5 - 2.『Capital』
5-2.『帝都』
お久しぶりです。
また毎日投稿始めます。
僕とヨルクスは路地を出て、大通りへ行く。
「王都とは違うね。」
「そうだね。やっぱり雰囲気もだけど、お店に置いているものも全く違うみたいだ。」
立ち並ぶ店の商品は食べ物というより細工品の方が多いように見える。しかし、大通りを歩く人の雰囲気が違うのは国の雰囲気ではないような気がする。
「これは……リルゲア先生が言ってた通りだね。」
確かにこの国は戦争の気運が高まっている。それどころか戦争の話している者も居る。
「そう言えば、外国は僕来たことないんだけど、言葉は同じなんだね。」
「僕達は詠唱で魔法を発動するように、魔力に言葉を流すことができるからそれで意思が伝わって通じているように感じるみたいだよ。だから僕が異世界に行った時も言葉が伝わったんだ。」
「そういう原理なんだ……。でもロムスの行った異世界の人は詠唱する魔法じゃなかったんでしょ?」
「僕もそれが謎だったんだ。あの世界に住む人々の言葉は僕にしっかりと聞き取れた。」
「また違う仕組みがあるのかもね。」
「行ってみたら分かるかもしれないね。そのために早く探さないと。」
「そうだね!」
僕は店の商品を見て思い出す。
「あっ……僕達お金を持ってないや。」
「いや……ロムス見て。お金一緒じゃない?」
ヨルクスの視線の先を辿ると、お金を払っている人が居た。確かに同じ銀貨だ。これは国が接しているからだろうか。思わぬ発見だ。換金しなくて良かったのは嬉しい。
「お腹空いたけど、先に宿を取らない?」
「経験は語る、だね。ロムスが言うならそうした方が良さそう。」
どうやら僕が王都に魔道学院の入学試験のために来た時の話をしているらしい。この前、ヨルクスに話したのだ。かなり笑われた。寮に移りたいとは思うけど、あの宿を僕はもう離れられない。金額的には宿の方が少し高い。しかし、それ以上に美味しい食事と綺麗な部屋は離れがたいものだった。アリスが居るのもある。
「どこの宿が良いかな。ああー、でも宿もだけど、服もだね。この魔道学院の制服で歩いてるとぼったくられるのが間違いなさそうだ。」
「しないといけない事が沢山だね。」
「全くだ。もっと準備しておけば良かった。とりあえず服を買ってから、宿を探そう。」
「了解。」
大通りを歩いて、服屋を探す。所々に服屋はあるが、明らかに質の悪い物が置かれている店や逆に高級店ばかりだ。これでは服を買うだけでぼったくられてしまう。ほどほどの店で良いんだけど。
「あそこなんてどう?」
ヨルクスの指さすのは見た目は普通のように見えるが、質の高い生地を使っている服。流石ヨルクスだ。貴族だけある。品を見定める能力が高い。
「そうだね、良さそうだ。あの店に行こうか。」
通りを歩く人の格好でこの国の普通の服装は大体分かっている。ガチガチに正装はしないが、ラフすぎる格好だと空間魔法の師匠とやらの気分を害するかもしれない。手頃な値段で無難な服を選んでおいた。ヨルクスも似たようなものを選んだらしい。買う時点で着替えておく。魔道学院の制服で街中を歩くのは意外と視線も浴びるのだ。
「よしこれでだいぶ雰囲気が変わったね。」
「うん、外国人って感じは無くなったね。それよりも本当にランゲルスのお金が使えてよかった。」
「そうだね。内心ひやひやしてたよ。」
「次は宿屋だっけ?」
「それを誰に尋ねるか、だね。このまま店の人に聞こうか。」
「下手に知らない人に聞いて嘘つかれるよりはマシだね。」
「すみませーん!」
服を購入して店を出ようとしていた足を止め、店員を呼び止める。呼び止められるとは思っていなかったのだろう。驚かせてしまったらしい。
「驚かせてしまって申し訳ないです。」
「いえ、大丈夫ですよ。それよりどのような用件で?」
「宿屋を探しているんですが、お勧めの宿屋とかありますか? なるべく宿泊費の高すぎないところが良いんですが。」
「そうですね……それですと、店を出て通りを右に真っすぐ進んで右手にある〈ふくろうの宿〉という宿屋があります。とても安価で高いサービスを受けられるのでお勧めですよ。」
「ありがとうございます。とても有り難いです。そこへ行ってみます。」
もう一度礼をして、僕とヨルクスは大通りを右側へ進み始めた。進んでいた方向をそのまま進んでいるため、新鮮なものが沢山並んでいるのが分かる。特に多い細工品では木製の動物の置物細工が有名らしい。
そのまま大通りを進んでいると、少し広場のようなものがあった。その中央に人が立って、演説をしている。戦争に反対する運動をしているらしい。それには僕も賛成だ。是非とも頑張ってほしい。
「あいつを捕縛しろ!」
そこに駐屯していた騎士達が現れる。中央で演説していた人は慌てて逃げ始めるが、流石に逃げ出すのが遅かったからか、騎士に追いつかれる。捕縛された。
「……服を着替えて正解だったかもしれないね。」
「そうだね。この状況で外国人は即刻逮捕だったかもしれない。」
僕達は騎士の一団を避けるように広場の外周を歩き、宿へと向かった。
次回更新は12:00の予定です。
ポイント評価、ブックマーク登録お願いします。
執筆の励みになっています。
7/1より新作『不滅の王と短命の少女』連載開始。




