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07 洞窟の少女

「…だ…れ?」



 弱々しい声で少女が問う。

 気付かれたのなら仕方ない。俺は少女を怖がらせないよう、ゆっくりと近付いた。



「すまない。驚かせるつもりは…ッ!?」



 少女の姿がハッキリと写るまで近付いた俺は、警戒心を和らげるために言葉をかけた。

 …が、途中で即座に顔を背けた。


 淡い緑色の髪、細く美しい四肢、白く決め細やかな肌、そこそこ膨らんでいる胸。

 誰がどう見ても美少女としか言えない少女が、この楽園のような場所で一糸纏わぬ姿で座り込んでいた。

 俺も男だ。興味が無いことは無いが、流石に…

 この子もこの子で、なぜ俺が顔を背けているのか分かっていないっぽいし…

 とにかく、話を進め無いと…



「す、すまない…とにかく、驚かせたり、襲ったりするつもりはないんだ。だけど…その…とりあえずコレを羽織ってはくれないかな…?今のままだと直視できなくて…」



 俺でも怪しいやつだよなぁ~と思いながら、少女に自分の持っていた少し大きめのコートを渡した。

 少女の方も警戒はしているが、今のままでは話が進まないと理解したらしく、大人しくコートを受け取ってくれた。

 ゴソゴソと音が鳴る。気になるけど気にしない気にしない…



「…いい、よ。こっち、向いて、も」



 少女の方から声をかけられ、俺は改めて少女の方を向いた。

 弱冠上が閉まっていないものの、ちゃんと大事な部分は隠れていた。

 少し勿体なかっ…じゃなくて、ようやく話を進められる。

 俺が少女から少しだけ離れた場所で座り込むと、少女もその場でちょこんと座った。



「俺の名前はケイン。君は?」

「…私、の名、前?…そん、なもの、無いよ」

「名前が無い…?じゃあ、君はここに住んでいたの?それとも他の場所から来たの?」

「…他、の所か、ら。詳し、い場所ま、ではわから、ないけど、ここ、じゃな、い所から、来たの、は確か」

「なるほどね…」



 どうやらこの少女、いつの間にかこの場所に来ていたらしい。

 さらに話を聞いたところ、詳しい日時は分からないが、今回のブルトン洞窟の異変が起きた時期と同じくらいの時期にこの場所に辿り着いたらしい。

 …となると、この少女がブルトン洞窟の異変の原因に関わっている可能性がある。

 ちなみに、話をしているうちに警戒心が和らいだのか、大部落ち着いて話が出来るようになった。

 どちらにせよ、この少女を放っておくわけにはいかないしな。



「…よし、分かった。とりあえず、ここから出ないか?ここでも話はできるけど、町まで行けば君の服とか食事とかを用意できるし」

「町…に…?」

「あぁ、こう見えても俺はBランク冒険者だからね」

「…ッ!」



 町、という単語を聞いた少女は、僅かに体を震わせた。

 そして、俺が冒険者だと言った瞬間、少女の顔が一気に青くなり、目の光を失った。



「ど、どうし「来ないでっ!」…!?」

「ケイン…冒険、者…!いや…来ない、で…!」

「待ってくれ、一体何が…」

「冒険者、なんでしょ…!あな、たも、私を殺すつ、もりなん、だ…!」

「なっ…」



 少女が唐突に俺をまくし立てる。

 それに、聞き捨ててはいけない言葉が聞こえた。

 冒険者が、この少女を、殺そうとした…?

 この少女が、いきなり怯えだした理由が冒険者にあるのか…?

 だが、それを聞き出すには、まず敵意が無いと示すしかない…!



「待ってくれ!俺は君を殺そうだなんて思ってない!」

「嘘…!信じ、られるわ、け」

「ならこれでどうだ!?」

「…!」



 俺は腰につけていた剣を、鞘ごと後方へ投げ捨てた。

 俺の武器は今投げ捨てた剣のみ。

 つまり、今俺の手元には一切の武器は無い。

 剣を持ったまま説得しても、敵意が無いことを伝えても、少女には全く伝わらない。

 なら、目の前で武器を捨てれば、敵意が無いことを、完全にとはいかなくても伝えられるはずだ。

 その判断が正しかったのか、少女の俺を見る目が変わった。



「…本当、に、殺さな、い…?」

「あぁ、殺さない」

「…分かっ、た。その言葉、信じる…」



 どうやら、信じてもらえたようだ。

 俺としても、出会ったばかりの少女に殺される!と言われるとは思っていなかった。

 冒険者、という事に関してはまだ怯えているようだが、少なくとも話は聞くことが出来るだろう。



「それで、どうして突然怯えだしたのか…聞いても良いかな?」

「…良い、けど、その前、に一、つ約束。私が話すこ、とは全、て事実。その話、を聞いた上で、私へ、の態、度を変えな、いで。…お願い」

「…あぁ、分かった。絶対に守ろう」

「…それ、じゃあ、話し、てあげる。私の、事を」



 少女は小さく息を吐くと、少し落ち着いた雰囲気で話し始めた。



「まず、私は、貴方達が、言うところ、のモンスター。種族、で言うと、メドゥーサ、なの」

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