表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/413

70 キラヒの里を目指して

「イブ!2体そっちに言ったぞ!」

「わかった!〝(フレイム)〟!」

「グギャァァァ!?」



 イブが放った(フレイム)は見事な起動を描き、襲ってきたゴブリンを焼き尽くす。

 その炎を見て、一部のゴブリン達が逃げていった。

 残ったゴブリン達は、必死に攻撃するも、俺とナヴィの前に、なすすべもなく倒された。


 俺達がデッドラインを出発して三時間。

 キラヒの里に向かっている最中に、先のゴブリンの群れに襲われた。

 ハイゴブリンなどの上位種無しで群れを作っていたゴブリン達。

 当然連携などあるわけもなく、あっさりと撃退することができた。


 ちなみに、今俺が使っている剣はデッドラインで購入した物。

 質はとても良いのだが、ブライビアの言う通り、俺には合っていないようだ。

 やはり、ガテツという人物を訪ねるべきなのだろう。


 暫くして、ゴブリンの死体が魔石へと変化していく。

 その光景に、イブが「ほへぇ……」と声を出す。


 イブは黒を主とした赤いフリル付きのワンピース、ボレロ、ヘッドドレスを身に付けた、いわゆるゴスロリと呼ばれる服装をしている。

 ヘッドドレスからは可愛らしい角が見えており、アクセントとして成り立っている。

 また、背の方も開けており、しっかりと翼が出せるデザインになっている。

 なんでも、これが一番お気に入りの服装らしく、〝自動修復〟と〝適正伸縮〟の二つをガテツに付与してもらった特別製とのことだ。

 手に持っている杖は、シンプルな形でありながらも、先端の宝玉しかり、イブの格好にとてもよく合うものになっている。

 この杖もガテツが作成しており、魔力制御が困難なイブでも、制御できるようになっているそうだ。

 ただ、イブ自身はガテツに会ったことが無いため、直接会うのはこれからが初めてだそうだ。



「……にしても、すごい威力だな……」

「そうね……ゴブリンとはいえ、一瞬で消し去ったんだもの。相当な魔力があるのは間違いないわ」

「素材取れなかったの、ちょっとだけ、勿体無い……?」

「うーん……まぁ、しょうがないっちゃしょうがないけどなぁ……」



 イブが見ていたゴブリンの死体は、俺達が討伐した個体である。

 イブは杖を使ってもまだ威力の調整が出来ていないらしく、先のように一撃で跡形もなく消し飛ばしてしまうのだ。

 何度か経験を重ねれば、おのずと加減できるようになるだろう。

 だが、それまでは……



「……まぁ、今は我慢しよう」

「そうね」

「うん、それがいい」



 俺達は無言で頷いた。


 *


「うーん……しょっ……とっとっと……」

「むむむ……歩きづらい、ですわねっ」

「大丈夫かー?」

「んっ、大丈夫、です!」

「ちょっと、辛い、ですわっ」



 ゴブリンとの戦いからさらに二時間。

 俺達は目印にしていた山を少し登った場所にいた。

 山には岩や木の根で溢れており、凹凸が激しく、まともに立てる場所が少ない。

 そのため、身体能力の高いメリアや、宙に浮けるナヴィとレイラは問題なく動けるのだが、ウィルとイブはこういった場所に慣れていないらしく、上手く前に進めないようだ。

 と、ここで先行していたレイラから、救いの手が差し伸べられる。



「おーい!開けた場所があったよー!」

「おっ、丁度いい。そこに向かおう。案内を頼む。……あと、ウィルを念力(サイコキネシス)で運んでくれ」

「オッケー任せて!」

「えっ、ちょっ!?」



 俺の指示の元、レイラが念力(サイコキネシス)でウィルを持ち上げる。

 突然の事で困惑したウィルだが、暴れたりはしなかった。

 そして、そのままレイラの案内で、開けた場所へと向かう。



「あのー、なんで私は持ち上げられているんですの?」

「さっきから先行した三人に追い付こうと無理に歩いていただろ?それのせいで、少し足を痛めた……違うか?」

「っ、気づいていましたのね……」

「ウィル、無理に急がなくてもいい。自分のペースで歩いてくれ。誰も置いていったりしないからさ」

「わ、分かりましたわ……」



 やがて、レイラの言う開けた場所に到着した。

 そこは丘のような場所となっており、すでにメリアとナヴィが居た。安全を確保しておいてくれたようだ。



「あ、ケイン」

「やっと来たわね」

「待たせたようですまない。それとメリア、ついて早々悪いが、ウィルの足を見てくれないか?」

「ん。わかった」



 レイラが丁度平らになっている場所にウィルを下ろす。

 そして、駆けてきたメリアが、ウィルの足の様子を調べ始めた。

 ウィルは、メリアに任せれば問題ないだろう。



「……さて、場所も良いし、ここらで飯を食べておこう。ナヴィ、頼む」

「えぇ」



 そう言って、ナヴィが〝収納〟スキルを発動。

 中から、テーブルや調理台、調理器具などを出していく。

 その光景を見て、驚いた者が三人。



「えええ!?」

「テーブルやお皿が、空から……!?」

「ナヴィ!いったいどこから出したんですの!?」

「あ、言ってなかったっけ?」



 そう言えば、テドラに入ってから一度も自炊してなかったなぁ……と思いつつ、三人に説明する。

 三人とも終始驚いていたが、すぐに納得してくれた。


 ちなみに、テーブルや野営用のテント等は全てナヴィの〝収納〟の中にある。

 俺とメリアの魔法鞄には入らないからである。



「さて、久々に作るわけだが……どっちが作る?」

「そうねぇ……最後に作ったのが大体一週間前くらいだし、今日は手分けして作るのはどうかしら」

「んじゃあ、そうするか」


 二人で作る事に決まったので、準備に入る俺達に、イブが質問をしてくる。


「あの、ケインさまとナヴィさまが作るのですか?」

「あぁ。俺とナヴィは料理が出来るからな。メリアは……昔は出来たらしいぞ。うん」



 メリアが少し落ち込んだのが遠目に見えたので、少しフォローしておく。

 ……まぁ、事実メリアの作った料理は料理とは呼べないので、無駄でしかないのだが。



「じゃあ、イブも手伝っていい?」

「んー……どうする?」

「良いんじゃない?危ないことは私たちがやれば良いわけだし」

「じゃあ、お願いしよう」

「やったぁ!」



 その後、回復したウィルも手伝いに入ろうとしたものの、「料理ができるのか、ですの?なんとかなりますわ!」の一言で却下されたのはまた別のお話。



 *



「さて、地図(マップ)によると、そろそろ見えてくる頃だ」

「もうなの?以外と近かったわね」

「もう少しで日が落ちそうだけど、ね」



 昼食後、弧を描く形で山の反対側まで来た俺達は、ようやく目的地であるキラヒの里付近までやって来た。

 道中何度かモンスターに襲われたが、その全てが低ランクモンスターだったので、イブのスキルの練習相手になってもらった。

 もれなく全員消炭になったのだが……

 そんなわけで、殆どの戦闘をイブに任せた結果、辿り着く頃には日が傾いていた、というわけである。



「そう言えば、キラヒについたらどうするんですの?」

「あぁ。まずは宿探し、それからガテツの所「動くな」へ……っ!」



 突然、何者かが冷たい声と共に俺の背後に現れ、俺を押さえつけてきた。

 首には短剣が突きつけられ、下手に動けば首が切れてしまうだろう。



「……!?ケイ」

「動くな。動けば……」

「っ……」



 メリア達が助けようとするが、俺に突きつけた剣を見せつけられ、動けなくなる。

 俺は、少しパニックを起こしていた。

 理由は二つ。

 まず、五感の強いメリアに一切気取られずに俺を捕らえ、首に剣を突きつけた事。

 そして、俺が捕まった時。それは、「ガテツ」の名をだした時だということ。

 つまり、この者はガテツに関わる人物だということ。

 なぜこんなことをされているのかは分からないが、それは確定と見て間違いないだろう。


 ちなみに、パニックになっている理由はもう一つあるのだが、それは考えないでおこう……


 俺に剣を突きつけた人物が、口を開いた。



「お前達、雇い主(ガテツ様)になんの用だ?もし奴の手の者だと言うならば……」


 何者かは、さらに声を低くして言い放つ。


「この場で、殺す」

新章「キラヒの里編」開幕です。

ここ最近は少し忙しくて更新が遅くなってますが、少しずつ書いていきますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ