがに共食いという光景に私は数歩たじろいでしまった。あの恐ろしい牙がいつ自分達に向けられるのか分からない。


「……シーナ、僕達の存在を誤魔化せるような魔法はある?」

「あるけど、私には使えない……」

「分かった。じゃあ、この状況で悪いが、策を伝える」


 サグルが汗を滲ませながら、目を逸らさずに私に言った。小さく頷く。サグルが見ているかはわからなかったけど、多分見てたみたいで、先を話してくれた。


「シーナは森の外に出て欲しい。そして状況の報告と救援を呼んできてくれ」

「サグルは?」

「僕は殿(しんがり)になる。できるだけ戦闘を避けるつもりだけど、このゲオグ達が森の外に出ないようにしないといけない」

「……1人で大丈夫?」


 ゲオグの数は生きているだけでも10や20では済まされないほどに沢山いる。もしかしたら100匹以上いるかもしれない。これを抑えるほどの策がサグルにはあるのかな……。


「逆にシーナがいたら、この状況を打開できる?」

「それは……」

「言い方が悪いのは分かってる。でもこのゲオグ達を中央都市に入れない為には、それが1番なんだ。分かってくれ」

「……分かった。」


 私は近くの木の影から姿を見せた小鳥に近付く。


「【伝言】。サグル、伝えたい事。」

「……郊外の森に100匹を超えるゲオグがいます。共食いをしているようです。救援をお願いします。」


 紫魔法の使役系統の魔法。小鳥は私とサグルの頭の上を数回飛び回ると、中央都市の方へ飛んで行った。幸いにもゲオグが気付いた様子はない。


「これで大丈夫」

「シーナは本当に大丈夫かい?」

「……」


 私は首を振った。無理な事なんて最初から知ってる。でもこの状況で逃げるほど私は無情な人間のつもりはないよ。


「【石壁(せきへき)】」


 私はゲオグ全てを囲うように、大きな石の壁を地面から少しずつ伸ばしていく。数匹のゲオグが気付いた。


「サグル、あのゲオグを」

「───分かった」


 サグルは姿を消した。いや、違う。目にも止まらぬ速さで駆けて行ったのだ。石壁を飛び越えようとするゲオグを剣で薙ぐ。ゲオグの足が切られ、その場で倒れた。


「ウギャギャギャ!!」


 不気味な声を上げて、共食いをしていたゲオグが、倒れたゲオグを食べ始める。その隙に私は更に石壁を伸ばして行った。


「はぁぁっ!」


 見事な剣さばきでサグルは、石壁に飛び付くゲオグを倒していく。もう3分の1ほどに減っている。これなら全部倒れるかも。


 そう思った矢先だった。ゲオグが放った魔法が石壁に当たり、一部が崩壊する。飛び散った破片が私の方に飛んでくる。すんでのところでサグルがはね飛ばしてくれた。


「ゲオグ……魔法?」

「あれは魔物の進化だ。共食いをした事で、能力が強化されて、魔法が使えるようになっているんだ。これは厄介だ……」


 これだとサグルは飛び込めない。最悪の事態だと、ゼロ距離で魔法を放たれてしまう。それじゃあサグルの命は危ない。


「【束縛】!」


 私はゲオグに魔法を放つ。当然、進化したゲオグは通常よりも魔法耐性は高くなってる。でも、私はゲオグの目に対して魔法を放った。


 ゲオグの目を塞ぐように、帯が何重にもゲオグに巻き付いた。周囲が突然見えなくなったからなのか、ゲオグが暴れ出す。


 魔法の効果が切れる前にサグルは動き始めた。


「少し危ないけど!」


 サグルは袈裟斬りをして、数匹のゲオグは四肢を削がれてしまう。だけど、最も強いように見えるゲオグは無傷だった。


「声が聞こえる……!」


 私が一瞬耳を澄ますと、どうやら郊外の森の入口に救援する冒険者(アドベラー)が集まっているみたい。あと少しの辛抱だね。


「グヴォォオオオ!!」


 轟くような声で叫ぶと、最も強そうなゲオグは持っている棍棒で石壁を叩き始めた。元々強度の高くない石壁はすぐに破壊されてしまう。


 石壁から飛び出した数匹のゲオグを、サグルの剣と私の魔法で倒す。


「やぁぁっ!」

「【石弾】!」


 これで残るは1体となった。ボス格のゲオグ。


「あいつはゲオグ・ジェネラルと言って、ゲオグが更に進化するとなるんだ。図体が大きいだけあって攻撃力が高い。あと、素早さも───!!」


 最後までサグルが言う前に、ゲオグ・ジェネラルは突撃してくる。丁度、私とサグルの間に棍棒が降ってきたから、両サイドに飛んで避けた。


「【爆破】!!」


 魔法を打つが、どうやら効いた様子はない。そして、ゲオグ・ジェネラルの叫びを聞き付けて来たのか、さっきまでいなかったゲオグが私達を囲うように何匹も何匹も現れてくる。


「救援は間に合うのか!?」


 サグルが数匹を同時に相手にしながら叫ぶ。私は一旦【跳躍】で木の上に飛び上がる。ゲオグの数はもう数えられない。100匹も簡単に超えてしまった。


「えっ……?」


 木が揺さぶられる。そして、次の瞬間、木に強い衝撃が起こり、中央部分で折れてしまった。私はゲオグ達の中に落ちる。


「シーナ!!!」


 サグルが急いで近寄ってくるのが見えたけど、私が落ちる方が先だった。


「ごめん、サグル……」







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