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4 - 28.『Promotion War - XIX』

4-28.『昇格戦 19』


ついに昇格戦終了します。

本日三回目の投稿です。


※ヨルクス視点です

 ヨルクスはロムスがJ-10の後ろに居たJ-1の生徒の方へ向かった。逆に僕はJ-1とJ-5の生徒が居る場所へ向かう。まずは様子を見ようと僕は距離を置いて彼らの動向を見ることにした。


「なんで! くそっ!」


 しきりにJ-5の片方の生徒は不満を垂れている。どうやら逃げ切ることができると思ったようだ。それもそうだろう。こんな所に壁は本当は無いのだ。認識阻害に見事に引っ掛かったのである。


 J-1の生徒はそれを見ているが、手出しをする様子はない。どうやらJ-5の行動に何か意味があると勘違いしているようだ。魔法を発動しようかしまいか悩んでいるようでもある。その間に空気中の魔力に異変があるのに気付いた。


「これは……ロムスの。」


 ロムスの方を見る。J-1とJ-5の生徒も流石に異変に気付いたのか、ロムスの方を見ていた。空気中に漂う魔力が急に減っている。そして減った魔力はロムスの頭上に浮かぶ巨大な魔力の塊へと吸い込まれているようだった。


「ロムスは何をしようと……?」


 僕が見たことのない魔法であった。また先程と同じように僕の知らない魔法を使っているのであろうか。ロムスがどこまで魔法というものを熟知しているのかは分からなかったが、ロムスが羨ましかった。決して才能だけであそこまで辿り着いたとは思っていないし、ロムスが努力しているのは知っていた。しかし、それでも追いつけないと分かるほどの歴然の差に悔しさが残るのだ。


 魔力の異変が止まった。正確にはロムスの頭上の魔力の塊が消失した。魔法が発動したのだ。すぐ直後には空が雷雲で覆われていた。その雷は中央へと集まっているような気がする。


「あれが一気に……」


 本当に当たれば命すら簡単に落としてしまいそうな魔法であった。それにJ-1とロムスの距離から考えると、ロムスは共に浴びるのではないか。その無茶ぶりに僕は呆れてしまった。


「ハハハ……。やっぱ、ロムスはすごいなぁ。叶わないや。僕ももう少し自分のできることをしよう。」


 ロムスの魔法の影響か身体が痺れて動かないが、それは直に治るだろう。それよりも僕は魔法の準備を始める。僕に出来る最大の魔法。子供の時に父親から見せてもらった魔法。何度も何度も練習して一度だけ成功した魔法。


「僕に成功できるかな。……でも成功しないと僕達はここで負ける。それだけは絶対に許されない。僕のせいで負けるなんて絶対に嫌だ。何としても成功させる。」


 その時、ロムスの居た場所へ雷が落ちる。あれは雷というのだろうか。星が落ちてきたのではないかと思うほどの爆音で耳が聞こえなくなった。それに強い光でそちらを向くと目を失明しそうだった。慌てて違う方向を向くが、J-1とJ-5の生徒は目を背けるのが遅かったらしい。目と耳を抑えている。


『耳が聞こえなくなった。でも魔法は発動できる。今が絶好の機会だ。僕も始めよう。』


 すぐに魔法を発動する。発動するのは勿論僕が最も得意とする氷系統の魔法。


『自分の声が聞こえないけど話せてよかった。青魔法氷系統超位魔法【白銀世界】。』


 雪が降り始める。やがて雪は強くなり、吹雪となる。吹雪は更に勢いを増して猛吹雪となり、遂に世界を白銀に染める。ホワイトアウトだ。視界が完全に閉ざされる。本来ならこれで五感を封じて、その間に相手が凍りつく魔法だけど、視界が既にロムスの魔法で閉ざされているせいであんまりそれに意味はない。


『これだと普通の氷系統の魔法でも良かったかな。』


 発動者の僕に魔法の効果は無い。ロムスほどの魔法だと、発動者も攻撃を受けるようだけど、普通はそれだと使い物にならないから発動者には効果がないように構築されている。


 僕は急に意識が飛びかけた。正確には急な転移のせいで意識を失いかけたようだ。全体連絡が聞こえなかったからか。


「ヨルクス!」


 目を開くと、J-10の先に観覧席に戻っていたみんなが僕を囲んでいた。その中にスナートとヘレナは居ない。


「鼓膜と目は大丈夫?」

「……うん、大丈夫みたい。〈箱〉ってすごいね。」


 空間魔法で作られた〈箱〉はもう一つの世界ではあるけど、細かく言うと少し異なっていて、疑似世界のようなものだ。あくまでも身体はその世界にはあるけど、そこで死んでも影響は出ないし、傷も偽物なのだ。現実そっくりの姿を見せる疑似世界、それが〈箱〉である。


「そうだね。ヨルクスありがとう。ヨルクスが相手した3人は全員戻ってきたよ。そして残ってるのは2人。つまりスナートとヘレナだ。」

「……ということは」

「そう、僕達の勝利だ!!!」


 J-10から歓声が沸き起こる。僕も一緒に声を上げていた。嬉しかった。どうにか倒すことができたのだ。


『〈J-10〉より2名のみが生存。試合終了です。生徒は審判の近くへ集まってください。』


 J-1からJ-10、元のクラスの順で並んだ。清々しい瞬間だった。僕達は誰もが笑顔を浮かべていた。


「長い試合でしたが、お疲れさまでした。試合結果から新しいクラスを発表いたします。〈J-1〉は〈J-2〉、〈J-2〉は〈J-10〉、〈J-3〉は〈J-4〉、〈J-4〉は〈J-5〉、〈J-5〉は〈J-3〉、〈J-6〉は〈J-9〉、〈J-7〉は〈J-6〉、〈J-8〉は〈J-7〉、〈J-9〉は〈J-8〉、そして〈J-10〉は〈J-1〉へとクラス変更されます。また幾人かの生徒に倫理に反する行為をした者、故意的な規則違反をした者が見受けられました。その生徒に関しては、教職員会議によりそれぞれ罰則を決定します。以上でJクラス昇格戦を終了いたします。」


 審判と副審が修練室を去る。


「みんな、おめでとう。よく頑張ったね」


 リルゲア先生の労いの言葉で再び歓声が上がる。僕は他のクラスを見る。他のクラスの生徒は散々なものだった。担任が怒鳴るクラスもあれば、生徒達が泣き喚くクラス、互いに責任を擦り付け合って担任がそれを止めるクラス。しかし、僕達のクラスは違った。誰もがそれぞれの限界を出し切った。だからこそこれほど晴れやかな気持ちになれる。


「このクラスが大好きだ。」

「ヨルクス。それは君だけじゃないよ。僕達全員、このクラスが大好きだよ。」


 三週間に及ぶ僕達の昇格戦はやっと終わった。

次回更新予定 - 6/11(木曜日)00:00


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7/1より新作『不滅の王と短命の少女』連載開始。

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