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46 朝のやりとり

第四章始まります!

「~♪」



 それは、とても綺麗な歌声だった。

 その歌は、先までに聞いていたどの歌よりも俺の心に響いていた。


 なぜ、こんなにも惹かれるのだろうか。

 なぜ、こんな場所に来てまで歌っているのか。

 そして、なぜ周りの奴等には、彼女の歌声は響いていないのだろうか…



 話は、数時間前に遡る―




*




「おーい、起きろー」

「んっ…………むにゅう…………すぅ………」

「メーリーアー?起ーきーろー」

「んぁ……っくぁぁぁ…………………すぴぃ……」

「ダメだこりゃ」



 船に乗ってから、一夜が明けた。

 メリアを起こすのを諦めた俺は、一つ下の階へと降りた。



 この客船には、俺達客人が使うためのフロアが計六階分存在する。

 一階が浴場や娯楽を楽しむフロア、二階が食堂、三階から五階までが寝泊まりするフロア、そして最上階がデッキとなっている。


 そして、俺達に宛がわれたのはどこに行くにもちょうど良い、三階の階段近くの部屋だった。

 これも、モーゼさんが工面したのかもしれない。偶然かも知れないが。


 二階へ降りると、すでに起きていたナヴィが軽食を食べ終えていた。

 その隣では、食してこそいないが律儀に座った状態で浮遊しているレイラの姿があった。



「あ、おはようケイン。……あれ、メリアは?」

「まだ寝てる。起こそうとしたけど無理だった」

「珍しいわね。ここまで起きないなんて」

「そうなの?」

「まぁ、そうだな……確かに珍しいかもな」

「あ、じゃあ私様子を見に行ってもいい?ついでに起こしに行ってくるー!」



 ふわりと宙に浮くと、レイラが俺達の部屋へとすっ飛んでいく。

 ちなみに、律儀に扉から出ていった。



「あいつ……俺の返事なんて聞くつもり無かっただろ……許可するつもりだったけど」

「あはは……というかケイン。ここに来たってことは朝食食べに来たんでしょ?なにか取って来ましょうか?」

「いいや、自分で取りに行くよ」



 そういってその場を離れ、盆に料理を取っていく。

 朝なので、肉のような油っこいものは少なくあっさりした汁などが多い。

 俺はパンを数個とスープを取って席に戻る。



「おかえりー」

「おう」



 席に座って、まずはパンをいただく。

 木の実を混ぜこんだパンは柔らかく、コリッとした食感もいい。

 そして、スープの方はと言うと……


 なんだろう、美味しいのだが……



「いつも作ってるやつの方が美味しい?」

「……!」

「うぐっ!?」

「っ!あぁ、ごめんケイン!はい水!」

「んぐっ……はぁ……いきなりなにするんだナヴィ……」

「あっ、いや……なんでもない!」

「えぇ……?」



 なぜか背中を叩かれたうえに、そっぽを向かれてしまった。

 心なしか顔が赤くなってるのは気のせいだろうか。


 俺が言う「いつものスープ」とは、ナヴィの野菜を使って作るものだ。

 たまに現地調達した魔物肉を入れたりするのだが、基本は野菜のみ。

 だが、素材が良いので少しの味付けだけで何杯でも行けるくらい美味しくなるのだ。


 ちなみに料理担当は俺とナヴィの交代制だ。

 メリアは……まだうまくできないだけだ。うん。



「ねぇ、これどういう状況?」

「うぉ!?なんだレイラか……びっくりした……」

「ゴメンゴメン。で、どういう状況?」

「いや……」


 俺はこうなった経緯を軽く話した。

 話終えた後、レイラはうんうんと頷くと、


「それ、ケインが遠回しに「ナヴィの野菜は最高だ!」って本人の前で言ってるようなもんじゃん。照れ隠しだよ」

「……そうなのか?」



 ナヴィはそっぽを向いたままだが、頷いたように見えた。

 そっかーそうなるよなー


 ……


 あ、なんかこっちも恥ずかしい。



「あ、そうだケイン」

「え?な、なんだ?」

「動揺隠せてないよ……まぁいいや。メリアの事なんだけど、起こすのは無理だったよ」

「あ、無理だったか」

「いや?さっき起きたんだよ。もうすぐ来るんじゃないかな?」



 レイラが言った瞬間、メリアが少しぼけーっとしながら扉から現れ、こちらに向かってきた。

 なんというナイスタイミング。



「くぁ……おは、よ……」

「おはよう、メリア」

「おはよー。あ、私メリアの分のご飯取ってきてあげるわ。なにか食べたいものはある?」

「ごはん……」

「ざっくり言ったわね……了解。ついでにいくつか取ってくるわ」

「よろし、く……」



 今日に限って、まだ寝ぼけているのか、それともいつもの感じなのかよく分からない。

 まぁ、多分寝ぼけているのだろう。


 ナヴィがメリアの分の朝食を持ってきて、メリアが食べ始めた辺りで、ビードがやってきた。



「おっ、早いな」

「そうか?いたって普通だと思うんだが」

「いやいや、まだ日が登って殆ど立って無いじゃないか。こちとらギルもセーラもまだ寝てるんだぜ?」

「なら、お前はどうしてこんな時間に?」

「まぁなんだ、あまり船とか乗らないからな。色々と環境が違うから普段より早起きしてしまっただけさ」

「そんなもんかねぇ……」



 俺達はメリアが普段より遅かった事以外、特に変わらない朝を迎えた。

 いつも夜明け頃にはほぼ全員が起きているのであまり気にしていなかったが、そんなに早いのか……



「まぁ俺達とは違うってところで納得しておく。そういえば、今後の予定については聞いたか?」

「あぁ、確か昼前くらいに一度整備や物資の為に島に寄って、明日の昼過ぎに出航してデッドラインに向かう……だったか?」

「そうだ。一度降りて観光するのは自由だが、明日の出航までに船に戻れないと置いていかれるけどな」

「あぁ、そんなことも言ってたな」

「俺達は少し見て回ろうと思うんだが、お前達はどうするんだ?」

 「そうだな…」



 まぁ、船に乗ってるだけだとやることも殆どないし、降りて観光するのも悪くない。

 それに、その島は色々な大陸を繋ぐ中継地点とも言える場所らしい。

 色々な情報を得るのも、冒険者として大事なことだ。



「俺達も一度降りようと思うんだが……お前達もそれでいいか?」

「ひひお」

「いいわよ」

「いーよー」


 メリア、食べながら返事しない。


「……というわけで、俺達も観光しようと思う」

「わかった。ちなみに、島の宿に泊まっても問題は無いそうだ。金は別料金だがな」

「そこの心配はいらないな」



 そんな話をしているうちに、だんだんと人が多くなってくる。

 俺達はメリアが食べ終えたと同時にビードと別れ、デッキに上がった。


 やはり、海風が気持ちいい。

 綺麗な海に、うっすらと雲がある空。

 どちらも青いのに、全く違う色と印象を持つ景色に、ふと違うものが写りだす。

 それはやがて、島の形になっていく。


 あれこそ、今この船が向かっている島。

 大陸を跨ぐ中継地点の役割を持ち、人々の繋がりを作る場所。



「あれが〝パライル島〟か……!」

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