39 意外な繋りとナンパ野郎
「…それで、俺を呼び出した理由ってなんですか?」
「簡単なことさ。君にお礼がしたかったんだよ」
「お礼?」
俺、お礼されるようなことしたか?
「銀獣というパーティーに聞き覚えはないかい?」
「…あぁ、ビード達のことか」
ビード、ギル、セーラ。
獣人の三人パーティーで、Dランクだったっけ。
アイツら、元気にやってるかなぁ…
「そうそう、それであってるよ」
「それで?アイツらとお礼にはどんな関係があるんだ?」
「銀獣のメンバーにギルという冒険者がいただろう?彼は私の息子なのだよ。それに、彼らの活動拠点はここ、テドラだからね」
…まさかの息子ですか。
それに、ここが拠点ということは、近いうちに会えるだろうか。
「ロックボア討伐から帰ってきた彼らから君に助けられた、と聞いてね。もしこの町に来ることがあったら、私に知らせてもらうよう職員達にお願いしていたのだよ」
「だからあんな反応したのか…」
「ははは…それじゃあ改まって。ケイン君。私の息子、及び銀獣の面々を助けてくれたこと、実に感謝する」
そう言うと、モーゼさんは頭を下げる。
面を向かって言われると、すこしむず痒い。
「ははは。あまり言われなれてないようだね」
「まぁ…はい」
「…ところで、彼らから聞いた話だと他に二人いたはずなのだが…」
「あぁ、メリア達なら買い出しを頼んでます。二人とも…というより、メリアが人見知りというか、そんな感じで」
「なるほど…今、彼らは別の依頼でここから離れているが、そろそろ帰ってくる頃だろう。そうしたら、改めてお礼をさせてもらおう。そのときには、君の仲間も連れてきてはくれないか?」
「わかりました」
俺はモーゼさんにいくつか宿を紹介してもらい、ギルド長室を後にした。
ロビーに戻り、少し依頼を覗いた後、そのままギルドを後にした。
「さて、メリア達を探さないとな」
俺は道行く道を歩いていった。
やはり、なかなかの活気。
至るところから元気な声が発せられる。
このエリアは港に近いこともあって、魚介類が多く並んでいた。
しばらく道なりに歩いていると、なにやら少し揉め事が起こっているようだった。
何事かと近づいてみると、声の主の片方は男性、もう片方はナヴィのものだった。
「だーかーらー!ついてくるなって言ってるでしょ!?」
「そー言わないでさー。オレと一緒に遊ぼうぜ?」
「お こ と わ り し ま す !大体あんたには興味無いっての!」
「またまたぁ、そこの子みたいに恥ずかしがってるだけだろ?」
「話が通じなぁい!」
えーっと、確かあーゆーのってナンパって言うんだっけ。
それにメリア達が捕まったらしい。
それで、メリアの代わりにナヴィが断ったら、男が諦めず話しかけてきている。
そんな感じだろうか?
あと男よ。それは恥ずかしがってるんじゃない。怖がってるんだ。
さて、このまま傍観している訳にもいかないし、さっさと出ていって止めに入るか。
「だからしつこいって何度も「おーい、ナヴィ!メリア!」…あっ!」
「ケイ、ン…!」
「ちょおわぁ!?」
メリア達が俺に気づいた途端、俺に向かって駆け出した。
ついでに男は吹っ飛ばされた。
「なんかあったのか?」
「いやぁ…それがね…」
***
「んー!おいしー!」
「むぐ…ほんと、おいし、い。」
「買い物も終わったし、ケイン迎えに行く?」
「…あまり、気乗り、しない…」
「そうね、それじゃあ、もう少しブラブラしましょう」
「ねぇ君達」
「…何か用?」
「オレと一緒に、この町で遊ばないかい?」
「お断りします。それじゃ」
「おおっと、まちたまえよ」
「うぉっ!?」
「美女二人だと危険だろう?オレが一緒にいてあげ」
「結構です」
***
「…て感じのやり取りをずっとやってたのよ…心底疲れたわ」
「あー、なんだ…お疲れ様」
「ほん、と、疲れ、た…」
「それで?そっちはなにかあったの?迎えに来るのが遅かったけど」
「あぁ、それが」
「ちょっとまてやァ!」
あ、起きた。
というか、俺が今から話そうと思ってたのに、切らないで欲しかったなぁ。
「おいキサマ!なにオレが声をかけてた子と勝手にくっついてるんじゃ!」
「いや勝手もなにも、二人は俺の」
「言い訳はいらんわ!」
えぇ…
「せっかくオレが、他の悪い男に捕まらないように声をかけてたのに…かけてたのにっ…」
「いやだから、二人は俺の旅の仲」
「チクショォォォォォ!!!」
「話を聞けよ!」
しばらくして、叫ぶだけ叫んで少し落ち着いたらしく、話を聞いてくれるような感じになった。
ところでこの町、そそっかしいやつ多くない?
「はぁ…改めて言うけど、この二人は俺と一緒に旅をしている仲間だよ」
「旅の、仲間ぁ?ということは、キサマ冒険者か?」
「まぁ、そうだけど…」
なんだろう。嫌な予感がする。
「ならばちょうど良い!キサマに決闘を申し込む!オレが勝ったら、二人はオレのパーティーに移籍してもらう!」
やっぱりめんどくさいことになった…




