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47 パライル島

「じょうりーく!」

「あんたは浮いてるけどね」

「うわぁ、気分台無しのツッコミだぁ」

「あはは……」



 無事パライル島に着いた船は、一番大きい波戸場に停まった。

 すぐに外出許可の証を貰い、俺達はパライル島へと足を踏み込んだ。



「さて、それじゃあなにをしようか」

「……美味し、そうな、臭い……」

「相変わらずだなメリアは……」

「でも、ここの情報を得るならうってつけじゃない?」

「まぁ、そうだな」

「はいけってーい!メリア、案内よろしく!」

「こっ、ち」



 メリアとナヴィ、最近屋台に対する反応がおかしくなっている気がするんだが、大丈夫か…?

 さすがに置いていかれるのも危ないので俺とレイラも遅れて後を追った。


 なんとかメリア達に追いついた俺達は、屋台で買い物をしながら情報収集をしていった。



「むぐ……あぐ……」

「ん、これも美味しいわね」

「お前ら……確かに昼時だが食べすぎじゃないか……?」

「そう?―はぐっ―どろみひたへるんたっだら―んぐっ―どこでも良いんじゃないのかひら?」

「ナヴィも食べながら喋るなっての……」

「そんなことより、ケインも食べてみなさい」

「これ、おすす、め。食べて、みて」

「ブレないなぁ……あ、うまい」



 屋体郡から少し離れた、広場のような場所で食事を取っていると、ふらふらと町を見に行っていたレイラが帰ってきた。



「たっだいまー」

「おかえり。なにかあったのか?」

「色々とね」

「それじゃあ、情報をまとめ……」

「その前に!ちょっとこっちに来てくれない?」



 そう言うと、レイラはきた道を戻っていく。

 俺達も後を追うと、とある横道に入り、人目につきにくいところで制止する。

 レイラが浮遊していた下には…


「……けだま?」


 メリアの言葉通り、かなりふらふらとした毛玉が居た。よく見ると、釣り立った耳と少し大きな尻尾が生えている。

 どこからどう見ても狐、それも子供だった。だが、その体は汚れていたり、傷ついている。



「この子…エレメンタルフォックスか?」

「エレメンタルフォックス?」

「あぁ、モンスターの中でもかなり人懐っこくてね。ペットとして飼われてるのもいるくらい人気なんだ。他にも猫だったり鳥だったり、色々な種類が居るな」

「へぇ……それで、この子はどうしてここに?それに、この傷は……」

「それが分かんないんだよねぇ……私が見つけたときには、すでにボロボロだったし……」

「だから急いで戻ってきたと」

「そゆこと。なんとかできる?」

「傷はメリアの回復(ヒール)がある。頼んで良いか?」

「りょー、かい。〝回復(ヒール)〟」



 子狐にメリアの回復(ヒール)を使ってやる。

 すでに立てるだけの体力が無くなりかけていたのか、抵抗や逃げるようや素振りは見せず、包み込まれるように大人しくしている。

 だんだんと傷が癒えていく様子を見ながら、俺は魔法鞄から食べ物を取り出す。

 子狐が何を食べるのか俺はよく知らないが、大きかったり生だと食べにくいと判断し、細かく切って焼いておいたモンスター肉を取り出した。

 子狐の方を見るとすでに傷は癒えたものの、体力が戻っていないのと、空腹で起き上がれない様子だった。



「ほら、食べられるか?」

「くぅ……?」

「怖がらなくていい。お腹が減ってるんだろ?」

「くぅ……」



 おそるおそるといった様子で肉に近づく子狐。

 そして、肉を口にした瞬間「くぅ!」と声を張り上げて食べだした。

 誰かに取られまい、と言わんばかりの速度で。



「そんなに急いで食べなくても、誰も取ったりしないぞ」

「……くぅ?」

「分かってるのかなぁ……」



 子狐は一心不乱に食らいついている。

 それは、妙にほんわかする光景だった。


 この様子なら、大丈夫だろう。

 俺は子狐の頭をひと撫でする。



「それじゃあ、俺達は行くよ」

「くぅ?」

「ちゃんと自分の家に帰るんだぞ?それじゃあな」

「くぅ……」



 俺達は、子狐の無事を祈りつつその場を後にした。

 その場に残された子狐が声を鳴らす。それはどんな返事なのかは分からない。

 だが、少し寂しげに聞こえたような気がした。



「ねぇ、あの子の事は放置していても良かったの?」

「分からない。でも、あの人慣れしたような感じだと、飼い主か親はいると思う」

「うーん……ほんとかなぁ……」

「まぁ、俺もそこは分からないけどな……」



 とにかく、子狐の無事を祈ろう。

 俺達は横道をでて、大通りにでた。



「それで、なにか良い情報でもあったのか?」

「そりゃあ、一杯あるよ。どこのお店が安いだとか、どこの宿が質が良いとか!」

「それはこっちでも色々聞いたぞ」

「後は……そうそう!あと一時間後くらいかな?その時間にコンサートみたいなのをやるみたいだよ!」

「コンサート?」

「なんでも、大陸を跨いでいろんな場所から歌好きさんが集まって、順に歌っていくんだって。それで、最終的に観客席にいる人達で投票をして、どの歌が一番良かったかを競うんだってさ」

「へぇー」

「すでに観客席は一杯らしいけど、外からでも見たり聞けたりはできるんだって」

「そんな催し物もあるのか」

「教えてくれた人が、今年はハイレベルな戦いになりそうだ!って言ってたよ」



 歌を歌うだけなのに、わざわざ競いあうのか…

 まぁ、人によっては歌うことが生きがいと思う人もいるわけだし、不思議じゃないか。


「はぁ……はぁ……」


「それで、そのコンサートはどこでやるんだ?」

「んーとね、さっきの広場の少し奥の方だね」


「ちょっと……待ってってば!」


「それならそのあたりの宿を取って、宿から歌を聞くってのも良いかもな」

「それいいね!私それがいい!」


「待てませんわ!?遅れたら大惨事ですのよ!?」


「私もそれでいいわ」

「わた、しも、それで、いい、よ」


「でも、そんなに急いだら……」


「よし、そうと決まればさっそく……」


「なんですの!?別に……」


 ……


「「えっ」」

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