06 ブルトン洞窟その3
強靭性を増したアシッドバイパーを退けた俺は、次々と襲いかかってくるモンスターを切り伏せていく。
4階層ではゴブリンリーダー、5階層ではウォンバット、6階層ではハイベアー、7階層ではゲルアント…と、種族もバラバラ。
それに、どれもDランクモンスターではあるが、アシッドバイパー同様普通よりふた周りほど大きいモンスターばかりだった。
そのどれもが普通に攻撃するだけでは浅い傷をつける程度、魔力を込めた攻撃ならなんとか切り伏せることが出来る。
俺の予定なら、本来なら魔力を使った攻撃はまだ先の方で使う予定だったが、魔力を込めないと倒せない相手となれば、使わざるを得なかった。
そんな俺は現在、9階層に来ている。
1つ前の階層、8階層は3階層までに出てきたDランクモンスターが全種類出てくるという、てんこ盛りセット的な階層だった。
まぁ、これまでと違ってどれも普通の個体だったのが、せめてもの救いだったけど…
さて、そんな異常ばかりだった階層をくぐり抜け、辿り着いた9階層。
どんなモンスターが出てくるのやら…
…
……
………
…………
あ、あれ?モンスターは…?
おかしい。これまでの感じなら、階層に足を踏み入れた時点でモンスターが襲いかかってきたというのに…
よくわからないが、もっと奥へ進んでみよう。
なにか変わるかも知れない…
…
……
………
…………
うん。やっぱり何も起きない。
どうしたのだろうか。
この階層、これまでとは違って、モンスターが襲ってくるどころか、他の生命の気配すら感じない。
ある意味、この階層が一番異常が起きている階層と言えるだろう。
なんの危険性も無いまま、俺は最下層 ―10階層へと続く道へと辿り着いた。
俺が、10階層へ続く道に足を踏み入れたその瞬間、本来ならこんな場所で聞こえるはずのない、人の声のようなものが僅かに聞こえた。
俺はすぐに声が聞こえる方へと走り出した。
近くなるにつれ、その声はよりハッキリと俺の元へ伝わってくる。
「ど…して……う…て…!」
その声は、その叫びは、助けを求めているかのようにも、哀しみに暮れているようにも、抑えきれない怒りを吐き出しているようにも聞こえる。
暫くすると、突然声が聞こえなくなった。
恐らく俺が走った際に出た音が、今頃になって声の主の耳に届いたのだろう。
俺は、声の主の警戒心を押さえるために、走るのを止め、静かに歩きだした。
暫く歩いていると、少し遠くに光を放つ場所があるのを確認できた。
その場所へ歩を進めると、俺の目にありえない光景が現れた。
太陽の如く光が差しこみ、地には色とりどりの花が咲き乱れ、その隙間を縫うように水が流れている。
まるで、楽園であるかのように。
突如として写った光景に暫し目を奪われていると、奥の方に人影らしきものがあるのが見えた。
驚かせないように、ゆっくりと歩を進めていると、向かってくる俺の気配に気づいたのか、その人影はこちらを向いた。
「…だ…れ?」
その人影…いや、その少女はか細い声でそう呟いた。
ついにメインヒロイン登場…!