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5 - 4.『Escape Performance - I』

5-4.『逃走劇 1』


本日三回目の投稿です

 広場には多くの騎士が居る。その数は数百。たった2人の不法入国者にそこまでの騎士を投入するだろうか。


「これはまだ帝都内に仲間が潜んでいると思われているのかな。」

「その線はありそうだ。でも単純に見せしめにする可能性もある。」

「法を犯せば、こうなると……。」

「そういうこと。運悪くこの時期に来てしまったからね。」


 僕達が居るのは広場だ。のんびり話してはいるが、状況は最悪だ。パフォーマンスをするために騎士から逃げて、帝都を出たという風に見せなくてはならない。そのために注目を集めるにはやはり広場が一番だと考えた。


「あいつらを捕らえろ!!」


 急に広場に現れた僕達に驚いたようだが、数分して自分達が追い掛けている存在と気付いたのだろう。隊長格が命令を出す。


「早速来たみたいだ。行こう、ヨルクス。【高速】」

「【高速】」


 一応は【高速】で逃走する。追いつかれるようなら【音速】に切り替えるつもりだ。ある程度の計画を決めてきている。騎士達はただ後方から追い掛けている者達だけでない。


「左右に回られてるね。」

「地理を巧みに使ってくるな。かなり訓練されている。路地裏に居続けなくて正解だった。」

「すぐに囲まれてただろうね。」


 僕は路地から出てきた騎士の手を避ける。こんな風にだ。急に出てくるから危ない。


「先回られた!【跳躍】」

「【跳躍】!」


 騎士が前に待つ。【跳躍】で飛び越えた。それにしても魔法が使われる気配がない。これはどういう事なのだろうか。もしかすると、騎士は魔法が使えない非魔道士で構成されているのだろうか。頑なに魔法を使わない様子にこの予測は正しいように思えた。


「もしかすると帝国は騎士と魔道士が仲が悪いのかもしれない。」

「どういうこと?」

「騎士は魔法が使えなさそうだ。それに見てみた? 魔法を使ったときの騎士の表情。逃げられて浮かべたとは思えないぐらいに憎悪が籠った表情をしている。」

「試してみても良い?」

「うん、良いよ。」

「【物理障壁】」


 ヨルクスが路地から出ようとしていた騎士の前に【物理障壁】を発動する。やはり騎士は同じような表情を浮かべていた。


「本当だ。魔法が嫌いなんだね。だから魔道士と仲が悪いって。」

「帝国は騎士と魔道士の組織が争っているかもね。まあそれは僕達には分からないし、気にしなくて良い事だけどね。」

「今は逃げることだけだ。」


 僕とヨルクスはかなりの数の騎士に追い掛けられていたはずだが、その数が減っている。


「これは出口で待ち構えられている可能性があるな。」

「路地から出てくる騎士の数も減ってるもんね。」

「まあ1回行ってみて帝都を出れなさそうだったら違う場所に行こうか。」

「それが良さそう。」


 広場から出口は大通りを真っすぐ進むだけでは着かない。


「道が複雑だな。」

「確か帝国のほとんどの都市はこんな風に複雑だって言ってた気がする。侵入者がその都市で1番重要な場所に辿り着かないように。そして逃げられないように。」

「へえーそうなんだ! という事はその先見の明に見事に引っ掛かりそうって事だ。」

「袋のネズミとはこの事だね。」

「とんだ皮肉だね。」


 まさか大通りを進んでも出口に付かないなんて。外壁まで着く。左側か右側か、来た道以外に2つの道がある。


「どちらかは出口だと思うけど。」

「二手に分かれようか。それぞれが逆を目指して、出口だったら魔法を打ち上げる。」


 僕の提案にヨルクスは首を振った。


「待って、ロムス。今僕達が居るのは南部だ。つまり東部には宮殿がある。」

「……警備が厳しい、かつ出口があるはずがない。」

「そして宮殿から最も遠い所に都市の入り口はあるはずだ。」

「じゃあこっちか。完全に失念してた。ヨルクス、ありがとう。」

「たまには僕も意見を出さないとね。」


 ヨルクスはそう言って笑う。やはりヨルクスが居て正解だった。僕はあまり考えずに行動することが多いため、本当にヨルクスのような抑止力は有り難い。


 来た道から見て右側の道を進む。ここを進めば、西側に着く。そしてヨルクスの予想が正しければ、そこに出口があるはず。まあ僕も改めて考えればヨルクスの言う事に全く間違いがないため、それで正解だと思う。


「それにしても都市の中央にある広場に行くために本当に遠回りしないといけないよね。」

「ここの住民は路地とかを把握しているんだろうね。だから騎士達も当たり前のように路地から出てくる。だからこそここは何百年も攻め込まれることがなかった。」


 スウェス帝国は建国して帝都がここに建設されて以来、一度も帝都が攻め入られたことはない。恐らく偵察に来た者がこの複雑な都市と帝都の騎士の動きを見て、諦めてしまうのだろう。


 その調子で走りながら西へ向かうと出口が見えた。沢山の騎士と共に。


「もう全員が集合してそうだね。」

「しかも来る方まで予測されてるぞ。」


 騎士達は全員が()()()()()()()警戒態勢を取っていた。

次回更新は6/15の00:00予定


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7/1より新作『不滅の王と短命の少女』連載開始

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