44 決闘の後で
「ケイン!」
「ぐぉっふ!?」
「メリアー?先に回復しないと」
「あっ……ご、ごめん……」
決闘に無事勝利した俺は、熱がある程度収まるまでの間ステージに立っていた。
その間に、ロロヤ達は回収されていったが。
熱が冷め、ようやくステージから降りれたかと思ったら、メリアのタックルを食らわされた。言い方が悪いが、酷い追撃を食らった。
別室に入り、メリアの回復を受けていた時、突然扉が開いた。
「ここかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うひゃっ……!?」
入ってきたのは、所々に湿布を張ったロロヤだった。
メリアが驚きのあまり、回復を止めてまで俺の後ろに隠れる。
あまり見ない反応だったから可愛い。
ただ、完治してないから回復を止められると痛いんだが……
「えーと…なんのご用で」
「オレは認めんぞぉ!キサマ一人にこのオレが負けるなんてあり得「ほいっと」なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ロロヤが俺の胸倉をつかもうと近づいてきたが、ロロヤの体が宙に浮いて静止した。
「なにコイツ。わざわざいちゃもんつけに来たの?」
「ナイスレイラ」
「って一人増えてるぅ!?つかこれどうなってんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「うる、さい……」
ロロヤが宙に浮いている理由。それはレイラの能力によるものだ。
レイラは死ぬ前、俺に全てのスキルを渡したため、今のレイラはスキルを使うことも得ることもできない。
だが、スキルとは別の力―ゴーストとしての力は使うことができる。
ゴーストは姿をくらましたり、物を動かすことができる。
いわゆる超常現象というものだ。
普通のゴーストは、コップや服といった軽いものや小さいものくらいしか動かすことができないし、姿は薄くする程度が限界である。
だが、ごく稀に大きいものでも動かせたり、完全に姿を消す事ができる個体が生まれる場合もある。
レイラの場合、勇者の末裔であり、生前は膨大な魔力を持ち、魔力操作のセンスにも長けていた(レイラ曰く)。
それは、ゴーストになった今も変わらなかったようで、実体は無いものの、魔力を感じることができるうえに、操作もできるらしい。
実際に少しだけ見せてもらったが、普通のゴーストのイタズラというレベルを優に越えていた。
部屋にあったベッドを楽々動かしたり、完全に姿を見えなくしたり。
そのため、本来なら名前のない力だが、レイラの力は別格であるということを分かりやすくするために、物を動かす能力を〝念力〟、姿を消す能力を〝隠密〟と名付けた。
レイラが。
「ここにいましたかリーダー……って!?」
「なんで浮いてるんだ!?」
「あ、ちょうど良かった。お前らコイツを引き取ってくれ……」
「あ、また迷惑をかけたようですね。申し訳ありません……」
「リーダーよぉ、気持ちは分かるがいい加減認めたらどうよ」
「断るっ!」
頑固だなぁ……
「大体、キサマの冒険者ランクはなんなんだ!」
「今聞くのか……Bだ」
「はぁ?キサマ、嘘をつくのも大概に「ほれ」しろってええええええええ!?」
「なっ!?」
「マジかよ……」
信じないだろうなぁ、と思ったので言い終わる前にカードを見せつける。
俺のカードには、しっかりとBランク冒険者である証拠が刻まれている。
カードを見たロロヤ達が驚きを顔にする。
「え……じゃ、じゃあリーダーって……」
「格上相手ににケンカ売った、って事か……?」
「うーん……まぁ、そうなるかな」
「バカなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「う る さいっ!」
「ぐあっ!?」
また叫んだロロヤにしびれを切らしたナヴィが、ロロヤめがけて空気弾(非殺傷版)を撃ち込んだ。
弾は腹部に直撃し、ロロヤはそのまま意識を手放した。
そして、気絶したと同時にレイラが念力を解く。
酷い仕打ちだ。
「お?ようやく見つけた」
「あれ?モーゼさん?」
「ギ、ギルド長!?」
「ん?……あぁ、またやらかしたのか」
「いや、まぁ……はい……」
「はぁ……懲りない奴だね。とりあえず色々話したいから、後で私の部屋に来るように」
「は、はい……ユート、頼んでいいか?」
「はいよ」
モーゼさんに促されるまま、二人は気絶したロロヤを引き取り部屋から出ていった。
「……それで、モーゼさんがなぜここに?」
「そりゃあ決闘を見に来たに決まってるだろ。息子を助けてくれた恩人の力、見せてもらったぞ」
「いや、あれは皆のお陰ですから……」
「たとえそうだとしても、君は一人で戦い、勝利した。その事は誇るべきだ」
「そう、なんですかね……?」
「そうだとも」
モーゼさんが笑ってくれる。
改めて、皆に感謝しないとな。
ちなみにメリアはロロヤ達が出ていった辺りから回復を再開し、レイラは「ふっふーん!」と言いながらふんぞり返り、ナヴィはレイラを見てなんとも言えない顔をしていた。
「それに、わざわざ会いに来たのには他の理由もあるんだ。いいぞ」
「……ん?」
モーゼさんの許可と共に、入り口の戸が開く。
そこに居たのは……
「久しぶりだな!ケイン!」
「ビード!?」
「私達も」「いるぜ!」
ビード、ギル、セーラ。
あのとき約束した通り、銀獣の三人と再会を果たしたのだった。




