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60 犯行の理由

なんだかんだで60話になりました。

今後もよろしくお願いします。

「……は、はい?」

「エ、エンジェル……ですの……?」

「そう!彼女は俺が見つけた最高の天使(エンジェル)!誰にも渡しはしない!」

「ウィル、俺にはこいつが何を言っているのか分からない……」

「大丈夫、私もですわ……」



 戦闘をしようとしていたはずなのに、二人して呆れ顔をしてしまう俺達。

 そんな俺達を見て、なぜか男が得意げになる。

 いや、本当になんで?



「フッ、どうやら彼女の良さが分かっていないようだな!ならば教えてやろう!俺と彼女の出会いを!」

「なんか、唐突に話し出したんだが……」

「そう!あれはよく晴れた日……俺が、彼女と運命の出会いを果たした日のこと……」

「……なんとなく、聞きたくないですの……」



 そんな俺達の言葉を無視して、男は語り始める。




 ***




 その日、俺はフラフラと町を歩いていた。

 何をするわけでもなく、ただただ普通に……

 だが、俺には真の目的があった……


 それはっ!純粋無垢な少女達を眺めることっ!

 あぁ、なんと清らかで愛らしいのだろうか!

 抱きしめたいっ!愛しあいたいっ!一つになりたいっ!


 だが、そんな態度は出さない。

 出してしまえば、それまでだから、な……


 その日も、俺は少女達を眺めていた。

 そんなときだった。天使(エンジェル)と出会ったのは……


 天使(エンジェル)を一目見たとき、俺に衝撃が走った。

 あぁ、なんだこの天使は……と。

 無邪気に笑い、無邪気に喜び、無邪気に動く。

 そんな少女に見とれて気づいた!

 これまでの少女達とは違う。彼女こそ、俺がずっと求め続けていた、俺が愛すべき最愛の天使だと!


 その日から、俺は彼女を追い続けた!

 彼女の家も、いつ起きていつ寝るのかも、お気に入りの服がなにかも、好きな食べ物はなにかも、全部調べた!

 全ては俺の愛を受け取ってもらうため!

 そして、彼女とお近づきになるにはどうしたものかと悩んでいたとき、ある男達を見て俺は思い付いた!


 まずは、その男達と接触する。

 生憎俺にはテイマーとしての才能があったので、モンスターをけしかけ、襲わせた。

 そして、心身共にボロボロになるまで襲わせた後に接触し、協力を求めた。


 ―俺の天使(エンジェル)を悪魔の手から救い出す為に、と言って。


 そいつらは元騎士だったらしいので、俺が「手伝ってくれたら、ここの領主に騎士として雇ってもらえるよう交渉してやる!」と言ったら、快く受け入れてくれた。


 そして、ソイツらは事件を起こした!

 俺の天使(エンジェル)の親を殺したのだ!

 嗚呼、なんとかわいそうな俺の天使(エンジェル)

 今この俺が、君の親を殺した奴等に天誅を与えてあげよう!

 そうすれば、彼女は俺の愛を受け入れてくれるはず!


 そう思ったていたのに、近くにいた冒険者や騎士によって奴等はあっさりと捕まってしまった。

 チッ、使えない奴等だ。

 元騎士ならもっとやれただろうに!


 仕方ないので、奴等は口封じをしておいた。

 死刑とされた、と報道されたときは、大いに笑い転げてやったよ。


 だが、その日から俺の天使(エンジェル)は姿を見せなくなった。

 どうしてだ?なぜ、俺にその麗しき姿を見せに来てくれないんだ?

 分からない。どうして?

 そんな日々を過ごしていたら……


 最近、また天使(エンジェル)と会うことができた!

 俺は歓喜した!

 だというのに、彼女はちっとも笑ってくれない。言葉も発してくれない。俺のことを見てくれない。


 どうして?なにか悪いことでもされたのか?

 そして、俺は彼女のことを再び調べ、怒り狂った!


 あの野郎、俺の天使(エンジェル)を家に閉じ込めていやがる!


 酷い!酷すぎる!

 彼女は俺に会いたがっているハズなのに!

 なぜ閉じ込めるなんて酷いことをしているんだ!




***




「だから俺は再び動いた!彼女を檻から救いだし、俺が彼女の救世主になる為にね!」



 男は終始興奮した様子で話していた。

 気持ち悪いほどの笑みを浮かべながら。

 そんな男に対する俺達の反応はというと……

 開いた口が開かず、ただ唖然としていた。

 だが、それもすぐに収まり、一言一句違わず言い放つ。



「「へ、ヘンタイだぁぁぁぁ!?」」



 と。


 ロリコン(ヘンタイ)ストーカー(ヘンタイ)自己中心(ヘンタイ)

 そのうえで、イブの両親を自分の愉悦の為だけに殺させたうえに、イブが閉じ籠った理由が自分であると気づいていないと来た。

 弁解は愚か、救いすらなかった。

 そんな俺達の反応が気に食わなかったのか、男がとってかかってくる。



「ヘンタイとは失敬な!紳士と呼びたまえ!」

「どこが紳士ですの!?変質者+犯罪者じゃないですの!」

「なにおぅ!俺はただ、彼女を守るために全てを知ろうとしただけではないか!何がおかしいと言うのだ!」

「全部おかしいですわぁぁぁぁ!!!」



 怒りのあまり、ウィルが興奮状態になってしまったので、俺は少し頭を冷やせた。

 そして、魔力眼を発動させて、気づいた。

 先程まで何も無かったはずの通路に、無数の反応が生まれていたことに。


 この男、自己語りをしながら少しずつ、気づかれないように迅速に、されど手を抜かず大量に罠を仕掛けていたのだ。

 それに気づいているのは魔力眼を発動した俺だけ。

 ウィルは未だに男と言い争っている。

 この状況では、伝えられることも伝えられない。



「もういいですわ!貴方を倒してあの子を救います!行きますわよケイン!」

「あっ、待て!」



 俺の制止を気にも止めず、前進するウィル。

 その行動に、男が微かに笑みを浮かべたのを、俺が見逃すはずも無かった。



「食らえですわ!ウォー……!?」

「っ、ウィル!?」



 ウィルが(ウォーター)を発動しようとした瞬間、至るところにあった罠から「何か」が飛び出し、ウィルの四肢と胴を絡めとる。

 そしてそのまま、近くの壁に叩きつけられる。



「かはっ!な、なんですのこれはぁ!?」

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