表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
409/416

401 踊る機械 ②

「――壊剣(フェレズ)分解(パージ)



 ティアがそう口にした瞬間、壊剣(フェレズ)の刀身に、虹色の光の線が走り出す。

 その線は真っ直ぐに、時に緩やかな弧を描き、その線に沿うようにして、刀身の全てが弾け飛ぶ。

 そして、弾け飛んだ刀身の中から、一振の大太刀が、その姿を現した。



「なんだ……?その、剣は……!?」

「回答。元より壊剣(フェレズ)とは、この一振を指す名。これらの外装は、この一太刀を納める鞘、と言ったところです」

「……は?」



 トリーシュの表情が、困惑したものから真顔に変わる。

 当然だろう。先ほどまで全力を出されていなかったどころか、剣すら抜いて無かったと言われたようなものなのだから。



「鞘、だと……?貴様、どこまで俺たちを侮辱すれば気がす――」

「回答の訂正。確かに、壊剣(フェレズ)()はこの一振です。故に、鞘という表現を致しましたが……これらもまた、壊剣(フェレズ)の一部。即ち―剣なのです」



 そう言うと、ティアの周囲を浮遊していた壊剣(フェレズ)の破片が、再び輝き始める。

 それと同時に、ティアの背後に二対一組、計八個の機械で出来た手―イーリスが現れた。



連結(クリエイション)



 その言葉と同時に、破片たちが激しく動き出し、八つのイーリス、その目の前に向かって飛んでいく。

 そして、全ての破片がそれぞれの場所に集まったその瞬間、破片が再び繋ぎあい、新たな形へと変化していく。

 レイピア、大剣、タルワール、クレセント―全てが異なる変化を遂げ、そしてそれらを、イーリスが掴み取った。



「なっ……なんだよ、そりゃあ……!?」

「参ります」

「……ッ!くそっ……!」



 驚いている暇も無く、ティアがトリーシュに向かって駆け出す。トリーシュも応戦すべく、ティアの剣を受け止めるが――


(ッ!?なんだっ、このっ、重さは……!?)


 大剣状態(先ほどまで)と比べて、質量は少なくなっている。そのぶん、空気抵抗が減り、振るう速度に関しては早くなってはいるが―それを加味したとしても、その一撃は重すぎた。

 それにすぐ、トリーシュは躱すのではなく、ティアの攻撃を受け止めようとしたことを後悔した。

 なにせ今気にしなければならないのは、ティアの持つ大太刀だけではないのだから。



「――ッ!!」



 ティアの攻撃を受けきれず、体勢が崩れたところに、三本の剣が追撃に入る。

 それらの攻撃は、首や心臓のような、致命的な箇所を狙ったものではなかったが、それでも確実に、トリーシュを戦闘不能に追いやるための攻撃であった。

 そして当然、攻撃がその三本で終わるハズもなく、次の剣が、攻撃の体勢に入る。その瞬間、ティアを挟み込むように、ロゼッタとバンクが現れ、同時に攻撃を放った。

 しかし――



「「なっ……!?」」



 ロゼッタの剣を、一本の剣が受け止め、バンクの放った矢も、これまた一本の剣が叩き落とす。

 そして、残った三本の剣が二人に向かって襲いかかった。



『ぐぅぅっ……!?』



 ロゼッタには、右肩と左足に。バンクには、左肩に、それぞれ剣が襲いかかる。どちらもトリーシュと同じく、生命に関わる致命的な箇所を狙ってはいない。だが、剣士と射手、それぞれにとって致命的な箇所に攻撃を受けてしまったのは、二人にとって大きな痛手となった。

 そして、トリーシュも二人が攻撃されたと同時に、ティアが一度強く踏み込んでそのまま振り抜き、トリーシュをぶっ飛ばす。

 その威力は凄まじく、トリーシュは何度も地面に叩きつけられ、十数メートル先でようやく止まった。

 さらにティアは、そのまま地を蹴りロゼッタ、バンクへと向かっていき、それぞれに蹴りを食らわせ、トリーシュほどでは無いにせよ、こちらも強くぶっ飛ばした。



「ぅがっ……はぁ……っ、クソ……!」



 身体中に強い衝撃を受け、フラつきながらも立ち上がるトリーシュ。本当なら、立ち上がらない方が良いのだが、冒険者としての意地が、彼を立ち上がらせたのだ。

 そうしてフラつきながらも剣を構えようとしたその時、それに気がついた。



「……っ、これは……!?」



 見つけたのは、大きなヒビ。それは、今しがた、ティアの壊剣(フェレズ)を受け止めた箇所であり、一度でも振るえば、すぐにでも折れてしまいそうなほどのものであった。

 だが、トリーシュが驚愕したのはそこではない。確かに、先ほどまで鞘に入った状態の壊剣(フェレズ)による攻撃を何度か受け止めていた。

 それらの攻撃も当然ながら強烈であり、それらの蓄積でヒビが入った、とも考えられた。

 だが、それは違う。間違いなくこれは、先の一撃で作られたものであると、トリーシュの勘は告げていた。



「この壊剣(フェレズ)は、何も切ることはできません」

「――ッ!?」



 剣のヒビに目を奪われていると、不意にティアがそんなことを告げてきた。

 当然、トリーシュはなんのことかさっぱり分からず唖然としていたが、ティアは気にすること無く言葉を続けた。



「マスターに命を救われたあの日から、当機はマスターに全てを捧げると、そう誓いました。同時に、もう二度と、人を殺めるようなことはしないと。……しかし、マスターの願いは、そう簡単なものではありませんでした。

 ただ、大切な人と日常を過ごす。マスターの、たったそれだけの願いは、酷く血にまみれた道の先にしかありません。それは、当機の掲げた誓いの矛盾を、明確にするものでした」



 もう誰も殺さないという、ティアの誓い。

 血を流した先にしかない、ケインの願い。

 ケインと共に生きることを誓ったティアにとって、その矛盾は、ティアを大きく悩ませるのに十分すぎるものだった。



「戦いとは、死合(しあい)の場。当機は考えました。どうすれば誓いを守ったまま、共に戦えるのかを。その答えの一つが、この壊剣(フェレズ)です。

 殺さぬのなら、壊せばいい。戦う意思を、戦うための武器を。壊剣(フェレズ)は、そのための武器です。……いえ、そう思い込んでいました。それを、貴方たちが教えてくださったのです」

「……なに?」

「人の心は、簡単に折れはしない。例え、絶対に敵わない相手だったとしても、諦めることはない。例え、どれだけ力の差があったとしても、立ち止まったりはしない。それが、人間という種の持つ心の強さであると、そう教えてくださいました。

 ですので、当機も考えを改めることと致しました。誓いは変わらず、殺すことは致しません。ですが、戦いの場において、当機はこれ以降、本気で殺すつもりで戦うことを、新たな誓いと致します。

 それが、当機が皆様に送ることのできる、最大限の敬意です」

『……ッ!』



 瞬間、三人の額を、冷や汗が伝う。

 ティアの表情は変わらず、無表情のまま。

 手にしている剣も下ろしたままで、その他の剣も、変わらずティアの周囲に浮遊し、留まっている。

 ティアはまだ、立っているだけ――それなのに、今三人は()()()()。そう錯覚してしまうほどの恐怖心が、三人を同時に襲ったのだ。

 そして、気がつけば――トリーシュの目の前に、ティアがいた。



「――っ!?」



 トリーシュが接近に気がついた時には、もう遅い。

 すでにティアは壊剣(フェレズ)を振っており、トリーシュの肩に、刃の無い刀身が触れる。

 瞬間、耐えられないほどの重さと、今までに感じたことの無い圧が、同時に襲いかかってくる。そして気がつけば、地面が目前に迫っていて――


 そこから先でなにが起きたのか、トリーシュが知ることはなかった。

変形武器って、男のロマンですよね

まぁ、彼女は女の子(機械)ですけど

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ