59 イブを探して
「ふぅ……」
「おつかれ、さま。……どう?使え、てる?」
「うーん……まだまだね。まだ振り回されてる感じがするわ。もっとケインに相手して貰おうかしら……」
「がんば、れ」
そんな会話をしながら、メリア達は檻へと近づいていく。
そして、ナヴィは少女達に離れるように促すと、影の槍で檻の一部を破壊した。
檻を壊したことで、別の罠が起動するか警戒していたが、そんなことは無かった。
ナヴィの指示通り離れていた少女達が、檻が壊されたのを見て、トテトテと近づいてくる。
「おねーちゃんたち、ありがとう!」
「「「「ありがとう!」」」」
少女達の嬉しそうな顔を見て、メリア達も微笑んだ。
だが、まだ油断できない。
これからメリア達は、ケイン達が戻って来るまでの間、この少女達を守りながら入り口を死守する役割があるのだ。
ケイン達と合流しても、入り口が占拠されていたら、そこでまた時間を使ってしまう。とケインから言われていたのだ。
メリア達は、少女達を固まらせながら下へと降りていく。
何かあっても、すぐに対処ができるように。
そして、一階へ降りようとしたとき、メリアは感じ取った。
「……ナヴィ」
「……!何かあったの?」
「入り口、に、何か、居る……!」
「何か……?数は?」
「1つだけ……でも、凄く、怖い……!」
ナヴィは、メリアの言葉を受け止め、一気に警戒心を強めた。
少女達も、メリアの言葉に怯えを抱いたが、メリアの「大丈、夫。守る、から」の一声で落ち着きを取り戻す。
そして、一階へと降りた。
「……!?こいつは!?」
***
時間は、少し遡る。
「うーん、目はなれてきたけど……」
「まだ、薄暗いですわね……」
「そう?」
「貴方はゴーストだからでしょう?」
「あ、そっか!」
地下へと向かったケイン達は、その薄暗さに目をならしていた。
いきなり光に当てられると危険ではあるが、敵にすぐに気づかれるよりは幾分か良いだろう、という判断だ。
ケインは、少しずつ見えるようになった地下の全貌を見る。
長い通路にいくつもの部屋。
そのうちの数ヶ所は、扉が開きっぱなしで放置されている。
ケイン達は、行動を開始した。
まず、ケインが魔力眼を発動し、罠が無いかの確認をする。
そして、部屋を一つずつ、レイラが隠密を使いながら確認していく。
確認している間は、ウィルがいつでもその部屋に突撃できる体制をとり、その間ケインが索敵をする。
そうやってしらみ潰しに調べていった。
多少時間はかかるし、この間にも何をされているか分からないが、下手に動いてイブに何かあっても困る、という判断だ。
そして、奥に進むにつれ、少し明るくなっている場所が現れた。
その場所へ向かうと、そこには三部屋ほど存在しており、その奥に完全に明かりが灯った部屋を見つけた。
恐らく、あの部屋にイブが居るのだろうが、まずは他の三部屋からだ。
これまで同様にレイラが侵入する。
が、すぐに飛び出してきた。
「っ!」
「……どうした?」
「……人形だよ」
「人形……ですの?でも、それくらいで驚くようなことは……」
「……だったら、見てみれば良い」
そう言って、レイラが音を立てずに扉を開く。
一応、誰もいないかの確認はちゃんとしていたらしい。
そして、ケインとウィルがその部屋を覗いて、暫し戦慄する。
その部屋には所狭しと人形が置かれていた。
どこを見ても人形人形人形。
それも、種類が尋常ではない。
中には、破れて中に詰められた綿が飛び出している人形もあった。
「なんだこれ……」
「正気の沙汰ではありませんわ……」
「……でしょ?」
その部屋を後にし、次の部屋を開こうとした時、奥の部屋からそれは聞こえた。
ガンッ!
まるで、何かを蹴りつけたような音。
それに、微かに興奮した男の声が聴こえる。
そして、その声はこちらの方へと近づいてくる。
俺達は一転、臨戦態勢をとる。
剣をすぐに抜ける場所に動かし、ウィルはスキルをすぐに発動できるようにする。
そして、ソイツは現れた。
「……!?なんだお前達!?」
俺達が侵入していたことに気づいていなかった犯人が、驚きの声をあげる。
犯人は男、それも、けっこういい歳行った感じの男だった。見た目40代前後と言ったところか。
服装も華美ではないにしろ、いいとこの服を着ている。
「どっから入ってきた!入り口には……」
「見張りなら全員倒したぞ。お前に悟られないようにな」
「なんっ……!?くっ、もっと強力なやつを置いとくべきだったか……!」
男の顔が歪む。
それに、今の発言で、この男がテイマーであるとほぼ確定した。
「さぁ、子供達を返してもらいますわ!」
「子供達……?あぁ、少女達ならここには……」
「この場所に居ないことは知っている。俺達の仲間が別行動で救出に向かっているからな」
「っ!?」
「俺達が助けに来たのはイブだ。お前が連れ去った事は知っている。返してもらうぞ」
俺は剣を抜く。
ウィルも水を発動させ、いつでも打ち出せる構えをとる。
だが、男が言い放った発言により、俺達は動きを止めてしまうこととなった。
「お、お前達の物でも無いだろう!渡さんぞ!ようやく見つけた、俺が愛すべき天使を!」




