08 その女子、メドゥーサにつき。
「モンスター…!?それに、メドゥーサだって…!?」
「…うん」
俺は自分の目を、そして耳を疑った。
しかし、今の反応でそれが現実だと理解せざるを得なかった。
そもそも、この世界には大きく分けて3つの種族が居る。
まず、俺たち人間。
この世界で最も多い種族なため、他の種族とは扱いが違うらしい。
次に亜人。
見た目は人間に近いが、魔力や体の造りが違ったりする種族がこれに属する。
エルフやドワーフといった種族が一番分かりやすいか。
ただし、吸血鬼や悪魔族といった、友好的ではあるが、他の種族を襲う事もある奴等も居る。
まぁ、俺からすれば人間も亜人の一種だと思うけどな。
そして最後、モンスター。
コイツらは人間や亜人達とは違い、理性のままに襲いかかってくる。
友好的なモンスターも居るには居るが、そんなモンスターが居るのはごく稀であり、危険であることには変わりがない。
「…あれ?」
そんなモンスターにも、ランクが付けられている。
先の戦いでもわかるように、危険度が高いほどランクが高く設定されており、「自分の実力以上の敵を相手にすると、簡単に命を落としてしまうぞ?」という、命を大事にしてほしいという昔の人々の願いが、今なお受け継がれている。
「…おーい」
そして、この少女…メドゥーサはモンスターに属する種族である。
モンスターとしてのランクはS。
数はあまり居ないが、一体でも一都市を壊滅させる事が出来る程の力を秘めている。
また、目が合った相手を一定時間石化状態にしてしまう魔眼を持っており、それによる被害もかなりあるらしい。
「…」
しかし、だ。
俺は目の前に居る少女がメドゥーサだとは思えなかった。
理由は単純。これまでに目撃されたメドゥーサとは、姿があまりにも違いすぎるからだ。
これまで目撃されたメドゥーサの特徴として、尖った耳、髪には無数の蛇、下半身が蛇のようになっており、自分の縄張りを荒らす者には一切の容赦を見せないような獰猛さを持っているモンスターだと知らされている。
「むぅぅぅ…」
だが、この少女にはこれまでのメドゥーサの特徴らしきものが見当たらない。
一応、耳は尖っているし、手足には髪と同じ淡い緑色の鱗のようなものがあるにはあるが、それ以外はただの少女である。
それに、メドゥーサであれば発動するはずの魔眼も、何度か目が合っているはずなのに発動していない。
うむむ…謎が深まるばか
「い い か げ ん にしろーーーー!!!」
「うぉあぁ!?」
あれこれ考えていたら、突然少女に怒鳴られた…
一体どうして怒られ…
あ、考えるのに集中しててほったらかしにしてた…
怒ってらっしゃる…ものすごい怒ってらっしゃる…
「…ご、ごめんなさい…」
「むぅぅぅ…」
「…本当に申し訳ありませんでした」
「はぁ…まぁ、いい、よ」
とりあえず許して貰えた…
うん。あまり深く考えるとまた今みたいになりそうだ。
これ以上は考えないで、話を進めてもらおう。
改めて、少女と向き合う。
…やはり、魔眼が発動した感じは起きないな…
「とに、かく、私が、メドゥー、サであるこ、とは間違、いない、の。でも、私に、は何も無、い…」
「何も無い…?」
「だって、私は忌、み子だか、ら…人とし、ても、メドゥーサ、としても」