4 - 29.『New Classroom』
4-29.『新しい教室』
昇格戦から栄転戦までの短い日常編が入ります
※日常編ではありますが、番外編ではないです
昇格戦がようやく終わった。〈墓場の世界〉から帰ってきて、すぐに昇格戦が始まって、ここまで休む機会が全く無かった。これから少しの間、何もない日々が続くことになる。
「おはよう、ロムス。」
シーナが教室に入る所だった。昨日とは違う教室。僕達は〈J-1〉になった。次に控えるのは栄転戦。リルゲア先生の話によると、栄転戦は来週のどこかで行われるらしい。栄転戦は〈J-1〉と〈I-20〉の入れ替え戦であり、勝った方がI-20で負けた方がJ-1になるのである。これはあまり大変ではない。単純な実力勝負だ。
「シーナはもう大丈夫?」
「うん、大丈夫。まだ痛みがあるように感じるけど、すぐに治るって。」
フィールド再編の時点で残っていた僕達4人以外は、全員があの複数クラスで協力した生徒達にやられている。しかもかなり痛めつけるような攻撃を行っていた。全員がすぐに治癒室で治癒師に診てもらったようだが、大丈夫だったらしい。
それよりも僕の【蒼世界】を受けたまさにその生徒達だ。どうやら僕も倫理に反する攻撃に該当したようだが、僕自身後悔はしなかった。恐らくあのような事をする生徒が今後しないとは限らないからだ。あくまでも因果応報という事で、僕自体の違反は彼らよりは軽いものとなっている。
彼らの中には錯覚ではあるが精神攻撃を受けて、精神的に魔法を使えなくなった人もいるらしい。本人の気持ちの問題であり、一生魔法が使えなくなることはないようだが、やりすぎであったと反省して本人にもしっかりと謝罪はした。でも本人もこれを機に同じことはしないようにしてほしい。
「罰則決まるのいつだったっけ。」
「えっと……昨日、5日後って言ってたから、来週の半ばだね。」
「どんな罰則なんだろう。」
「栄転戦に影響するものじゃないと良いけどね……。」
こればかりは祈るしかない。リルゲア先生も頑張ってはくれるそうだが、どこまで一担任の力が及ぶかは分からないと言われた。僕達のためにここまでしてくれるだけ嬉しいため、無理はしないでくださいと伝えておいた。
「ロムス~」
僕を呼ぶのはリーラだ。シーナの横にリーラが座る。
「おはよう。」
「うん、おはよー。ロムス、昨日凄かったね。あの魔法何なの~?」
「最後の魔法?」
「それそれ~」
「あれは【雷神憤激】っていう魔法だよ。極致魔法って分かる?」
「キョクチマホウ?」
「なんだなんだ? 何の話してるんだ?」
ちょうどクラスに入ってきたスナートが寄ってくる。
「昨日の僕が使った魔法の話だよ。」
続けてクラスの後ろで話していたヘレナとリーザンも来る。
「極致魔法っていうのは、下位魔法、中位魔法、高位魔法っていうのがあって、その上に超位魔法っていうのがあるでしょ?」
皆が頷く。ここまでは周知の事実だ。それにリルゲア先生と戦った時にリルゲア先生が使ったのも超位魔法だった。これは一流魔道士かそうかを決める基準の1つとなっている。
「そして今回使ったのは超位魔法の更に上の魔法で、魔道士の到達点って言われている魔法だよ。」
「到達点……。」
「すげえな、それ!」
「さすが~」
それぞれがリアクションを取る。こうした大人数で話をすることはあまり無いからとても楽しい。まだ授業が始まるまでは時間がある。もう少し話せそうだ。
「極致魔法は知られてはいないけど、調べようと思ったら調べられるからそれについては興味が出たら調べてみて。今は僕の使った魔法について話すね。僕が使ったのは【雷神憤激】って魔法なんだ。これはさっきも言ったね。黄魔法雷系統の魔法だよ。」
「ロムスは雷系統得意だよね。」
「あんまりそういう自覚は無いんだけど、最近よく使うのは雷系統だね。前は赤魔法の爆系統ばっかりだったんだけどね。」
リーザンの指摘に納得する。そう言えば【紫電】を使ってた記憶がある。そこからそう思ったのかもね。
「この魔法だけど、本当は離れたところから狙う魔法なんだけど逃げられる可能性もあるから、完全に不意打ちで発動しないといけない魔法なんだ。でも今回はそれができなかったから自滅覚悟で発動した感じだね。」
「なんかあのすごい球体は?」
「あれは魔力の塊だよ。極致魔法を使うには濃密な魔力を沢山使う必要があるんだけど、僕の体内魔力だと足りないから空気中の魔力を集めたんだ。
そしてこれは魔力の不思議な性質なんだけど、一か所に魔力を集中させると熱を発するんだよね。だから濃密な魔力を作るために魔力を凝縮させるんだけど、その過程で高熱で魔力が煮え滾るように見えるんだ。」
「凄いね。その魔法使うのにどれぐらい時間掛かったの?」
「これは大体7か月くらいかな。向こうの世界で3年間ずっと修行していた時期があるから、そこで色々してたんだ。」
「3年間って長いよね~」
「うん、凄い充実した3年間だったよ。」
あれが無ければ僕は今よりも昇格戦に苦労していたかもしれない。魔剣術も使えなかったからね。
「みんな、おはよう。」
「もうこんな時間になったんだ。」
僕達は自分たちの席へ座る。ヨルクスと名前を知らない残り1人の愉快な生徒も入ってきた。ヨルクスはどこか疲れているような気がする。何かあったのだろうか。
「ヨルクス、おはよう。」
「おはよう、ロムス……。」
明らかに疲れている。昨日の昇格戦で発動した魔法で失われた魔力は〈箱〉から出る時に回復しているため、魔力欠乏などはないはずだ。となれば、違う理由がある。
「どうしたの?」
「……ちょっと寝不足で。」
そう答えるヨルクスは本当に寝不足なように見えた。何か隠していることがあるようだ。
次回更新予定 - 6/11(木曜日)12:00
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7/1より新作『不滅の王と短命の少女』を連載開始します。




