09 少女の過去
今回の話は少し長めになっています。
また、今回は少女視点の話になります。
私は、とある村で生れ育った。
この村はかつて、一体の邪悪なモンスターによって滅ぼされかけた。
だが、丁度近くを通りかかった冒険者達によって、そのモンスターは絶命寸前にまで追い詰められた。
しかし、追い詰められたモンスターは自らの命を犠牲に、村全体に呪いを振り撒いた。
『いつの日か、この村で産まれる幼子の一人に、世界を滅ぼす力を持った、凶悪なモンスターとなる呪いをかけてやる!この地を離れられぬ呪いと共に!キサマらは、この世界から見放された存在になるのだ!』
それを聞いた村の人々は絶望した。
だが、冒険者の中に居た魔法使いの少女が、この村を救うため呪いが完全にかかる前に、そのモンスターの魂を魔法によって、持っていた魔石の一つに封印した。
「この魔石に、魂とともに呪いを封じ込める魔法をかけました。これを誰にも触れられないよう、祠に納めてください。そうすれば、あの呪いが発動することはありません」
少女の行動に感謝した村人達は、ずくさま祠を新しく立て、そこに魔石を封印し、誰にも触れられないよう村中で管理した。
それから数百年の間、呪いが発動することは無く、年がたつにつれ呪いが弱まっていき、今ではこの土地から離れられなくなる呪いは完全に消滅した。
これが、この村に纏わる言い伝えである。
今でこそ、おとぎ話のようなものとなったお話だけど、この村では今もなお祠を管理して、その言い伝えを守り抜いている。
そして、その祠を今管理しているのは、私の両親だ。
両親は村では有名な冒険者で、結婚して冒険者を辞めた今は、私を育てながら宿屋を営み、この祠を管理している。
このときの私は、言い伝えなんか全く信じていなかったけど、言い付けはちゃんと守っていた。
ある日、この村になんとなくガラの悪い冒険者達がやって来た。
その冒険者達は、どこかの街でとてつもなく名を馳せた冒険者だの、どこかの街の王のお気に入りだの言って、デカイ顔を使用としていた。
村の人達も、どこか呆れたように接していたように、私には見えた。
その冒険者達がこの村に来て数日たったある日、冒険者達はこの村の言い伝えを耳にした。
その夜、それを聞いた冒険者達は、
「くっだらねぇ作り話だな。アイツら、そんな作り話信じてんのか?笑える話だな!」
「違いねぇ!それに、もし本当だとしても俺達にかかればどんなモンスターだろうとイチコロよぉ!」
「おっしゃ!早速その魔石、ぶっ壊しに行こうぜぇ!」
そう次々と口走り、宿屋を飛び出していった。
それを偶然聞いてしまった私は、すぐに両親にその事を伝えた。
それを聞いた両親は、すぐに飛び出していった冒険者達を追いかけていった。
私は危険だからここに居なさい。と言われたけれど、胸騒ぎが止まず、不安になった私は両親が出ていって少ししてから、その後を追いかけた。
普段こんなに急いで走らないから胸が辛い。それでも、それで胸騒ぎが収まる訳じゃない。
一秒でも早く向かわないと、もう顔すら見れなくなる。そんな悪い予感が頭の中にずっとよぎっていた。
無我夢中で走り、ようやくたどり着いた時、
目の前で、両親は殺された。
私は、動けなかった。
信じたくない光景が、見たくなかった光景が、ずっとよぎっていた不安が。
これが、この光景が現実だということを拒んでいた。
それでも、殺された事実は変わることはない。
「けっ、俺達に剣を向けた罰だ。自業自得だな」
両親を殺した冒険者達は、祠を守ろうとした両親に毒を吐き、汚く笑いながら祠に入った。
そして、祠を容赦なく破壊した。
祠は無惨にも壊れ、その音を聞き付けた村人が集まり、「呪いが…!」と各々言っていたが、暫くしても誰もモンスターになる気配は無かった。
「ほーら見ろ。呪いなんてねぇ。やっぱり作り話じゃねぇか!」
「ホントホント。バカらしいなぁ、ここの奴ら!」
「ギャハハ!マジでウケるわぁ!…ん?なんだこれ」
冒険者達の足元には、黒く濁った魔石があった。
「なんだぁ?お宝か?おい、俺に見せてみろ」
「おうよ。ちょいと待って…」
濁った魔石に冒険者が手を触れた途端、魔石からどろり…と何かが溢れだした。
「それ」は冒険者達を通りすぎ、両親を殺され絶望していた私の中に入り込んできた。
…あれ?
私、どウしちゃったンだろう。
体ノなカに、変なモのがあルヨうな…
わタシ、いマ、ドウなっテいルノ?
コわイ…こワイヨ…
ダレカ、ワタシヲ、トメ…
「…あれ?
私、どうしちゃったんだろう。
体、なんか、変な感じがする。
こう、体の作りが丸ごと変わったような…
…そうだ!お父さんとお母さ…んは…」
目の前に広がるのは、焼け落ちた私の住む村。
目の前にあるのは、この村に住んでいた人達の灰と骨。
私は、私自身を見た。
そして、知ってしまった。
そうか、呪いは封印されてなんか無かったんだ。
私が、私こそが、
呪いによって産まれた、世界を滅ぼす存在である、と…