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57 誘拐事件 その3

「……で、森に入った後も追跡していたら、」

「丁度俺達が居た、と」

「……そゆこと」



 どうやら、俺達がいない間にとんでもない事件が起きていたらしい。

 誘拐事件。それも、モンスターが行った。

 さらに誘導に足止め。しまいには、イブの部屋をピンポイントで乗り込む正確性。

 それに、先程の声。


 俺は、一つの仮説にたどり着いた。



「……恐らくだが、今回の誘拐にはテイマーが関わっている可能性がある」

「テイマーが?」

「あぁ。ガビューウルフは群れで行動する分連係行動は取る。だが、狙った一部屋を判断できるような知性があるとは思えない。それに、さっき俺達が倒したヤツは、誰かに命令されていた」

「だから、テイマーが関わっていると?」

「ほぼ確実にな」



 テイマーは動物からモンスターまで、幅広く使役することができる。

 だが、動物ならまだしもモンスターとなると使役するにも一苦労。高ランク、多数なら尚更だ。

 今回テイマーが関わっているとして、話を聞く限り、とてつもない数のガビューウルフを使役。さらに、個々に命令が下されていたとなると……



 (もしそうだとしたら、相手は相当な実力を持ったテイマーの可能性がある。)



 その考えが正しいと言わんばかりに、メリアが言葉を放つ。



「……ん、動きが変わった?」

「動きが?」

「なんか、さっきまで固まってたのに、バラバラに動きだしてる」

「なんですって!」



 ウィルが叫ぶのも無理はない。

 相手は俺達が追跡している事を見込んで、複数の小隊に分けて動きだしたのだ。

 こうなってしまうと、どの群れを追えばいいのか分からなくなり、最終的には見失ってしまう。

 相手はかなり頭が回るようだ。

 ただし、俺達が相手でないなら、の話だが。



「それで、どうするんだ?」

「……レイラの気配を追えば、問題ない」

「なるほど、そういうことか」

「……えーっと、どういう事ですの?」

「今、レイラには隠密(インビシブル)を使いながら敵に張って貰っているの。だから、いくら分散しようとも、レイラの気配を追えば、おのずと敵陣にたどり着ける、ってわけ」

「なるほど……」



 相手からすれば、上手くやっているつもりなのだろうが、俺達にとっては別に大したことではない……

 なんか、相手がかわいそうだな。

 等と思っていると、メリアが再び反応した。



「……止まった」

「止まった?」

「うん。動きを止めた。多分、目的地についたんだと思う。ケイン、地図(マップ)

「あぁ。……これは、屋敷か?」

「そうみたいですわね」



 地図(マップ)に写りこんだのは、かなり広い屋敷のようなものだった。

 メリア曰く、そこからレイラが動いていないようなので、ここが犯人の拠点なのだろうという考えに至った。

 最大限に警戒しながら進むと、少し遠目にその屋敷が見えてきた。


 完結に言うのであれば、その屋敷は廃墟であった。

 見た目は立派だが、至るところに蔦が巻き付いており、ここ最近人が手入れしたような後はない。

 恐らく、かなり前から放置されているのだろう。


 そんな廃墟の入り口付近には、数体ガビューウルフがウロウロとしている。

 恐らく、見張りなのだろう。

 俺達は、あまり近すぎず遠すぎずの物陰に隠れて様子を見ていた。

 すると、俺の側にレイラがふわりと現れる。



「メリア、ナヴィ……て、あれ?ケインにウィル?」

「ん?あぁ、レイラか」

「どーしてケイン達も一緒にいるの?」

「まぁ、成り行きで……」

「そっか」


 レイラはその一言で追求を止めた。

 今は、それよりも大事なことがあるからだ。


「とりあえず、ここが犯人の拠点で間違いないよ。何人か子供が囚われてた」

「具体的な人数は?」

「うーん……大体10人くらいだったかな」

「そこそこ居るな……」

「ちなみに、女の子ばっかりだったよ」

「その情報、いりますの……?」

「一応ね。あと、一番重要な事なんだけど……」

「なによ」

「イブは犯人と一緒に居るよ。一人だけ、扱いが全然違っていたもの」



 レイラ曰く、連れていかれた子供達は、先に捕まっていた子供達と同じ場所に連れていかれたらしい。

 だが、イブだけは犯人自ら連れていったようで、その場所も扱いも、他の子供達とは異なるものだったらしい。

 そのため、イブと犯人は一緒に居る、と。



「……とにかく、子供達を助け出して、犯人を捕まえないといけないな」

「そうだね……」

「レイラ、大体の位置は覚えているか?」

「バッチリだよ」



 レイラが言うには、イブ以外の子供達は三階に、イブは地下に連れていかれたようだ。

 なぜイブだけ別の場所に連れていったのか謎ではあるが、早く助けないと危ないような気がする。

 俺は少し考え込んだ後、全員に指示をだす。



「よし、二手に別れよう。メリアとナヴィは三階の子供達を頼む。俺とレイラ、ウィルはイブの救出だ」

「「「「りょーかい(ですわ)」」」」



 皆はすぐに理解したようだが、この分け方にも理由がある。


 一つは子供達の安全を確保するため。

 外に見張りが居るが、屋敷の中―特に子供達を閉じ込めている場所周辺にも見張りが居るはずである。

 そうなったとき、一番安全に子供達を助けられるのは防壁(バリア)回復(ヒール)が使えるメリアと、俺達の中で最も攻撃性能の高いナヴィだろう。という判断だ。


 もう一つは、何があるか分からない地下への対策だ。

 地下へ向かう場所がどこにあるのか、どんな仕掛けを用意してあるのか、どういった造りになっているのか。

 これらが分からない以上、むやみに大人数で突撃する訳にもいかない。

 かといって、少ない人数で行くわけにもいかない。

 なので、隠密(インビシブル)で姿を隠しつつ、壁をすり抜けて何があるのかを確認できるレイラ。魔力眼で罠を探すことのできる俺。そして、遠距離攻撃ができるウィル。

 この三人でイブの救出に向かうことにした。



 作戦が決まった俺達は、安全に助け出すために、まずは入り口の見張りの無力化を開始する。

 レイラが姿を消し、入り口に屯するガビューウルフを全員その目に捉えると、そのまま念力(サイコキネシス)で宙に浮かせて動きを封じる。

 突然の事で、困惑するガビューウルフ達だが、すぐに仲間を呼ぼうとし……失敗する。

 レイラが、口を思いっきり押えているからだ。

 そこにナヴィの空気弾(エアーバレット)、ウィルの水刃が炸裂する。

 一切の抵抗を許されず、見張りのガビューウルフ達はそのまま意識を手放していく。

 そして、絶命したガビューウルフ達を、レイラが少し遠い場所に吹き飛ばす。

 これで、ここに仲間が集まってくるまでの時間は十分稼げるはずだ。


 俺達は、屋敷の中へと乗り込んでいった。

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