表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/414

87 新たな力 その2

今回はちょっと短めです。

「これは…!?」

「コイツはお前さんが大切にしていた剣を、ワシが作り変えたんじゃ。お前さんなら天華(ソイツ)を手にいれても、持っていくと思ったからの。」



 ガテツが新たに取り出したもの。

 それは、俺の冒険者として戦ってきた証であり、ずっと大切にしてきた剣であった。

 形こそ剣ではなく刀になってはいるが、間違いなく俺の剣であると確信できた。



「天華に合わせて長さと重さは調節しておる。今はまだ難しいかもしれんが、お前さんなら二本同時に扱えるようになるじゃろう。」

「…ありがとう。」

「ハッハッハ、礼を言われるような事でもないわい。ほれ、ソイツにも名前をつけてやれ。」

「もう決めてある。創烈(そうれつ)だ。」



 コイツは、これまでの俺の歴史そのもの。

 死物狂いだった駆け出しの時から今日まで、ずっと大切にしてきた。

 これからも、ずっと…



「…さて、一度ワシは寝る。流石に丸一日寝ずに作業していたからの。」

「おつかれさまです。」

「ありがとの。…あぁ、そうじゃ。」



 自室に向かっていたガテツが、ナヴィとレイラの方を向く。



「例の物、出来上がっとるぞ。見て確かめてくれい。」

「っ!本当ですか!」

「そうと決まれば!早速ー!」

「えっ、ちょ…」



 ナヴィとレイラが、メリアを連れ去って奥の方に消えてしまった。

 …何がどうなっているのか分からないが、二人が留守をしている間に、何か頼んだのか?

 気にはなるが、今は触れない方が良いと感じたので、俺は外に出る事にした。



 *



「これは…とんでもないな…」



 俺の目の前には、切り倒された木があった。

 切り倒した犯人は俺なのだが、問題はそこではない。


 俺は天華と創烈の試し斬りをかねて森に入っていた。

 そこで、よさげな木を見つけたので、試しに天華で切ってみたのだ。

 木はずるりと斬り倒され、近くに横たわった。

 それだけなら普通の剣でもできるのだが、明らかに違う点があった。それは、切り口である。

 なんと、一切のざらつきが無かったのだ。


 ざらつきが無いということは、一切つっかえることなく切り倒したということになる。

 それは、この天華が凄まじい切れ味を誇っているという証明になる。

 そして、それは創烈でも同じだった。



「…次は魔力を込めて…〝波斬(スラッシュ)〟!」



 天華に魔力を流して波斬(スラッシュ)を打ち出す。

 その威力は、前より遥かに高くなっているのが目で分かる。

 なにせ、目の前の木々が数十という単位で切り倒されたのだから。


 天華と創烈には、魔力を伴うスキルを使う際、魔力の流れをより良く、より早くする能力が付与されている。

 そのため、これまでより格段に早く、より強力な攻撃を繰り出せるのだ。

 また、それとは別に、魔力を消費するかわりに威力を倍増する能力もある。これは、普通の攻撃にも適応される能力のようだ。


 …こんな武器を俺が持っても良いのだろうか…


 そんな考えが頭をよぎったが、他人に渡すつもりも無いのでありがたく使わせてもらう。

 俺は日がくれるまで、天華と創烈を振るい続けていた。



 *



「それで、お前たちはいつ出発するんだ?」

「明日の朝だな。長居し続けすぎると、逆に引き際を見失ってしまうしな。」

「なるほど。さすがはBランク冒険者だ。」

「褒められる事じゃない。ただの体験談だ。」



 その日の夜、俺はガテツ達にそう伝えた。

 昼間のうちに二本の性能は理解できた。

 ならば、長居は無用だろう。



「ケイン、次はどこに行くの?」

「一度テドラに戻ろうと思う。期限は無いとはいえ、これをいつまでも放置する訳にもいかないしな。」

「それって、おじさんからもらったてがみ?」

「あぁ。それと、ビード達の合否も気になるしな。」



 俺がそう言うと、全員が頷いた。

 決まりだ。

 俺達は明日ここを出てデッドラインに向い、そこからテドラに戻る。



「………」



 俺達が話し合っている時、ガテツは一人の少女を見ていた。

 そして、ある決心をするのだった。


 そうして、最後の夜が過ぎていく…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ