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5 - 1.『Go Abroad』

5-1.『海外へ』


本日三回目の投稿です。

第五章『留学編』開始

「そんなに話せないものですか?」

「ああ。学院長が居ればそこで話せば良かったんだけど、今日は学院長が出張で居ないからここで話すのが一番安全だと思ってね。」

「僕が呼ばれたのは?」

「先程も言った通り、ヨルクス君も信頼できると思ったからだ。話すなら話してもらっても構わない。でも沢山の魔道士から習われる人生を歩むことになることは覚えておいてくれ。」

「リルゲア先生、それは流石に脅しの類ですよ。」

「だけど、今からの話はそれ程の危険性を秘めている。」


 リルゲア先生は一度言葉を区切る。相当に大変な内容のようだ。学院長も関わっているため、なんとなく誰が主導しているかは分かっているが、それでもリルゲア先生には重すぎる荷なのだろう。


「まず今から話す前の話をしよう。これはロムス君の異世界での体験と起こった出来事を踏まえて、それを知っている私と学院長、それから国王の3人で話し合った内容だ。」

「やっぱりそこが絡んでくるんですね。」

「ああ。予想してたようだね。」

「え、待ってください。国王って!?」

「異世界で起こった出来事がかなりこの国にも影響を及ぼすような事も多くてね、ロムス君は学院長の推薦で国王と話したんだよ。」

「国王陛下と!?」

「ヨルクス、ここでいちいち驚いていたら、もしかしたら途中で心臓が止まっちゃうかもしれないよ。とりあえず無心で聞くことをお勧めするよ。」

「う、うん……。」


 こうなると分かっていれば最初からヨルクスに王と話したことを話しておけば良かった。ヨルクスが少し可哀想である。ごめん、ヨルクス。


「ここで確認したいんだけど、ロムス君は向こうに行きたいんだよね?」

「はい。向こうでやり残したことを終わらせに。」

「そのロムス君の意見を汲んで、ロムス君を向こうの世界へ行く方法を考えたんだけど、国王を始めとして空間魔法を使える人でも向こうの世界に行ったことがないため、空間魔法で行けるか分からないそうなんだ。」

「確かにそれは僕も考えてました。失敗すると最悪、世界の狭間に永久に閉じ込められますから。」

「そう、だからそれ以外の方法を考えた。そして帰ってこないといけないことも考慮すると、ロムス君自身が空間魔法を修得してもらう事が一番良いのではないか、という結論に行き着いたんだ。」

「空間魔法を……。」

「リルゲア先生、そんな簡単に空間魔法は修得できるんですか?」


 リルゲア先生がヨルクスの質問を手で制する。どうやらまだ話は続くらしい。


「空間魔法を修得するにも魔法を教える者が必要になる。国王は国政があるために時間がない。そこで国王が提案されたのが、〈スウェス帝国〉に居る国王の師匠に直々に教えを乞うという方法だ。」

「国王陛下の師匠。凄い人も居るんだね……。」

「国王の師匠はかなり有名な空間魔法の使い手で一定の空間の時間の流れを変動させることができる。」

「つまりそれで時間の流れを引き延ばして覚えると。」

「正解だ。何か月、何年と掛かるか分からないけど、ロムス君が望む限りの環境は用意できているはずだ。」

「ヨルクスより年齢が高くなりそうだね。」

「ロムス君。今回は君だけじゃないよ。」

「え?」


 驚きの声を上げたのは僕だけでなく、ヨルクスもだった。そしてやっとリルゲア先生が言いたかったことの意味が分かる。


「ヨルクス君、君も大丈夫ならロムス君と共に空間魔法を修得してほしいんだ。」

「良いんですか……?」

「ああ、これは学院長の推薦だ。学院長は君の【白銀世界】を見ていたようだ。かなり感心されていたよ。」

「嬉しいです……。僕もスウェスへ行かせてください。」

「君ならそう言うと思ったよ。期限は来週まで。つまり今月中だ。」

「それまで膨大な時間を過ごすことになりそうだ……。」


 春華(しゅんか)1月に入学して中旬に〈墓場の世界〉。そこから春華2月、春華3月、夏陽(かよう)1月を向こうで過ごして、夏陽2月に帰ってきた。そして今月までに空間魔法だ。なんて波乱な5か月間だろうか。まだ波乱は終わりそうになかった。


「スウェス帝国までは空間魔法で国王が転移陣を作ってくれる。そこからは君達で行動してもらうしかない。」

「その師匠を見つけるまでに今月が終わりそうですね。」

「一応、その師匠には連絡しているようなんだけど、帝国内で戦争の気運が高まっている。戦争に巻き込まれないように色々と各地を転々としているらしい。今週末までは帝国の帝都内に居るそうだからそれまでに見つけてほしいってことだ。」

「分かりました……とりあえずは行動してみるしかなさそうですね。出発はいつですか?」

「今からだ。」

「えっ……?」


 リルゲア先生が示す先には石碑がある。


「国王が事前にここに転移の魔道具を置いてくださった。」

「王は〈付与術〉も出来るんですね……。」

「国王陛下が学院内に居たんですか……。」


 微妙に全員話の内容が噛み合っていないような気がするが、誰もが気にしていなかった。


「準備は良いかい?」

「はい。」

「いつでも。」


 僕とヨルクスは頷いた、リルゲア先生が魔道具に魔力を流す。すぐにその場を離れる。視界が真っ白に染まる。転移をする。完全にリルゲア先生の声が聞こえなくなると同時に遠くで人の声が聞こえた。


「もう着いたみたいだ。ここがスウェス帝国の帝都。」

「ここが僕達の空間魔法を修得する場所……。」

「期限は1週間だけど、長い間お世話になりそうだ。」


 僕達は大通りへと歩き出した。

次回更新予定 - 6/12(金曜日)00:00


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7/1より新作『不滅の王と短命の少女』連載開始。

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