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5 - 5.『Escape Performance - II』

5-5.『逃走劇 2』

「ロムス、魔法攻撃本当に無し?」

「うん、無し。ヨルクスが何か用があった時に隣国に入れないのは嫌だろ?」

「まあね。じゃあ全部の攻撃をいなすって事?」

「勿論。というか攻撃しなければ良いんだから、全部防ぐか受け止めれば良いんだよ。」

「……たまにロムスはおかしなことを言うよね。」

「……?」

「分かんないなら大丈夫だよ。それじゃあ行こうか。」


 丁度向こうで待ち構えている騎士達が動き始めていた。ヨルクスが何を言いたいのか後でゆっくり追求するとしよう。まずは目先の敵だ。【高速】を発動したまま、騎士の中へ突入する。


「それにしてもこの城壁が【跳躍】で飛べない高さなんて思わなかったね。」

「同じく。まさか王都並みに高い城壁を持つ首都があるとは思わなかった。」

「王都は更に二重だからね。」

「流石、魔法大国だけあるよ。」


 騎士達が近付く。向けられた剣先を瞬時に発動した魔力の剣で流す。深追いはせず、攻撃せず。ただ受け止めるだけに留める。しかしそうもなれば受け流された剣は再度攻撃をしようとする。


「【物理障壁】、ヨルクス乗れ!」


 咄嗟の思い付きで【物理障壁】を足場にする。ヨルクスが【跳躍】で遠くから飛び乗る。これをするなら騎士の中に突っ込む必要は無かった。


「騎士が来る前にもう一度跳んで!」

「それだと落ちるよ!」

「跳んだ直後に解除して高い位置に発動する!」

「分かった!」


 今度は【跳躍】ではなく普通の跳躍。ヨルクスと同時に跳び、【物理障壁】を解除。


「【物理障壁】!」

「……危なかったね。」

「騎士に足を捕まえられそうだったよ。」


 見下ろす。騎士達が【物理障壁】の上に立つ僕達に罵詈雑言をぶつける。なんともガラの悪い騎士団である。まあ戦争の機運が高まっている現状だから疎ましいのも分からなくはないが。


「それよりもこのまま普通に出ていって良いのかな。」

「うん……【物理障壁】伸ばすからこれで城壁を超えようか。」


 僕達は空中を【物理障壁】で歩き出した。階段状にして城壁の上を目指して登っていく。改変(マジックアレンジ)もかなり上達しているような気がする。


「なんか出口までの通りは大変だったけど、ここでの戦いは楽だったね。」

「ヨルクス、そういうことを言うと良くない事が起こったりするから……。」


 一応今は何もないが……。僕達は城壁の上に立つ。


「凄い景色だ。帝都を見渡せる。」

「本当は騎士しか入れないんだろうね。今は騎士が居ないから2人占めだ。」

「2人占め……なんか楽しいね。」

「魔道学院での昇格戦の疲れも癒されるね。」

「これからまた修行で大変になるよ。」


 僕達は騎士たちが来ないことを良いことに、しばらくその景色を堪能していた。


「帝都はどうだ?」

「外国人の僕達にはあまり分からないですけど、ここに住む人にとっては良い街なんだと思います。」

「それは良かった。」

「どうしてここに?」

「若い子らが2人で帝都を引っ掻き回しておったからの。」

「逮捕されてたようでしたけど。」

「逃げて来たんだ。」

「大胆ですね。」

「それが日常じゃ。」


 いつの間にか僕とヨルクスの間に居た人と話す。この人は僕達が宿を取る前に広場で戦争反対という演説をしていた人だ。逮捕されていたが、逃げてきたようだ。


「それにしても音もなく隣に来れるような魔法なんて凄いです。」

「空間魔法の醍醐味だな。」

「僕とヨルクスにも醍醐味を満喫することができそうですか。」

「出来る出来ないじゃない。出来るようになるまで修練し続けるだけじゃ。」


 変な言葉使いの魔道士は不適に笑った。


「どうしますか。あなたの後に付いてきた騎士達。」

「君達が言っていた攻撃しないは、俺のモットーでもあるんだ。決して攻撃には使わない。つまり逃げるのみじゃ。」


 無詠唱で何かを発動する。恐らく空間魔法だ。騎士の姿が消える。


「まさか下へ?」

「よく分かったな。ほとんどの者が最初に魔法を見せると驚くものだが。」

「空間魔法は毎日見ていたので。」

「……そう言えば魔道学院にはあれがあったな。そうか魔道学院の生徒か。」

「はい、ランゲルス王国の王よりあなたの事を聞いて。」

「とぼけてるんですか?」

「よ、ヨルクス……?」


 ヨルクスがふと質問をする。まさかそんな質問をするとは思わなかったため、驚いてしまった。


「ふむ。この子は面白い子と思っておったが、君も面白そうじゃな。その予測は?」

「簡単な事です。空間魔法ですよね。どうやら僕達の事を遠くから見ていたようですし、広場で目も合いましたよね。」

「鋭いな。でも予測としては甘いな。確たる証拠が無いの。」

「……良い香りですね。走る時に何か香りがしたんですよね。同じ香りが魔道学院の中でもしたんですよね。」

「この香りが仇になっていたか。何百年何千年と生きていると、人生に飽きないように色々な事をするものだ。これも最近の趣味となっていたが、それが気付きを与えてしまったようじゃな。」


 空間魔法の魔道士はホホホと笑う。年齢を感じさせる行動をわざとにしているようだ。


「まあ茶番はここら辺にしようか。俺も暇じゃない。こんなに生きているがしないといけない事は多いんだ。期間は1週間だったな? 付いてこい。君達を空間魔法の魔道士にしてあげよう。」

次回更新は12:00の予定です


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7/1より新作『不滅の王と短命の少女』連載開始。

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