2 - 6.『Last smile』
2-6.『最後に微笑んだのは』
久しぶりの投稿です。
リアルの事情で投稿できていませんでした……
すみません。
「さて、終わりにしよう。」
リルゲア先生は挑発するように発言する。上等だ。これ以上何か手を残しているというのなら、僕もそれを打ち破るべくありったけの力をぶつける。
「先生。最後に僕のとっておきを見せてあげます。」
「ほう……まだ君は力を隠していたんだね。」
「父さんにでも誰にでも言ってみて下さい。先生は……僕に勝てない。」
「面白い。面白いよ、ロムス君!」
リルゲア先生は大きく笑う。今までの含み笑いとは打って変わって、激しい笑いに周囲も動揺する。戦いを眺めていたヨルクスは、苦い表情を浮かべている。
「先生からどうぞ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。【劫火】」
先程までとは違う、超位魔法を放つ。奥がしれない人だ。僕も構える。
「劫火はどこまでも君を追い続ける。君を焼き尽くすまで止まらない。……まあ、僕が止めれば大丈夫だけどね。」
「ははは。先生、それだと臨場感がありません。終わりにするんでしょ?」
「良い覚悟だ。それが妄言ではないと私は知っているが、どこまで本当なのかなっ!」
炎の塊が迫り来る。僕は避ける事をしない。避けても当たるのは、リルゲア先生が言った通りだ。意味の無いことをする必要は無い。僕が狙っていたのは、このリルゲア先生が見えない位置。
僕の今の立ち位置は、炎の塊を中心としてリルゲア先生と対照の位置に立っている。今から僕の使う魔法は、効果は知られてもいいけど、見られるのは厳禁だ。解析されると困る。
「……【消失】。」
掌の紋章に触れながら小さく呟く。【劫火】は結晶型の微粒子となって霧散する。僕の本当の切り札だ。僕が見つけた文献からは【多重詠唱】と、この【消失】のみが載っていた。だが、それだけでも充分。
「……へえ、それが君の本気か。」
余裕な様子を見せているが、明らかに焦っている。僕の発言をハッタリだと考えていたのか。ハッタリは戦術の一種ではあるが、過信も良くない。リルゲア先生は自分の洞察力を見誤っていた。
「どうやら私の知らない能力がまだあるようだね。これは良い土産が出来た、と言うべきかな。」
「それはどうも。」
僕は淡々と決着に向けて動く。この会話の間にも僕とリルゲア先生は魔法を交わしている。それも強力な魔法だ。僕は【消失】の存在が気付かれないためにも、一度きりしか使えないという印象を植え付ける必要がある。
「【茨の森】よ。」
龍の紋章で【多重詠唱】。リルゲア先生の四肢に茨が絡み付く。それを魔法で振り払おうとするが、僕はその隙に【紫電】を放つ。黄魔法雷系統の魔法だ。中位魔法。
真っ直ぐに【紫電】はリルゲア先生へと向かう。土の壁が現れる。雷は地面へと流れる。
「まだまだ終わらないよ。」
茨を切り裂いたリルゲア先生の顔は、やはり焦った表情のままだ。
「いえ、先生終わりですよ。」
「え?」
僕は終了を告げる。そして後ろを見るように促した。指の差す先を見る。ヨルクスはリルゲア先生の首元に手を置いていた。
「先生、終わりですよ。僕達の勝ちです。」
「ははは……そうだった。忘れていたよ。私は君たち全員で掛かってこい、と言ったね。私の負けだ。君たちは恐らく歴代の〈J-20〉……いや、Jクラスで最も強いだろう。」
リルゲア先生は両手を挙げて降参のポーズをとる。それと同時に場を占めていた気迫が消え去る。生徒たちは座り込む。
「うわっ!……身体が言うことを聞かねえ!」
スナートが言う。気絶していないだけでも、素質があると気付いているのだろうか。……いや、気付いていないだろう。この場は巨大な魔法の連鎖で魔力を大きく消費している。魔道士は空気中の魔力を吸うことで、魔力と体力を回復している。
だが、それが極端に薄くなると、気絶、最悪死ぬ可能性もあるのだ。〈J-20〉のクラスメイトのうち、僕とヨルクス、スナート以外は全員意識を失っていた。
「全員を保健室へ連れて行きましょうか。」
リルゲア先生の【浮遊】という魔法で気絶したクラスメイトを浮かべる。そのまま、保健室へ連れて行った。スナートは気絶していないけど、魔力欠乏を起こしかけていたので、保健室へ突っ込んだ。
スナートを除く気絶していない組は、教室へと戻っていた。
「先生。事情を説明してくれますか?」
「私が説明するまでのことかい?」
そう、僕は気付いている。このリルゲア先生が父さんの部下で、僕を……正確には龍の紋章の持ち主を監視していること。実は父さんとすれ違ってから、僕はしばしば背後からの視線を感じていた。
「ロムス君。君の予想はおおかた合っているだろう。確かめるまでも無いことだ。そして、私はこれからもこの姿勢を変えるつもりは無い。
だが、これだけは知っておいてくれ。私は君の父親の部下だが、君の敵という訳では無い。君の邪魔建てをするつもりも無いとね。」
リルゲア先生は苦笑した。
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